第20話
「今日はお疲れ様でした。また明日よろしくお願いしますね」
初日のインターンシップが終了した。
帰り際、園長先生が見送ってくれたので軽く挨拶をし、外にでた。
「帰るか」
「そうだね」
保育園をあとにした俺たち二人はそれぞれ今日の出来事について話し合った。
「やっぱり子供はかわいいよね~」
「そうだな」
「来てよかった?」
「よかったな。なんだかんだ楽しかったし」
お互い笑顔になる。
「ところでさぁ」
気のせいかもしれないが、詩の声色が急変した。
「周ちゃん、女の子に抱き着かれてたよね?」
「え?」
抱き着かれてた?
そんな事ない‥‥‥いやあったわ。
「抱き着かれたというか、抱っこしてと言われただけだよ」
「そうやって他の女には平気でするのね!」
他の女って言っても、5歳児だぞ?
なんで詩がそこまで怒ってるのかわからないんだが。
「初めては私って言ったのは嘘だったのね……!」
「ちょっと、詩さん⁉︎ 勘違いされるから変なこと言わないで⁉︎」
詩の一言に周囲にいた人達が過剰に反応する。
散歩連れの犬まで吠え始める始末。
なんだよ、人を犯罪者みたいな目でみちゃってさ。
「わ、わ、私には、そんなことした事ないじゃん……」
「いやその、子供の抱っこと高校生の抱っこは違うだろ」
お互いコミュ障みたいなしゃべり方に変わる。
子供に抱っこって言われるのと、詩に抱っこと言われるのは気持ちの度合いが全然ちがうだろ。
「私の事は抱っこしてくれないんだ」
「それは‥‥‥」
口ごもる俺に詩は段々表情が硬くなっていく。
このままでは不機嫌になってしまう。
「明日もその子の事抱っこするんでしょ?」
「してと言われたらな‥‥‥」
「じゃあ私が抱っこしてって言ったらしてくれる?」
「いや‥‥‥」
「なんでよ!」
「てぇてぇお前にそう言われるとドキドキして死にそうになるからに決まってるだろ!」
この言葉は俺の正直な気持ち。
詩は驚いて固まってしまった。
「え、あ、そう、そうだったんだね」
詩の頬がわかりやすく赤くなる。
ちょっと前まで硬かった表情が一気にだらしないほど緩んだ。
「えへへへへ」
だらしない顔をしながら、俺の腕に抱き着いてくる。
「なんだよ」
「周ちゃん私にドキドキするんだぁ」
「そりゃするだろ。幼馴染といえど詩も女の子なんだから」
俺がそういうと詩は緩んだ顔から、悪いニヤケ面をし始め、
「もっとドキドキさせてあげようか?」
「え?」
不意に耳元まで近づき、詩の吐息がかかる距離まで詰めてきた。
「今日、私の初めてもらってくれる?」
吐息交じりの小声が俺の右耳に響く。
「おま、それはどういう意味だ」
「そのままだよ。周ちゃんのために取っておいてあるんだよ?」
「いや、わからないな」
「しょうがないなぁ、教えてあげるよ」
そのセリフの意味が分からないほど、鈍感じゃない。
しかし再び耳元で、
「えっちしよって意味だよ」
「‥‥‥」
その直後、詩は自分のお腹をさすり俺にアピールする。
「ここに周ちゃんのいっぱい注い――」
「待て、それ以上はさすがにダメだ」
優しく体を突き放す。
ダメだ、コレ以上は耐えられない。
「えへへ、ドキドキした?」
「かなり」
「どうする? する?」
「しないよ‥‥‥」
「今日は大丈夫だから、何も着けなくていいよ」
「しないっていったよね?」
やばいどんどんその方向に向かってるぞ。
どこかで切り替えないと‥‥‥。
「わかったしよう」
「ホント⁉ どこでする? お風呂? やっぱり安定のベッドかな!」
「場所は家だったらどこでも」
「迷っちゃうなぁ」
「何回でもしてあげるから、部屋は選ばなくてもいいぞ」
「え! 周ちゃんのそんなに元気なんだ‥‥‥」
「ああ」
一瞬間をあけて、
「するのは抱っこだけだけどな」
「ああああ! ズルい! 騙された!」
ポカポカ俺の肩を叩く。
してやったり。
「そろそろ周りの人の視線が痛いから、帰ろう」
「そ、そうだね」
話を保育園の話に戻し、家までゆっくり帰った。
~帰宅後~
「あの、詩さん?」
「なに?」
「さすがにご飯の時は離れてください」
「場所選ばなくていいっていったじゃん」
「いったけど、これだと食べづらいよ」
「食べさせて、あ~~ん」
「はい」
「ん~おいひ~」
~食後~
「あの、詩さん?」
「なに?」
「この状態だとテレビ見えないでしょ?」
「テレビより、抱っこしてもらうほうが大事だもん」
~就寝時~
「あの、詩さん?」
「なに?」
「お風呂の時こなかったから、ようやくと思ったけどこれは?」
「抱き着いてるだけですけど?」
「ちょっと苦しいんですが」
「我慢して。こうしないと寝れないの」
詩が抱き着いてる間、俺の下半身が反応してたのは内緒の方向でお願いします。
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