死を媒介するもの
スニネンはアオメムシクイの体内から体長1mmのイカを発見した。それはもう、イカとしか形容の出来ない姿だった。この発見はまさに奇跡で、血液中を漂っているところを偶然発見したものだ。スニネンは丹念に調べ、その個体から更に4匹のイカを探し出した。このイカはフィンランドに住むアオメムシクイからは発見されず、外来種として猛威を振るうアオメムシクイからは100%発見された。多いもの時には12匹発見されている。この寄生烏賊(虫)がアオメムシクイの性質を変異させて世界中に広まっているのでないかとスニネンは提起した。
ニコラス・オルセンと共同研究者となったマリー・ファン・ベレロは直感的にこのイカとオルセン症を結んだ。調査の結果、イカは宿主の死後数時間経過で肉の中に潜り込むことが分かっていた。生肉の段階のどこかで人に感染しているかもしれない。しかし、100度の熱にも屈しない耐熱性を持っていることが明らかになってからは世界中の人間の胃袋に納まってしまったと判断せざるを得なくなった。ファンベレロは鳥肉嫌いなので口にしたことはなかったが、スニネンは一週間前に口にしたことを思い出した。すぐに血液を採取し、検査を行ったところ生きたトリコックスが大量に確認された。トリコックスはどうも血液を食べているらしいことが分かった。白血球さえ駆逐して、とにかく血液を食べる。
だがこの事実をオルセンが知ることはなかった。それを知る前にオルセン症を発症し、亡くなってしまったからだ。
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