後ろの正面

高山 響

後ろの正面

雨の日は嫌いだ。昔のことをよく思い出すからだ……。

目の前にはもう一人自分が居て、その自分は自分とは別のナニカで俺はそのナニカを突き飛ばし……ナニカの心臓にナイフを刺した。


雨が地面に叩きつけられる音のせいで見たその過去は悪夢そのものだった。


肌に服が張り付くほどの湿気に不快感を覚えながら一本の廊下を歩きながら窓の外を眺める。


「かごめ…かごめ…籠の中の鳥は……」


幼い頃によく歌っていた歌を口ずさみながら濡れた木の匂いがする廊下を目を瞑りながらギシ……と音を鳴らしながら進む。


「いついつでやる……夜明けの晩に……」


後ろから視線を感じる。一歩……また一歩と歩を進めるたびにその気配が近づいてくる。首筋がそのナニカに触られる。


「鶴と……亀が滑った……」


外から腹に腕を突っ込まれ臓物がかき回される感覚がする。臓物が原型をとどめていないと感じれるほどに。そして階段の前にたどり着く


『後ろの正面だぁれ』


その言葉が耳に届いた瞬間俺は突き落とされた。

薄れる意識の中で見えたのは自分に似たナニカだった。

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後ろの正面 高山 響 @hibiki_takayama

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