VERSE2 Guru's Re:birth

第6話 おしること正義感

<第3ワークプレイス >


鬱屈した空間の闇を、ディスプレイが照らす。

亮太はPCの暗転が嫌いだった。

部屋を明るくすれば、不意に訪れる暗転の闇が、自分の顔を映し出すのだ。



亮太「PCを見る時は、部屋を暗くして、画面に近づいて…あークソ、右まで弱って来たかな」


その片目で霞む画面を睨み、ヘッドホンを装着する。


亮太が管理人を務めるまとめブログの、書きかけの記事を完成させる為に。


今回の記事に添付するトラックを再生する。


続け様に、ブログ編集画面を開いた。



チョベリ場アニメ速報


11/16



【パチンコが潰れない理由と

パチンコ屋のマーケティングについて】


タイピングの乾いた音が響く。



今回もいつもの脱線シリーズ。


ちょっち過激になっちゃうかもだけど、付き合ってくれたら嬉しいな。


深夜アニメのまとめもいいけど、たまにはね。


という事で、まず前記事の質問コメントにもあった、自殺者の有無について。



パチンコが理由での自殺者は

年間約7000人って言われてる。


死因不明、遺書が無い等のグレーゾーンを入れたら、倍は下らないと俺は思ってるよ。


実は俺も昔、作曲に詰まった時なんかに打ってた時期があるんだ(笑)


ハマったら簡単に人生なんか消し飛ぶって思ったね。


そんな危険なもんが駅前に大体一個はあったなんてね。

百歩譲ってディズニーランドみたいな感じでレアな施設にしたらどうなんだ。


タチが悪いのはさ、パチ屋のターゲットって社会的弱者なんだって。


ヤの付く自営業を営んでる、知り合いのkey坊さん(過去記事参照)に聞いたんだけど、

主婦と学生と無職の年金受給者、生活保護、障害年金受給者がターゲットらしい。



個人的に、こういう国ぐるみの搾取は許せない。

読者の皆さんはどうかな。



ーーーーーーーーーー


亮太「………」


亮太のキーボードを叩く音だけが室内に響く。

過激な内容とは裏腹に、無機質な音だけが、響く。


ーーーーーーーーーーー



話を戻そう。

 

 

 日本のお隣の某国でも同じような事が起きてて、

20XX年8月に全土でパチンコが全廃になった。



この国では、年間7000人もの自殺者がいるのにも関わらず、

テレビニュースで取り扱っているのって

皆さん殆ど見たことがないと思う。

 

少なくとも、俺は見たことないな。



さて、それは何故なのか?


それは、

日本のパチンコ業界のスポンサーが

政治家やマスコミ、メディア関係者だから。

 

 

”パチンコストア協会”という

パチンコ運営に関するアドバイスを行う

一般社団法人がある。

 

 

そこの在籍者を見てみると…

 

 

政治家の名前がビックリするほど出てくるんだよ。

興味のある人は公開されているから

調べてみるといい。

 

 

その名前の中には元首相の名前があったり。


彼らはアドバイザーってことで在籍して報酬を得てる。

 

 更に言うなら、

パチンコ台を卸して良いか検査する場所があって、

その検査機関のトップが元警視庁の警視総監だった奴なんだ。

警察のトップの人が在籍してるんだよ。



「相沢 慎之介」



この名前をよく覚えて置いて欲しい。




ーーーーーーーーーーーーーーーー


亮太「…オッサン、最初の宣戦布告だよ。受け取ってくれるかな」



ーーーーーーーーーーーーーーー

 

要は、

日本のパチンコ屋が潰れない理由って、

政治家、マスコミ、元警官が

お金を貰ってバックアップしているからって事になるんだ。



重ねて言わせて欲しい。



俺は許せない。


この世の中の、腐った仕組みが。


今回のパチンコの記事は、その一例に過ぎない。

俺の曲を聴いてくれて、ブログを購読してくれている人たちは分かってくれるはずだ。


ネットを利用する人なら誰でも感じた事がある、怒りがあると思うんだ。


広告。


ページ内移動型のものや、埋め込み型のもの。

隠しリンクなんて踏んで、興味のない出会いサイトなんかに飛ばされたらイライラするよな。

もちろん、こっちが操作で選べる、見るか見ないかを選べる形式の広告なら問題ない。

youcubeみたいなね。


問題は見えない、選べないものだ。

自分が見たいわけではないのに、知らない誰かの財布の足しにされてる。


この広告への怒りと似た怒りを、俺たちは知っているはずだ。


搾取。


弱者は搾取され、さらに衰弱する。

強者は醜く肥え、国会で食後の居眠りだ。

善を為すはずの警察は、権利と暴力の行進を止めない。



そして、昨今のミサイル攻撃。


その脅威に晒され、アラートで眠れない夜を過ごし、漠然とした不安に駆られている人も多いだろうと思う。


元国営放送のチャンネルは誤報ばかり。

受信料を取り立てる方がよほど大事そうに見える。


そのミサイル資金の流れの中には、知らず知らずのうちに、俺たちから搾取した金が横流しされてる。


パチンコ業界から某国に多額の送金がある事は、有名な話だ。


これは国ぐるみの自殺という事にならないかな。





負の連鎖。


否、死の連鎖。



安全な場所から、命を弄ぶ。


まるでショーでも楽しむかのように。


俺たちはクリア・ケースの中のアリンコってわけ。



せかせか働いて、あくせく生きて。


クリアケースの中で何が起きても、飼い主は知らんぷり。


全てが奴らの一存で完結だ。




負の連鎖。


否、死の連鎖。


断ち切るのは、誰だ?




俺たちに出来る事。



考える事を、辞めない事。





飼い慣らされるな。





良かったらTritterフォローお願いします。

@ryo_chige



 




亮太「優しい歌じゃ、世界は変わらない」




記事を投稿すると、亮太は一服すべく煙草に火を点け、デスクに置いてあるおしるこを啜る。


亮太「冷めててもこれがまた、煙草に合う合う」


大衆を動かす為には、まずソースのある現実的なデータを示す。

確たるソースが無ければ、作り出せばいい。

今の彼にはその為の環境が整った。

それが、亮太の思う、予言というシステムにも繋がる。


そして、過激な言葉と正義感の演出を織り交ぜる。

そこに感情論のスパイスを加え、徐々に高めていく事が、歴史上のカリスマ性を持つ偉人を研究した亮太が至った結論だ。


計画を遂行する亮太は常に冷静だった。

彼の感情を逆撫でするのは、先月から実現会に出入りしているカメラ位なものだ。


少なくとも、煙草を吹かしながら、スーパーのおしるこに文句を付ける余裕がある程には。


パッケージを見ると、商品に入っていないはずの白玉餅が堂々と描かれていた。


亮太「…嫌味な差し入れだ」


SNS画面を開く。


@ryo_chige


”おしるこのパッケージ、浮かぶ幻の白玉。

甘い罪がまかり通る世界。

おのれ許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない

関係ないけど体調が優れない今日この頃”



亮太「流石にちょっと疲れてんな、ここんとこ…ゴホッ、ゴホッ」


亮太は咳を覆った手のひらを一瞥する。


亮太「…またか。時間もそう残ってないかな。急がねーと」


手のひらには、鮮血がこびり付いていた。



その手を拭い、再びSNS画面へ。



@ryo_chige



”手におしるこ付いちゃった。

最悪うううううううううううううう。”



通知音がピロンと鳴る。


亮太「おん?」


血を拭き取りながら、マウスを泳がせる。


tritterの通知機能はオフにしている亮太だったが、自分にとっての主要人物には通知を許可していた。


亮太「メメント・モリ男…いやはや、君だったとはね」



すぐさまリプライが送信されてくる。


@ryo_chige だいじょびですか~?



@mori_mori_mememe 手がベタベタだよー。血で!!!



@ryo_chige


魔剤!?心配…



@mori_mori_mememe 嘘だけどね!




返信を打つと、リプライはそこで止まった。



亮太「んまあ、こんくらいは」


亮太は常日頃から呼吸の如く嘘を連発している。

実現会潜入と計画に支障はないだろうと考え、アカウントを切り替える。



目玉のシンプルなアイコン。



@zigan_hz



亮太「そろそろ自動承認ツールの出番だな…」



ブログと作曲アカウントからの誘導が功を奏し、増え続けるフォロー承認待ちのアカウント。

手動で承認を振り分けてきた亮太だったが、その数は1万に登り、その段階は超えていた。


誘導の効果も、尋常では無い数の増え方も、やはり腑に落ちない亮太だったが、利用出来るものは最大限利用する主義だ。


亮太「誰が暗躍してんの…っと」


承認待ちアカウント一覧をスクロールし、国の監視らしきアカウントがない事を確認していく。



亮太「ん?…こいつって確か」



アカウント名 柿ピー(*´꒳`*)


”巴楽町の「大丈夫クリニック」の1Fで薬剤師してます☆柿ピーくれると喜びますw気軽にfollow me♪”



亮太「…相変わらずのアホ面晒しやがって。思い出した。平和クラブとつるんでた柿ピーって、こいつだ…」


亮太はその女の性格と貧相な裸体を思い出し、先程の吐血以上に気分が悪くなるのを感じていた。


亮太「チッ、思い出したくもねぇ」



亮太は過去、フリーの所謂”男娼”のような事をして客を取り、金を稼いでいた。

その時期の記憶は亮太にとって、五本の指に入る苦痛の記憶だった。


亮太は記憶の処理に失敗し、回想が始まるのを止められなかった。



柿神「柿ピーって言います☆よろしくね?ところで聞いてほしいんだけど彼氏がさあ別の女と連絡とってるみたいでえ~毎日彼氏のシャワー中にいろんな数字試してえ~スマホのロック番号やっと解除したんだけどさあ普通に誕生日でマヂウケるよね!でも怖くて見れないの、どう思うー?でも私ってそういうの出来ない人で~、優柔不断っていうかあ、」


聞いてもいないことをベラベラと話す、手首に傷のある女だった。



そんな日々に嫌気が差し、逃げ込む先はパチンコ屋だけとなり、借金までこさえたのだった。


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