第16話 封鎖街と一服

<裏路地>


鍵和田と健介は、裏路地で待ち惚けていた。


地面には既に、二人分の吸い殻が、二時間分散乱していた。

鍵和田はその惨状に気づき、引き上げるまでに掃除をする算段を立て始めて居た。


健介「来ないっすねぇ…」


鍵和田「だなあ。その情報、もしかして摑まされてないか〜?」


健介「いやいや!本当にあったんですよ、そのアカウント!熱狂的なRyochigeの追っ掛けで、浅見ハルにGPSとか仕込んでたり、やばい奴なんですよ!」


鍵和田「んで、そいつが今日この場所が浅見ハルとの待ち合わせ場所だって?」


健介「…う。そ、それは勘っちゃ勘なんですけどね…菫さんがそう豪語するもんで。アカウント教えてくれたのも菫さんだし」


鍵和田「…なんで菫ちゃんがそんな事知ってる?」


健介「そ、それは俺にもさっぱり…ああ、そんなミステリアスなとこも…」


鍵和田「なんだケン、まだ菫ちゃん好きなの?懲りないねえ、お前らも…」



健介「す、好きとかではないですよっ。平和クラブの旧リーダー同士、親交を深めたい、と、言いますか…ど、どうでもいいじゃないですかぁ…」


鍵和田「どうでもよかぁ、ないなあ?」


健介「何でです?…あ」


鍵和田「菫ちゃんは俺の娘みたいなもんだ。何回言えば…手ェ出したら…?」


鍵和田は鋭い眼光を向ける。

健介にはこれが鍵和田の本気ではない事は分かっている。

本気でキレた鍵和田は、こんなものではない。


健介「ヒィッ。ご挨拶の際は、ご容赦を…まあ、俺なんかと、あり得ないですけど…」


鍵和田「はっはっは、冗談だよ!意外と脈あんじゃない?おじさんが見たところは、少なくとも」


健介「菫さんも可哀想に…修羅の鍵和田も色恋には朴念仁、ですねぇ」


鍵和田「セカンド童貞舐めんなよ?はっはっは」


鍵和田は愛煙する残り少ないラッキー・ストライクにに火をつける。


火種は、年季の入ったジッポライターだ。


健介「…まだ使ってたんですね、その年季入ったジッポ」


鍵和田「ああ、修理出してな。先月帰って来たんだ」


健介「カギさんのそういう所、本当にリスペクトしてます。俺もいつか、カギさんみたいな中年になりたいです」


鍵和田「おいおいケン、中年はひでぇなぁ。おじさんまだまだ現役だぞ〜」


鍵和田は物腰も柔らかく、おどけてみせる。


健介「あはは、すいません!前もこんな話しましたよね、あの時は亮太さんも居たっけ…あーさぶっ、冷えて来ましたね」


健介「亮太、か。…ケン、なんか暖かい飲み物でも買ってきてくれよ。ここは俺が張っとくからさ。…手がかじかんでらぁ」


鍵和田はかじかむ手で財布から札を出すと、健介に手渡した。


健介「いつものブラックでいいですか?」


鍵和田「いや、今日は気分を変えて、おしるこ」


健介「珍しいですね、甘いものって。燃える男はブラックって、いつも…」


鍵和田「亮太のやつが好きなもんでな。たまには飲んでみたくなってよ」


健介「ああ、浅見ハルも好きらしいですよ、おしるこ…それじゃあ小林健介、行ってまいります!」


鍵和田「気ぃつけろよー」


健介「おっす!」


健介は繁華街に駆け出していく。


鍵和田「相変わらず足が早えなあ。本当、昔の俺にそっくりだ、あいつ。んで、菫ちゃんも、あいつに…」



鍵和田は健介を見送ると、スマートフォンを開き、毎日確認している占いアプリを開く。


鍵和田「今日の運勢は…おっ、獅子座1位!」


本来占い等の曖昧なものを気に留めたりはしない主義の鍵和田だが、15年前から、儀式のように毎日確認する癖が付いている。


鍵和田「しかもラッキーアイテムは、おしるこ?…はっはっは。これが奴の言う”逆らえない大きな流れ”ってやつかな?」


鍵和田は、ジッポを開閉しながら、亮太の事を考える。

彼がもし、実現会を裏で操るRyochigeだったとしたら…

これから、この場所に現れない事を祈るばかりだった。



鍵和田「亮太は乙女座だったか…人一倍優しく、曲がった事が許せない、感性が鋭い芸術家タイプ。批判的なのが玉に瑕…はは、親父にそっくりだ」


カラス鳴き声が不穏な響きを持って鳴り響く。


占いアプリの乙女座の項目を読みながら、鍵和田の思考は過去に遡る。


プレミアム・フライデー。

前首相の取った労働者への負担軽減政策。

それは失敗に終わると同時に、あの事件が起きた金曜日と重ねられ、揶揄されるようになった。


一人の警官に出会い、今の自分が形成されてきた過程を、思い返す。


その金曜日は、肌寒かった。


鍵和田は回想する。



<旧シャッター街>



???「ホワッッチャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッッッMOTHER FxCKER!!!?!!?!? 」


信者「ウガッ…」


???「nothing to say…コンナヨノナカジャ・ポイズンッ」


ブォンッ


信者「アガァッ、玄師、これは予言にない…なんなんだこいつ!?、アガァッ」


???「マヤマヤマヤマヤアアアアアアア2012ッッ」


信者「ダメだ、もうどうにも止まらな痛ッ、ガハッァ」


???「…サクラダ・ファミリア…」


国を抜けて間もない男は我を失い、ヌンチャクを振り回す。

その戦闘力は凄まじく、振動心理教の一個小隊に匹敵する。


鍵和田「もうちょっと静かにやれねえか!?北の格闘家さんよ!」


???「*〒>々<^×=○×〒<ッ!!!」


鍵和田「だめだ、母国語はチンプンカンプンだ。ぷ、プリーズイングリッシュ!」


???「ワイ・ジャパニーズ・ピーポーォォォォォォォォ…ピーポー?」


消防車、救急車のサイレンが近づく。



鍵和田「チッ、ここはもう良い。このままじゃジリ貧だ。付いてこれるか!?俺ァ、足だけは速いぞ!」


鍵和田は炎上する商店街の中、ジェスチャーで次に向かう場所を示す。


???「オール・ユー・ニード・イズ・ラヴ」


鍵和田「何が何だか…学がなくてな。とんだホームレスが居たもんだ。…とにかく、今はあんたの力が必要だ。ヨナさん…組長も、仲間もやられちまった。頼む…!」


???「オーライ…you are グッドルッキング・グァーイ…」


鍵和田「なんだか、あんたとは長い付き合いになりそうな気がするよ。行こう!」



<コンテナ地区>


コンテナ地区に追い詰められた杜萌一家は、娘を守ろうと、最後の力を振り絞っていた。


杜萌(母)「や、やめてっ、もう…もう十分でしょう!?」


鍵和田は遠目にその光景を視認していた。

バテた格闘家ホームレスは途中から姿が見えない。


鍵和田「間に合え、間に合えェ!これ以上、殺させねぇ!!!クソッタレ、イかれ野郎共が!」


与那嶺組1の俊足を自負する鍵和田は、走る。

過去のどの疾走よりも、疾く。



信者「グル、ああ、グル…グルの為なら何でもします。どうか、この哀れな家族に導きを…」


杜萌(父)「こ、この子だけは!…あなた達にも家族は居るはず…」


信者「我々は出家し、俗世を捨てた。そんなものは、居ない。我々の父は玄師ただ一人。…父も母も、学問ばかり強要し、真理が見えていない、劣等…だから私は」


信者はヤクザから奪い取ったドスを引き抜く。


信者「なるほど、美しい武器だ。最期まで綺麗事を抜かした、馬鹿な男にふさわしい」



杜萌(父)「うっ、に、逃げ…菫を、菫、だけは…」


菫(幼少)「ぱぱ、ぱぱ?まま、ぱぱ…うわーーん」


ーーーーーーーーーーーーーーーー



鍵和田「畜生、畜生!あの子だけは…クソがァァァッ」


鍵和田はソールの壊れた革靴にも構わず、限界の疾走を止めない。

筋繊維が千切れようが、アキレス腱が切れようが、構わなかった。


アルコール中毒の父親に捨てられ、荒れていた自分を拾い、家族だと言ってくれた与那嶺組長を、目の前で殺害された。


鍵和田「もう、見たくねえんだよ!人が死ぬのは….歩けなくなっても!足…この足ッ、動け、動けッ!」



ー------------------




杜萌(母)「ああああああっ、ああ、ああ…あなた、あなた!救急車、救急車を!…もうやめて!私達が何をしたの!?」


信者「あの場所に居た者は、全て救済しなければならない」


信者はドスを向ける。


杜萌(母)「守る…この子だけは。私達の宝物!あなた達の神様なんかより、ずっと輝いてる、私達の宝物なのォ!」


信者「結婚などという低俗なシステムに縛られた貴様らが、新たな不幸の種を産み落とす。そして…玄師を愚弄したなアアアアアアア!?」



------------------



鍵和田は走る。

もう、すぐそこに、救えるはずの命が。


鍵和田「もうヤメろォォォォォォ!!!」





杜萌(母)「あっ、あぁ、はっ、は…菫?よく聞くのよ…」


菫を抱き抱えた母は、最後の言葉を紡ぐ。


菫(幼少)「まま?」


杜萌(母)「菫の名前は、smileからとったの、たくさん笑う、優しくて、明るい、強い子に、なって…菫は、お絵かきが上手だから、ね、たくさん練習して、ね?あはは…まだ、分かんないかな、、?神様どうか、この子を…」


菫(幼少)「…まま?まま?」


顔に母の血を浴びた少女は、覚えたての言葉を、壊れた玩具のように繰り返す。


菫(幼少)「まま、ぱぱ、まま、ぱぱ…」




信者「結局最後は神頼みか、哀れな娘、今、救済して両親と同じ場所へ…ッ!?」


後頭部に冷たい鉄塊を突きつけられた信者は、硬直する。


鍵和田「…よぉ、イかれ野郎。組長を殺ったのはテメェか?」


信者「よ、よせ…話を」


鍵和田「俺の嫌いな物を当ててみろ。正解したら引き金は引かない」


信者「は、ハァ?」


鍵和田「3、2、」


信者「ふ、不純!な、行為。とか…」


鍵和田「ブッブー。じゃあヒント。二位はアル中で子供に手ェ上げる奴。3.、2、1…」


信者「助けて、玄師ッ」


鍵和田「0。…俺ァな、女子供に手ェ上げる奴が、1番許せないんだ。あばよ…チッ、玉切れか」


愛機、デザートイーグルの玉切れを悟り、信者が腰に挿していた、与那嶺組長の遺品。

その、与那嶺の字が刻印された鞘を引き抜く。



菫(幼少)「ま、まま…ぱぱ…?うわあああああん!!まま、まま!うううう」



信者「あ…あんたにも家族がッ!」



鍵和田「もう俺に…そんなもんは居ねえ」





【17年前】



<旧シャッター街>


杜萌夫妻を殺害した信者にドスを突き刺したまま、鍵和田は引き抜く事をしなかった。

血糊を拭き取る事すら、今の鍵和田には億劫だ。

心が疲弊している。


鍵和田「組長、仇は取りました。…くっ、ヨナさん…」


与那嶺組長は優しかった。

それは見せかけのものではなく、冷え切った鍵和田の心をも溶かす、芯のある暖かさだった。

たくさんの優しさと、強さをくれた組長は、もう居ない。

敵討ちなど、与那嶺組長が望んでいない事も、分かっていた。

その甘さで、カルトに洗脳された信者まで、救おうとしたのかもしれない。


鍵和田「次は、俺が、ヨナさんみたいに…燃える男たるもの、涙は見せるな!そうだよね?…はっはっは。って笑って、安心して…見てて下さいよ!」


鍵和田は泣きじゃくる菫を抱き抱え、再び走る。

暴徒の鎮圧より、この娘を優先した。

何かを守ろうとすれば、何かを守れない。

それは鍵和田が身を持って、嫌と言うほど体験してきた事だ。


鍵和田「エゴイスト、上等…この子だけは、死んでも守る」


交通機関は麻痺し、自分の足だけが頼りだった。

とにかく、この街を出なければ。

地獄絵図を体現したような、この街を。




鍵和田「…Gみたいに湧いてきやがる」


信者「あ、アハハハ〜、不浄な魂発見〜!シヴァ神、どうしたらいい?うんうん、救済!?やるやるゥ!」



薬物を服用した信者は銃口を向ける。

与那嶺組の主要武装銃、ピースメーカーを。


鍵和田「またうちの物を勝手に…」


銃は玉切れ。

菫を抱いたままでは回避もままならない。

素人の中距離射撃など当たる方が稀だが、今日の鍵和田はついていない。


鍵和田「だから占いなんて当てになんねえ」


朝の占い。

それを中断する形で臨時ニュースが流れ、今に至る。

万に一つ、菫に当たるような事だけは避けようと、おぶった菫を必死に正面から隠す。


鍵和田「やってみろや。その代わり…少しでも外してみろ、噛み付いてでも殺す」



信者「心臓、頭…肘を引いて脇を締めて…息を、止める…目標をセンターに入れて…」


信者は引き金に手をかける。

その構えのフォームは、基本を捉えていた。


鍵和田は目を閉じた。全てを天に託す。


鍵和田(ヨナさん…!)


鍵和田は空にいる与那嶺組長に祈る。


信者「スイッチ」



???「よっ、ロリコンヤクザ」



銃声と同時に、スタンガンの雷光が降り注いだ。


信者「グァッ…」



鍵和田「何ッ!?」


???「あーもう、薬物所持現行犯!って、もう現行犯もクソもないけどね…」


一人の警官が、信者にスタンガンを放っていた。


???「あー嫌ね、嫌。潔癖なタイプでね。薬物とかさあ、こいつらなんか汚ないし…ダメ、ゼッタイってね」


鍵和田「さ、サツ…?」


???「国家権力の犬です。よろしくな?」


若い警官は、歯を見せて笑い、敬礼をして見せた。


鍵和田「な、なんだあんた。本当にサツか?コスプレなんじゃ…?」


???「な、なんだあんた。本当にヤクザか?ロリコンなんじゃ…?」


鍵和田「真似すんな!ロリコンじゃない!おれはもっとこう、ケツの引き締まった…ッ!後ろ!」



信者「…あ、がぁ、うううう…!」


薬物の影響か、一撃で落ち切っていなかった信者が起き上がり、警官に銃口を向ける。


???「寝てろ、ジャンキー」


警官は再びスタンガンを迸らせた。


???「あ、俺?巨乳がタイプだよ」


信者は今度こそ気絶し、地に伏せる。


???「お、ピースメーカー。平和を愛する俺ちゃんにぴったりだ。貰っちゃお」


警官は信者の手から銃をもぎ取る。


鍵和田「…助かった、ありがとう」


???「へえ素直じゃん。あ、それデザートイーグル?かっこいいね!さっきカートリッジ拾ったけど、入るかなあ?」


鍵和田「ありがてえ…、はあ、はあ」


菫を背負い走った疲労が、襲いかかる。

鍵和田の靴は完全に壊れ、裸足状態だった。

警官は足元を一瞥し、真顔を作る。


???「こちらこそありがとう。その子、守ってくれて。…あっちでお茶でもどう?」


笑顔に戻った警官は、シャッターの影を指差す。


鍵和田「いいね。この子も休ませたい」


菫「ううう、ううう」


???「あったかい飲み物を飲ませてあげよう」


鍵和田と警官は、半壊の自販機に向かう。


鍵和田「あ゛っ!500円玉、吸われた…」


自販機は電源は入っているものの、小銭のセンサーが破壊されているようだった。


???「キック・オフ。…ドルァ!」



警官が自販機を蹴飛ばすと、大量の小銭と大量の飲み物がランダムに溢れてきた。



???「当たりが出たら、もう百本!」


自販機のルーレットは、777を表示していた。

警官はピースサインを向けている。


鍵和田「あんたマジで職業詐称…スロで万枚出すタイプだ」


???「非常時は勝手に飲んでいいんだぜ?知ってた?ほい」


警官は鍵和田に小銭の山から500円玉を手渡し、ブラックコーヒーとジュース、コーンポタージュを手渡した。


???「俺はこれ。んじゃ行こかァ」


おしるこの缶を振りながら、警官は荒廃した街を進む。



シャッターに寄りかかり、二人はタバコに火をつける。


???「ふぅー、染みるゥ…そっちは、ラキスト?」


鍵和田「そっちはショッポか…ふぅー」


鍵和田はこの警官が好きになり始めていた。

雰囲気はまるで違うが、組長と同じものを感じる。


???「あんたも変わってるな。今時人助けとはね。なんで逃げない?」


鍵和田「お互い様さ」


???「俺はこれが仕事だからさあ。まあ、みんな逃げちゃったけど。じきに応援が来るでしょ」


警官が上を指差すと、上空にはヘリが旋回している。


鍵和田「にしても、遅くないか?」


???「教祖様が某国と連携してるらしくてね。手を出せば国がドカン!ってわけ」


鍵和田「クソ…そんな事情に巻き込まれて、組長は…」


???「…許せないね、ぶっちゃけ。そういうのは。教祖様はどこかなっと」


鍵和田「あんたとは気が合いそうだ」


???「もう大分、友達だと思ってたけど?」


鍵和田「はっはっは。…ん、燃える男のブラック!」


鍵和田はブラックコーヒーを突き出す。

警官はおしるこで答える。


???「未来に」


鍵和田「ああ、未来に」



???「んで、その子、どうすんの?」


鍵和田「まだ決めてない。とりあえず養護施設に届けて…」


???「俺にもガキが居てね。真っ直ぐで、正義感の強い奴なんだ。ま、俺に似て2枚目の負けず嫌いだけど…いつか大きくなったら、その子と仲良く出来たらいいな!」


鍵和田「ああ、そうだな。菫、だったかな?養子にでもしたいくらいだよ。まあ、女手のない俺には荷が重いけどな」


鍵和田は男の片親に育てられた、決して幸せとは言えない記憶がある。

手を挙げられた事は、1度や2度ではない。


???「誰かのために生きる。そんな生臭い殊勝な真似、俺には無理だと思ってた。けど、いいモンだよ、家族ってのはさ」


鍵和田「ああ、そうかもしれない」


組長の笑い声が今にも聞こえてくるような、そんな気がした。


警官はメモを取り出す。

マル秘と書いてある。


???「マッシブ極秘捜査レポートに書いとこ。変わったヤクザに会った、と」



警官がメモ帳を仕舞うと同時に、素っ頓狂な怒声が聞こえて来る。



???(ママ)「ホワッチャア!プチョヘンザッ!!?アタタタタタタタタタタタ、アタァ!!!コトリチュン、ヘノケチュン!!アタァ!!」



???「な、なんだありゃあ!?」


交差点の対岸に、武闘家の奮戦が伺える。


鍵和田「ああ、謎の連れだ。とりあえず敵じゃない。加勢したいが…」


疲れて眠るあどけない少女に目を向ける。


菫「すぅ、すぅ」



???「俺が行く。その後、教祖様を叩く。あんたはその子を必ず連れ出せ。んで、なんかあったら息子を頼む。…男と男の約束だ」


二人は拳を重ねる。


鍵和田「受け取った」


警官は弾倉カートリッジを手渡すと、加勢に向かおうとする。


鍵和田「ま、待てよ!あんた、名前は!?」


警官は振り向きざま、答える。


太一「ああ忘れてた!…対馬太一。いずれこの国を、内側から変える男さ!息子の名前は…」



それが、対馬太一との、最初で最後の邂逅だった。


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