アオメムシクイ
世界の抱える問題はオルセン症だけではなかった。
アオメムシクイはスズメ目ムシクイ科ムシクイ属の鳥類である。フィンランドの固有種で、青みがかった不思議な目と落ち着いた緑色の羽を持った全長10cmほどの大きさで可愛らしい。この鳥が問題だった。
社会問題を引き起こしているこの鳥は1970年には世界各地でその姿を見られるようになった。最初にテリトリーを出たのは、元々個体数が多かったものを観賞用として他国に輸出した時だ。その個体が野生化したと言われるが、あまりにもどんな環境にも適応する。砂漠でも発見事例があるほどだ。生物学者はこの鳥がとても脆弱であり、現状のアオメムシクイの繁栄は到底起こりえないはずだと述べた。また、関税の記録にあるアオメムシクイの輸出数はこの爆発的増加を引き起こすには少なすぎるとも指摘されていた。
しかし眼前の事実はこれらの主張を容赦なく一蹴。鳥害の対応に追われた。元々あまり鳴かないはずのアオメムシクイだが、都会に生きる個体はとてもよく鳴いた。昼夜問わずの騒音は多くのノイローゼ患者を生んでいたし、フン害、生態系への影響も懸念された。人類にとって幸いだったのはこの鳥が美味しく食べられるということだった。これは最近になって発見された事実である。ピンチをチャンスに、ではないが食糧問題を解決する一手と見なされた。猟師は国や自治体から直々に勅命を受け、とにかくこの外来種を狩りまくった。この努力は外来種の増加は抑えたが、数を減少させるほどではなかった。
フィンランドの鳥類学者ヨアキム・スニネンはアオメムシクイの侵略に多くの疑問を抱いていた一人だ。体色や大きさ、鳴き方などは確かにアオメムシクイ。しかし、彼らは身体が強くないし、繁殖力も年に1つのつがいで3羽、命の危険があるときと発情期しか鳴かないし、美味しくもない(この点は好みだろうと考えた)。元々の生息域に生きる彼らはまさにその特徴を保持している。
スニネンは中国とイギリスで捕獲された個体を入手し、よく調べた。かごの中の彼らは必死に鳴き狂った。それが嘆きのようで居たたまれない気持ちになったスニネンは注射針でアオメムシクイの息の根を止め、解剖を行った。結局、そこで明らかになった事実が世界を混乱に陥れる第一幕であった。
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