第2話 国を画する言葉
過ぎてしまえば、何事もあっという間の出来事に過ぎません。
十日もあった連休も、今日で終わりになります。
世界は、日本の大それた休みの取り方を静かに見守るように、そして、日本の時代の変容を受け留めてくれるかのように、大きな事件を起こさないでくれていたようです。
もっとも、どこぞの国は、公船なる得体の知れない船を送り込み、あるいはまた、お隣の国は我が国の一企業の財産を現金化すると騒いではいますが、そのくらいは大目に見ましょう。
それより、同じように女王を戴き、我が国がモデルとしたイギリスは、私たちの国の代替わりをライブで報道してくれました。
そのことに、意義を求めたほうが、どれだけ生産的かと思っているのです。
それにしても、地政学というのは、まことに面白いものです。
ユーラシア大陸の両端に、二つの小さな島国を置くのですから、あちらから見れば、こちらは極東、こちらから見れば、極西の島の国です。
しかも、その二つの島の国に、女王さまがいて、天皇さまがおられるのです。
ウインザーという街を訪問したことがあります。
駅からして、もはや、女王のおられる街の優雅さに満ちていました。
ビクトリア女王のふくよかな、それでいて、威厳のある像を仰ぎ見て、そぼ降る雨の中をこれまた格調高い街の中を進んでいきました。
レストランも、チョコレート菓子を扱う店も、何もかもが女王陛下のための街にふさわしい威厳を備えていることに驚きました。
その中に、あの名門校イートン・カレッジもあるのですから、この街はなんという街なのかと、驚いたものでした。
イギリスの新聞は、時に、王家のことを悪し様に言う時があります。
汚いジョークで、王家を揶揄するのです。
人々は、そのタブロイド紙を手にして、喜んだり、悲しんだり、怒ったりするのです。
でも、ウインザーの街のありようを見ますと、こちらの方がイギリス人の本心のような気がするのです。
観光のためばかりでそうするのではなく、女王の住まいがあることを誇りにして、その尊厳を傷つけないように人々が配慮しているそんな感じに、この街は満ちているって、そう思えるのです。
伊勢にしろ、京都にしろ、奈良にしろ、きっと、日本のこれらの街に暮らす人々も、ウインザーの街の人々と同じ心意気に違いないと、そう思っているのです。
そのイギリスも日本も、隣にある大陸と、当然のごとく軋轢を持ちました。
イギリスは、かつてはスペイン無敵艦隊と一戦を交えました。
もちろん、ドイツとも死力を尽くした戦いを経て来ました。
あのフランスともイギリスは戦争をして来ているのです。百年戦争とか英仏戦争と、それは歴史の教科書にも載っています。
そんな無益な戦争を欧州でするべきではないと、近代思想を構築し、なおかつ、移民をしていった彼らの兄弟が作り上げたアメリカがあまりに強大になり、そこに危機感が加わり、ヨーロッパは一緒にならなければ立ちいかんぞと、ユニオンを作ったのです。
それは、ヨーロッパにあっては、極めて、歴史的必然とも言えることであったのです。
極西の、そうした動きとは異なり、極東はどうかと言えば、EUならぬ、AUなどと言うもののユニオンなど影も形もありません。
かつて、日本が大東亜共栄圏なるものを唱えましたが、それはあえなく潰えてしまいました。
だから、日本の軍部の愚かなる政治参画を恨めしく思っているのです。
あれだけ、素晴らしい理想を実現しえていたら、歴史は大きく姿を変えていたに違いないって、そんなことも思うのです。
でも、それは間違った考え方だと、私は、自分で気が付くのです。
歴史は、今ある姿になっていることが必然なのだと言うことです。
大東亜共栄圏が正しくあれば、歴史は、それを実現へと向けていたはずだと思うからです。そうではなかったことに、あの考え方に無理があったと言うことになるのです。
『私たちは、天皇陛下を国及び国民統合の象徴と仰ぎ、
激動する国際情勢の中で、平和で、希望に満ちあふれ、
誇りある日本の輝かしい未来、人々が美しく心を寄せ合う中で、
文化が生まれ育つ時代を、創り上げていく決意であります』
ついこの間、日本政府が発した、これが標榜する国の姿となります。
日本の国のありようを世界に向けて、発信した重要な言葉であると思っているのです。
川勝平太という静岡県知事がおります。
彼が掲げている思想が「富国有徳」というものです。
一知事が、哲学的思想をその政治理念に掲げるなどというのはまれに見る快挙であると、私、思っているのです。
国を富ますのは、そこに有徳の人材がいてこそ成るという考えです。
それに通じる理念を、我が国の総理大臣が発したものと思っているのです。
だから、人をあげつらったり、いじめたり、パワハラをしたり、車で煽ったり、これ見よがしに悪さをしたりしない国であらねばならないのです。
人間はそうはいっても、それをするように生まれて来たようなものですから、それらは無くなることはないと思うのですが、頭に、そして、心に、その思いがあれば、進むべき道は自ずと正しき方へとまっすぐに伸びていくものです。
キーとなる言葉は、平和・希望・誇りです。
そのために、心を寄せ合うのです。
そして、文化を生み育てるのです。
古来より、言葉は、偉大なる力を持ち、私たちの国を支えて来ました。
ですから、この言葉は、私、国を画する言葉にしなくてはならないと思っているのです。
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