トンデモ医療が死なないのはまともな医者と正しい科学が悪いのでこの二つをせん滅すべきですって話

飛騨牛・牛・牛太郎

第1話


世の中にはトンデモないことが書いてある医療本があります。


「がんは〇〇でなおる、〇〇たべて健康に、〇〇で医者いらず」


興味があるならお近くの書店へどうぞ。ここではその賛否を問うつもりはありません。

わが国には言論の自由があります。何言おうがそれは私たちの権利であり私の権利です。あなたがトンデモ医療を告発する権利があるからこそ、トンデモ医療が存在できます。


ですからここでは

「こういう本が世に出回るのは正しい科学とまともな医者が悪い」

という正義を告発することにします。



そもそもこういった根拠が薄い科学・医療(偽科学、疑似科学という言葉もありますがここでは取り入れません。大変政治的な言葉になってますので)がどこで発生するか、といえば大体の場合は「根拠が薄い学説」から発生します。


その先生しか主張していない主張なのは典型例として


・どっかの健康食品会社、たばこ、食品メーカーがスポンサーetcなどの公平性が疑われる研究

・検証、再検証がしっかりと行われていない。検証が進んでいない研究

・悪意を持った捏造、偽造


などです。

どっかのあほが適当に説をでっちあげるような本はありません。


実際

「専門家のお医者様や研究者が研究して学会に発表された」

という権威こそ一般人をだます最大のポイントで、ネットの匿名アカウントなんかが適当に駄弁った話など一部のあほな人しか信用しませんからね。


そういう根拠が薄い研究でも「話として面白く広く大衆の目を集められる」「商業上非常に有効である」という場合に大衆は飛びつきます。


今思いつく典型例としてはフレンチパラドックス。

統計の問題として取り上げられることが多いですが、フレンチパラドックスは同時に「赤ワインは体にいい」という商業上の利益も齎しました。

そしてそれに乗っかる企業も多かったです。



このフレンチパラドックスは

「検証が不十分な説」

であり、トンデモな科学ではありません。

言うなれば「根拠が薄い科学」です。

しかし「科学」ではありますからそれに基づいて商売をするのは別に問題じゃありません。

ですが今となってみれば「赤ワインを飲んで健康に」というトンデモ医療、根拠が薄い医療と同じです。



そこで本題です。

「なぜ根拠が薄い医療である健康法を我々は撲滅できないのか」

それに対する答えはいろいろあるでしょうし、専門家の意見もあるでしょう。

そういう人の意見を聞きたければそちらにどうぞ。カクヨムで書いてる素人の話ですからね。それに言論の自由がある。

ですから一つ極論をぶち上げましょう。


「根拠が薄い医療を撲滅できないのは、まともな科学とまじめな医者が悪い」


やっと前振りがおわりましたね。



正しい科学とはなにか

それを論ずるには私の力が及びません。ただ一つの答えとして。

「再検証ができること」

であるといわれます。

つまり提示された段取りでもう一回研究したら同じ結果がでる、と理解しておきましょう。僕はそう理解してます。


「〇〇ってやったらSTAP細胞はできます!!」

という説に対して実際に〇〇ってやってSTAP細胞を作れる、これが正し、あ、もうSTAP細胞なんか古いか。


まぁとにかく、あとからべつの人がその論文を再検証して、追加で実験して、それと同じ答えがでるなら「正しい科学」といえるでしょうし、それに基づいて医療を提示するのが「正しい医療」でしょう。

仮に間違ってたらそれを根拠に「これは間違いじゃないか」といい、間違いであるとわかるわけです。

ですがこれは現在の科学では完全には難しい部分があります。



この再検証、追加の実験(追試)は

・金

・時間

・人

の三つがかかります。



もちろんそれだけ時間と手間をかけても追試は有意義なのですが、一方で「追試は研究者の手柄にならない」という問題があります。

考えてみれば当たり前で、追試でわかるのは「この研究は正しい」「間違ってる」という事だけです。

どっちにしろ研究者の手柄にはなりません。そんなもんに時間と金をつぎ込むくらいなら自分の研究や仕事につぎ込みたいのが人情。


金と時間と人が必要、なおかつ追試はめんどくさいのに直接的には研究者の手柄にならない、それでもインパクトが強い、それこそSTAP細胞やフレンチパラドックスのような、研究であれば研究者は追試します。


しかし

〇〇でがんがなおる

のような「見るからに胡散臭いのがわかる研究」

の検証なんかする暇はありません。



ここでのポイントは

「根拠が薄いは間違いと同義語ではない」

ってことです。

例えばiPS細胞はまだ根拠が薄いですが、それは間違いやトンデモというわけではなく

「検証の途中だから」

です。

それは多くの人が認めるでしょう。


そういった科学に対してまともな医者や学者は、検証もせずに「間違ってる」「〇〇トンデモ」と批判しません。

当たり前ですね。


では根拠が薄い医療や化学の人たちが

「我々はまだ検証の途中である」

といえばどうなるか?

それはiPSと同じ箱に入る「根拠が薄い科学」となります。


根拠が薄い、どうみても胡散臭い、患者に進める気はない、けどあえて再検証するような暇はない。間違いと言い切ることはできない。


そうなるとまともなお医者さんは「個人的には根拠が薄いと思いますね」位しか言えないわけです。

根拠もなく人を攻撃してはいけません。これも当然ですね。


そして正しい科学は根拠が薄い医療に対して「疑似科学」「偽科学」などとレッテル張りをして科学から追い出そうとはしません。

それをしてしまうと、新進気鋭のアイディアや学説はすべて疑似科学のレッテルで追い出せるためです。

「間違いと考えるならその根拠を証拠ともに述べよ。」

と批判者に求めるのが現代の正しいの科学です。

 

その結果として

「根拠が薄い科学を批判しにくい医者。批判できないならとりあえず正しいとしておくしかない科学」

が発生して、その根拠が薄い科学をもとにしてできるトンデモ医療やトンデモ医療本が世にあふれるわけですね。



3


ではトンデモ医療を撲滅するにはどうすべきか?

一つに「正しい医療と正しい科学を捨てる」という答えがあります。


医者で一つの団体を作り「あの医療は信用ならんからインチキ!これもインチキ!これこそが正解!これを信じよ」と検閲と強制をする

科学者の団体で「正解」を作り「これに基づかない科学はインチキ!発表は許さん!学会から出ていけ!!我々が出した正解以外に従わなければ言論の自由も認めんぞ」と権威を持つ。


これをやることでトンデモ医療本を撲滅することができるでしょう。

実際そんなこと主張する人が最近はいます。


ただこれ、「ガリレオを裁判にかけた教会と何か違うのか」って言われると「同じです」って答えるしかありません

逆説的な話ですが、現代の科学は「全部間違ってるかも」が前提であり「どうやら正しい」はあっても「正しい」はありません。

正しさは宗教や哲学の話。


リンゴが木から落ちるといっても、世界中のどっかでリンゴが羽ばたいているのを人間が知らないだったり、明日あたりにリンゴが空を飛ぶ可能性もあります。

それを受け入れる余地があるのが科学というものです。



ですから与太話の終わりとして、私は一つお医者様と科学者様、そして大衆様にお願いがあります。一つじゃないな。三つか。


まず一つに専門家の皆様には

「胡散臭い科学でもその検証を嫌がらないこと」

をお願いしたいです。


トンデモ医療だろうが100%否定するには正面から向き合うしかありません。あとからあとから出てきてきりがありませんが、批判するのであればTwitterや週刊誌レベルではなく専門家の権威をもって正面から戦っていただきたい。


また関連して素人の中の一部のみなさん。あなたが適当に聞きかじった知識で

「あれは科学的に間違いだなぜ信じてる」「これは正しい。なぜわからない」

とか安易に言わない。そして間違った科学を信じてるからって安易に人格批判とか始めない。


 世の中そこまで単純じゃありませんし科学はあなたが嫌いな人を攻撃する道具ではありませんし、間違った科学やトンデモ医療を信じてるからってあなたがその人を攻撃できる権利はありません。


 この話の中で「偽科学」「疑似科学」「トンデモ医療」という言葉をできるだけ避けたのは、そういう人たちが好きな言葉だからです。

 一部のインターネットの娯楽とかしてる「疑似科学」「トンデモ医療」批判は、トンデモ医療や疑似科学を批判したいのではなく「批判するのが面白い」から批判する状態になってます。

 そういうたこつぼかした風潮の疑似科学批判が世に受け入れられるか、っていえばまぁできないと思う。けど、娯楽としては最高に楽しいからなぁ。適当な理由でバカってレッテル張って、みんなで正しい科学知識とかいうので殴る行為。


話をもどしましょ。

「そんなのやってどうなるんだよ。専門家だからってそんなもん押し付けるなよ」

って人も多いでしょう。実際そうです。


ですから別のお願いとして

「正しい知識をわかりやすく大衆に広めること」

を頑張ってもらいたいです。

専門家が書く文書は大抵わかりにくいんですよ。いやほんと。だからみんなネット情報に飛びつく。(まぁそのネット情報はどっかで拾った専門家の話を適当に劣化コピペしただけだったりするわけですが)


ですからSNSレベルで結構ですから、どんどん正しい知識を広めてください。

トンデモ医療を撲滅することはできませんので、対抗するにはトンデモじゃない医療知識をばらまくしかありません。

それも難解ではない、専門家でなくてもわかる内容の文章をです。じゃなければ拡散力だけはあるトンデモ医療にまけます。


そしてこれは医者としての利益でもあります。病院に来る患者に少しでも正しい知識があればあなたも対処しやすいでしょ。それにうまくいけば本だすなりテレビにでるなりして、あ、そういうのは興味ない?



最後に一般庶民のみなさん。

科学は時間がかかる上に面白くもない物だって理解して安易に飛びつくのはやめてください

「〇〇って研究結果がでた」

と世に出たとして、それが実証されるのは早くても1年先の話です。

場合によっては検証されないや間違いがわかることもありえます。

そんなもんですから、面白そうな話題だからと言って安易に飛びつかない、拡散しないことを心がけましょう。

まぁいち早く面白い話題を拡散したいインターネッツでそんなこと言っても無駄ですがね。


また正しい科学などないことを理解してそこまで科学者や医者に高望みしないことです。

彼らはサラリーマン。金のために働いてるだけですから、手抜いたりインチキすることもありますし、偏見や損得で物を言うこともあります。

ですから幅広い意見を集めるように心がけることです。その際は信頼できる、最低でも医者などを中心に。

専門家でもない人間に科学の正しさなどわかりません。Twitterの匿名アカウントとかなんか詳しそうって思えることもありますが信頼する時点であほです。

発信元を確認できる情報、そして発信元が信頼できること。この二つをよく確認して、幅広い情報を集めて信頼していいか考えましょう。


この話に結論らしきものはありません。

思いつかない。そんな話だれが読むんだ?

でも言論の自由があります。言いたいことをいう権利。

トンデモ医療のお隣さん(ネットの医療情報サイトの文書かきとか健康食品アフィリエイトの文章書きとかです)にかかわったことがある人の与太話として、よんでくれるとありがたいかと思います。

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