訳すEleventh

 小説の主人公は探偵。

 だって、警察とか探偵とかあとは勇者とか幼馴染とかじゃないとお話になんない。


 そう。お話になんない、っていうのは物語が始まらない、って文字通りの意味だからね。


「探偵・・・」

「そ。『月に怒鳴る狼』の主人公レンジは推定年齢29歳の探偵。性別はオトコ。ちなみにレンジって名前は電子レンジから引っ張ったって作者は言ってるよ」

「なにそれ。ふざけてるの?」

「ふざけてないふざけてない。まあまずは読んでみてよ」


 昨日と同じファミレスに、今朝はモーニングを食べに来てる。

 わたしは楠子くすこが読み終わるまで2時間半、カプチーノをお代わりしまくって楠子が本を読む表情を楽しんだよ。


「すごい・・・これ、本当の話?」

「なわけないじゃない。でも、リアルだよね。わたしたちがこれから実行すれば事実になるし」

「ミステリでもアクションでもないね。主人公の属性は確かに探偵だけど、レンジは探偵ですらない・・・」

「うんうん。この感覚がわかってくれるだけで報われるよ。ありがとう、楠子」

君代きみよ。でもこれをやってみるって・・・どうやって?」

「翻訳するんだよ」


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