5

どんどん記憶が蘇る。都合のいいことだけ。

こんなんじゃ本当のことは伝えられないね。

思い出せないことはいつか君が埋めて欲しいな。なんて、そんな時は、来ない、かな


僕が少しづつ歪んだ愛情を伝えるようになって、僕が君を求めることが増えて、僕が物足りなくなって、僕が君に無理やりキスをするようになって。

僕が、僕が、って自分のことばっか。

それなのに君が初めて、抱きしめてくれたことがあったね。絶対に忘れないよ、あれ以上の宝物もってないもん?

もうこんな関係辞めよう。ってどっちかが言ったあの日。多分君だけど。

うん、とも言えなければ、わかった、って素直に飲み込むこともできなかったのに。

君が僕を抱きしめたんだ。

なんだっけ?やばい顔してたんだっけ?

そんな理由で抱きしめてくれたあの日。

そんな君を裏切るような嘘をついた。

君を騙して、試したんだ。

「昔、男遊びしてたって本当?」

「昔の同級生に聞いたんだけど」

聞いたのは本当。でも、昔の同級生なんかじゃない、君の幼馴染から聞いた。

僕は多分それを信じた。

だから君を試した。

君が不機嫌になった。よくわからなくなった。君の家に行って君を待った。君は今は会いたくないって言った。

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