灰色の世界

私の世界は真っ黒だ。

そう言い切ることができるのならばどれだけ楽だったろう。


灰色の世界。

人々はそれを無味無臭の

色のない世界と揶揄する。

冷め切ったつまらない世界と。


でも,灰色の何が悪い?

灰色はなんで何もない世界になる?


黒に白の世界が混ざっている世界は,

決して何もない世界ではない。


だって,白がまざってる。

一色だけでない,新しい色を求めようとして,

すでに新しい色を知ってしまった世界じゃないか。

白という、何にでも染めることのできる色を。


それをつまらない世界を評してる人はなんと恵まれてるのだろう。

なんて世間知らずなんだろう。

彼らの世界は10も,100も色が満ちていて

きっとそれが当たり前なのだ。

2色も1色も同じなんて思ってるのだ。


彼らはきっと愚かなのだ。

灰色は,何にもなれる希望と

何もかも諦めた空虚が混じり合ってできているなんて、

その中でもがいてる人がいるなんてしらずに生きているのだ。


だから,この色を,この世界を,言葉を消費する。

私はそれが妬ましく、羨ましい。


私は今日も灰色の世界で息をする。

形もない,色もない,そんな霧みたいな存在を形取って,

夢なんて名付けたものを目標に毎日頑張るのだ。

希望もない,でも絶望もないこの毎日を。


この世界の先にあるのは,色とりどりの世界なのだろうか。

それとも,また,黒のみで染まった世界のだろうか。


どこか,期待し,どこか恐怖を抱く

劣等生にも,優等生にもなれないまま

灰色の世界にとどまったまま

完全とは言えない今日を享受する。


きっと世界が勝手に変わるなんて期待したまま。

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