第182話「幼少の⑵」
それ以来、私は夕食のパンやティータイムのお菓子をリリィへ持っていくようになりました。今までは家に籠ってメイク
「お友達にこれも」
相手が女の子だと勘づいた母は丈の合いそうなドレスを買い与えてくれ、香水などもプレゼントしてくれるのです。父は愛する妻のすることですから、複雑な気持ちながらも黙っていました。私はお小遣いでリリィを公共浴場へ連れて行き、全身を洗わせてブラシで髪を整え、魔法をかけてやりました。すると、人間で言えば七歳ほどの少女が瞬く間に艶のある色っぽい娘になりました。流石はリリィです、まだ子供だった時から男を誘惑する術は心得ていました。
「シスター。また搾取してきたの?」
「いいでしょ。リリィはサキュバスだもの、その力は目いっぱい使わなくちゃ損だわ」
家を与えられて、彼女はそこで一人悠々と暮らし始めました。母に気兼ねして抑えていたものを解放して、リリィは街一番の美少女となったのです。その噂を聞きつけた私の父はある日、家へリリィを連れてこいと命じました。
「あなたの家って遠いのね。ほとんど毎日来てくれてたなんて、ジャスは自慢の弟よ」
「あなたも僕の誇りだ」
玄関の前で私達はのんきでした。まさか父までもがリリィに劣情を抱いてしまうなどとは、二人とも思わなかった。部屋に入った姉を見た時、父はワイングラスを取り落としました。そして酩酊した様子でリリィに近づき、長く抱き締めたのです。
父はともに暮らそうと提案しました。母にも事情を話し、快諾してくれました。リリィの方は父に嫌悪を持っていたので渋っていましたが、私がいるからと頷きました。私はこの日を一生、恨みます。父の願いを断ってリリィと街中で遊んでいればよかったと。私が親愛なる姉を傷つけたのです。
「ジャスっ、ジャス!」
「どうしたのリリィ……。ッ、父上!?」
その頃、私は十六歳ほどになりました。すっかり四人家族として馴染み、彼女も大人に成長していた。そんな時に隣の部屋の扉が開いていて、リリィが私を呼んだのです。深夜でしたが妙な気配がしてそこに入ると、父がリリィを今にも犯そうとしていました。リリィの母の名を何度も、何度も呼びながら。
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