第10話 決着、賢治対マッケンジー
「よお、人殺しのマッケンジー。忍野賢治、生まれ変わって地獄から舞い戻ってきたぜ」
賢治は異世界でも背負い続けていた愛刀を魔法袋から出すと、鞘ごと掲げて周囲にアピールしてみせた。
「ルナ、俺を守れ。殺すな、行動不能にしろ」
「わかった」
ルナにだけ聞こえるように小声で呟くと、ルナも賢治しか聞こえない様に返事をする。
「偽物だとでも思ってんのか?この通りギルドタグも俺に反応してるぜ」
持ち主の生命力と魔力のパターンにしか反応しないギルドタグ。
深級探索者である賢治の黄金色のギルドタグは光を放ち、虚空に忍野賢治の名前を浮かび上がらせている。
「貴方、本当に賢治なの?」
金髪碧眼の双子美女リンダが、階段と途中で止まったまま賢治に質問する。
リンダは魔法師で丈夫なパンツルックに軽鎧。
兜は着けても視界の確保が優先で面頬はなし。
左手には盾を括り付け右の腰には、背中側のベルトにナイフがある。
ブーツも靴底以外は金属でコーティングされ、接近戦にも対応している。
長い髪は三つ編みにして、マントの上から左肩に垂らしている。
常に優しい微笑みを浮かべていた顔には、今は疑心と困惑が浮かんでいる。
「そうだ。信じないなら、それでもいいぜ。エロき双子姫」
「っ!」
賢治の軽口の返事にリンダは驚き、涙を浮かべる。
「だから、いつも尊きだって言ってるじゃない。それに自分達で名乗った事もないわよ」
リンダは蹲り泣き始めるが、逆にマッケンジーは叫び始めた。
「お前は偽物だ。日常会話なら賢治を拷問して聞き出せばいいし、心理学に精通しているなら相手の望む言葉をかけるのも朝飯前だからな」
(まずい、あいつは本物の賢治だ。同じパーティーに居て憎み続けた相手だ。俺には、俺達には本物だと確信出来る。それにあの刀とギルドタグの存在もまずい。ここで奴を殺して破壊しておかなければ、俺は破滅する!)
マッケンジーが愛用の双剣を抜き放つと、周囲の人だかりは散り。
開けた道をマッケンジーが飛びかかる。
「死ねぇ!賢治の名を騙る偽物野郎がー!!」
しかし次の瞬間、マッケンジーは轟音を響かせて階段にめり込んでいた。
それを見ながら賢治は、帽子越しにルナの頭を撫でていた。
賢治とマッケンジーの対決は開始した瞬間に、誰にも気づかれる事なくステータスの格差でルナが幕を閉じた。
マッケンジーがボロ雑巾の様になって気絶した後。
駆けつけたギルド警備員でも手が出せない賢治は、当日の話を事細かく話した。
しかしダンジョンコアとの融合吸収やディシェイドの話はせずに。
コアを破壊したら腕輪が誤作動して、見知らぬ土地に転移して若返っていたと嘘をついたが。
ギルドは賢治の話を全肯定は出来ないが、マッケンジーは重要容疑者として、スキル封印とレベル1の呪いのかけられた首輪を着けられて、医務室へと運ばれて行ってここにはいない。
なおルナはそこの村長の孫娘で、気絶していた自分を運んでくれた礼として、都会を見せるために連れてきたと説明した。
「そう、そんな事があったの」
全身鎧のままテーブルにつき、背中の大盾と大剣をテーブルに立てかけ。話を聞き終えたダリアは頷いた。
リンダはギルドにマッケンジーの治療と真偽魔法による事情聴取を要請され、渋々ながらついていったのでここにはいない。
ダリアの向かいには賢治が座り、隣ではルナが紙パックのアップルジュースを飲んでいる。
「貴方が行方不明になって、死亡発表がされて計半年。こう見えてかなり心配したのよ?それで、賢治。貴方は戻って来てくれるのかしら?」
ダリアは17とは思えない落ち着きを持ち賢治に問いかける。
(これで俺より年下なんだからなー…いや、今は俺が年下になってんのか。肉体年齢だけならだが)
賢治は半年と聞いて異世界の時間の流れが違うのか、最初のまたは毎回異世界転移すると時間を消費するのか。それを調べなければパーティーへの復帰は難しいと考えていた。
それは異世界ディシェイドとメタリカでの2世界の往復生活をしようと考えているからだ。
誰も手の入ってない土地があるなら、開拓して自分だけの秘密基地を作ってみたい。
賢治の中にある冒険心が騒ぎ出し、抗えない誘惑として既に決心しているからだ。
「この子の面倒を見ながらだと無理だからな。職業やスキル構成も変わっちまって、1から鍛錬のやり直しもあるからな。正直、直ぐの復帰は不可能だ。このまま復帰しても、お前達を殺してしまう」
自分の不注意や弱さで仲間を死なせてしまう。
どの探索者でも聞いた事がある、後味の悪くなる話だ。
「そう、それなら仕方ないわね。焦らないでもいいけど、1日でも早い復帰を待ってるわ」
ダリアも賢治が口にした言い訳の奥底にある不安を感じ、それでも待つと言って席を立った。
待つと言ってくれたダリアに申し訳なさと嬉しさを感じながら。
賢治の隣ではルナが紙パックをベコベコ鳴らしていた。
「行儀が悪いから、止めなさい」
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