~魔王心労~

 「う、う……ん。どうも体が疲れているなぁ」


 「どうしたのよ、気持ち悪い動きをして。元々気持ち悪いのに」


 「さらっとひどいことを言いおったな、サリィ。う、うむ。どうもしんどくてな……。全身が疲れていると言うか……」


 「何寝ぼけたことを言っているんだか……。こっちで魔王をやっていても、今は何もしていないし、あっちの世界でもカイトーに平身低頭しているだけじゃない。何を疲れるって言うの?」


 「そんなことないわ。余だって頑張っているんだ。ま、確かにこっちの世界ではカノンがいないから戦いようがないけど、あっちの世界ではサラリーマンとしてちゃんと仕事しておるわ」


 「あんたさぁ、最近あっちの世界に頻繁に行っているけど、何か訳でもあるの?どうせカイトーにいびられ、女子社員から蔑まれるだけなのに……」


 「う、うるさいわ!ちゃんとサラリーをもらっている以上、きちんと働こうと思っているだけだ!」


 「……!!もしかして、あんたいびられたり、蔑まれるのが好きなマゾじゃないんでしょうね?」


 「ちゃうわ!余は魔王だぞ、どうしてMなんだ!どちらかと言うとSじゃ!」


 「こんなところで赤裸々に性癖を開陳されても困るわよ。ま、どうでもいいわ。私もあっちの世界に行っちゃおう」


 「何だ?貴様だってあっちの世界に入り浸っているじゃないか」


 「あっちの世界のエステって凄いのね。こっちに帰ってきてもお肌ピカピカなのよ」


 「エストとは……。まぁ、余もあっちの世界に居酒屋には多少なりとも興味を……じゃないわ!」


 「うるさいわね。結局、あんたも飲みたいだけでしょう」


 「……そんなことよりも、リンドはどうした、リンドは?」


 「誤魔化したわね。そういえば、姿を見ないわね」


 「う~ん。あやつ、また余に内緒で何か動いているのか……」


 「あれ?あの男も見てないわね、例の預言者」


 「何?それは嫌な予感がするな……。よし、焼酎でも飲みながら考えてみるとするか」


 「単に飲みたいだけでしょう……。私も行くから、おごりなさいよ」

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