四頁目

 それはあくまで幸せな気がしていただけで。

 何かの勘違いで。

 一時の気の迷いで。

 破綻はすぐに訪れました。

 

「あれを取ってきて」

「これじゃないよ」

「なんで怒るの」

「感謝くらいしてもいいのに」

「してるよ、なんで伝わらないの」

「だってそんなのわからない」

「なんで」

「なんでも」

 

 伝わる心。

 中途半端に、伝わる心。

 昔は、あんなにもわかり合えたのに。

 今は、こんなにももどかしい。

 

 いくら言葉を作っても。

 どんなに言葉を重ねても。

 まるで近づくほど遠ざかる蜃気楼のように、

 心へは決して届かない。

 

 かつて通じ合ってたがゆえに。

 そのもどかしさは、測り知れませんでした。

 

 言葉は不完全だ。

 言葉が誤解を生んだ。

 言葉なんて、要らなかったのに。

 寂しさから、喪失感から、言葉に頼ってしまった。

 

 彼らの幸せは、

 言葉より生まれ、

 言葉ゆえに壊れつつありました。

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