イゴリアの呪い

 それから3年後の1961年、今度はノルウェーの長閑な村に同様の怪死事件が起きた。被害者はジョージ・ホーガーとその息子ケン・ホーガーだった。ホーガー親子は死後3日経過してからの発見となった。血だるまになった姿を発見した人は全身の皮を剝がれたと思ったという。

 洗われた遺体は村から20km離れた都市に送られ、Niklas Olsen医師が病理解剖を行った。やはり体内の血液は干からびていた。死因の特定を急いだOlsenだったが、このおぞましい事態を引き起こす理由はまるで分からなかった。体は綺麗で胃の内容物にも変わったものは何もない。彼は新種の毒キノコの可能性を疑っていたものの当てが外れたわけである。彼はこの死を「オルセン症」と名付け、公表した。これを何らかの病気だと結論付けたのだ。そしてこの公表で過去の症例が集まることを期待した。

 しかし、その期待とは裏腹に何の情報も得ることは出来なかった。風土病を疑い、村の文献をひっくり返しても無意味であった。やがて、同様の症例の遺体が現れないこともあって彼は自身の名を冠したオルセン症の調査を打ち切った。


 また、ホーガー親子は死の前日に森に入っていたことがわかっている。前月にホーガー夫人が崖から転落死した場所に花を手向けに向かったのだという。地元の人間は、寂しがりやだったホーガー夫人が家族を道連れにしたのだと信じている。この事はホーガー夫人の名前からイゴリアの呪いとして恐れられ、長く語り継がれることになる。

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