きっとだいたい十年後の確信

soldum

きっとだいたい十年後の確信

「ポッキーゲーム、しようか」


 隣でドーナツを頬張っていた少女の不意の一言に、私はストローの中ほどまで吸い上げていたアイスコーヒーをカップに戻してしまった。うん、お行儀悪い。


「ええと、私、女の子だよ」


「ん、私もだよ。それがどうかした?」


 そういう問題ではないらしかった。ポッキーゲーム。女の子同士で。他人事ならともかく、我が身に降りかかってみると甘酸っぱさは欠片もなく、あるのは上滑りする高揚と曖昧なむず痒さ。


 顔を上げると彼女はすでに棒菓子をくわえて目を閉じていた。それチョコかかってないし多分プリッツだよ。


「わかったよ、ん、ぁむ」


 反対の端をくわえる。彼女が薄く右目をあけ、閉じた。


 ぽりぽり。


 高揚はあるけど、ときめきはない。あったら困るけど、無ければ味気ない。


 さほど間をおかず唇が触れ合う。目を開けると、彼女と目が合った。そうして目と唇を合わせて、ふと、これならあと十年は友達やっていけるな、と思った。

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