第3話 うるさい獣の鐘
露店で買い物をして、道具を調達しているといつのまにか昼時までと少しになっていた。
慌てた調子で正門のところまでいくと、傍目で見ても豪奢な獣車がひとつ。
その後ろには荷を乗せるための台が取り付けられていた。
その獣車に固まるように数人の傭兵らしきもの達がいる。
獣車の中の人物になにやら怒鳴られているようだった。
あの横暴な感じ……あいつがドロかな?
この時間、あの面々。
花摘みに出かけるドロで間違いなさそうだ。
傭兵の数は見える限りでは4人しか見えない。
獣車の中で怒鳴り声を上げている商人風の男がドロだとするならば、その側に召使のようについているのが二人。獣車の手綱をもって何やら準備している様子から見ると彼ら二人が交代で獣車を操縦するのだろう。
ということは全部で7人。
御者をする人らが戦えるのかは不明だとして、戦闘のできるのは4人。
大柄な盾を持った巨漢の男に、目つきの鋭いごろつきに似た風貌の男。
黒い外套に身を包んだ男に、賢そうな面構えの男。
見たところ、賢そうな男が指示を出し、動いていることから彼があの一行のリーダーらしい。
注意深く観察するファンは絶対にバレないように距離を取って彼らが動くのを待つ。
今回、花のありかがわからないために彼らを尾行するわけだが、途中でバレれば花を独り占めしようとするドロたちに撒かれる可能性がある。
そして尾行するということは彼らと花の取り合いになる可能性も無くはない。
それはつまり、彼らとの戦闘が発生することも考慮しておく必要がある。
こちらは一人。
初めから数で不利なことはわかっているため、万が一のことを考えて相手の戦力を知っておいて損はないだろう。
――――まぁささっと摘んで逃げちゃえばそんなに心配するひつようもないけど……
それならさほど戦闘にもならない。
急いで街に帰って次の旅に出れば良い。
と、そんな事を考えているうちに彼らの準備が整ったらしい。
リーダーらしき男が声を上げ、ゆっくりと門の外へ動き始めた。
街を出てからしばらく、外套を深々と被り顔を見られないように商隊を追うファン。
他に人はなく徐々に整備された街道から外れ、伸びた草が多い茂る場所へと景色が変わる。
街の喧騒は遠いかなたへ、道を進むにつれて人が耳にすれば不安な気持ちになりそうな、奇怪な鳥や獣たちの声がそこかしこで響いている。
ドウトの森。
旅の最中にその森があることを知ったファンだったが、入るのはもちろん初めてだったため、昨日の晩。あの酒場で出会ったゼルにざっくりと話を聞いていた。
大まかには旅人が良く死ぬ危険な森。そして金になりそうな珍しい花がある森。
ゼル曰く、ドウトの森が危険だといわれるのはそこに住み着く魔物や魔獣の強さだという。
一般的にみられる魔物たちとは異なり、強い魔力が漂う環境で育った魔物たちは高い確率で奇妙な生態を持っているという。
魔力をふんだんに吸収して育った巨大な蛇。宙を滑空する獣に巨人。
土から根を出してまるで歩くように移動する樹や言葉を話す鳥。
そして身の危険を感じると大量の仲間を寄せ付ける獣なんてのもいるらしい。
それもこれもその辺の森では見ないものばかり。
そして実際に遭遇すればその生物たちの厄介さは段違いに高いのだとか。
願わくばめんどくさい奴と出会いませんように、ファンは心のなかで軽く念じて見せた。
そうこうしているうちに一行は森へと入った。
ファンもかなり距離を開け、彼らの足跡をなぞるように進む。
やがて森に入り、前方の商隊を追跡するファンはその進行速度が思いのほか遅いことに疑問を感じていた。
――――何度も失敗してるってことは花園までは何回も行ってるはずなのに、こんなにトロトロ進むの?)
実は商隊の進行速度は速くはないが特別遅いわけでもない。
普段一人で行動しがちなファンは、他の人も自分と同じ位の速さで移動すると勝手に想像していたため、実際の商隊の速度がやけに遅いと感じていただけなのだ。
ファンの足で移動すれば商隊の倍の速度で移動することができるだろう。その分目的地までの移動時間は短くなり、持ち寄る食料もそれに応じたものとなる。無駄に食料を持たないのは必要以上に体を重くして、いざというときに動きにくくなるのを防ぐためだ。旅をする人が自然に学ぶ常識のようなものである。
ファンもまた旅をするものとしてできるだけ身軽にするという考えには同意していた。
しかし、
「失敗したなぁ……露店で買い漁りすぎた」
ファンの背嚢には好奇心から買い集めた謎の草や道具、魔具の類がぎっしりと詰まっていた。
旅の経験が長いものが見れば頭のおかしい奴だという目で見られても何の不思議はない。気になったものを買って溜めこむ、ファンの悪癖だった。
さらに言えば今回食料を買う前に様々な露店を巡ったため必要な食料を入れる隙間がほとんどなくなっている。
きゅうと不意におなかの虫が鳴る。
端的に言えばファンは今、食料の危機に陥っていた。
――――食べられそうなものはあんまりなってないし……
辺りを見回してもうっそうと茂る森が視界の奥まで続いている。ひとつくらい木の実がなった木でもないかと思うファンだったがどの木も目に付くところに実はなっていなかった。
「はぁ……」
『また何かやらかしたみたいだね』
ファンのため息に反応するかのようにそれはいつの間にかファンの頭の上に体を下した。
「ちょっと、重いんだけど」
ファンはそれをあたりまえのように受け入れる。彼女がこうして不意に現界するのはいつものこと。
『思いなんて失礼ね……! この姿で重いはずないでしょう!?』
ふさふさと柔らかそうな耳をはやし、二又のしっぽを持つ猫の姿で彼女はファンへと怒りをとばす。
しかしその感情に悪意は含まれておらず、からかうようなファンを軽くとがめるような、どこかじゃれつく気配がそこにはあった。
「いやいや、頭に乗られたら大概のものは重いって。どうせなら肩とかに乗ってよ」
『肩はあんまり安定しないから嫌』
そういってむっすりと頬を膨らませる猫の名はロト。ファンが幼いころに契約した契約者であり、ファンが契約した中では一番付き合いが長い。
『私よりもその背嚢の方がどう見ても重たいでしょ』
背嚢をじっと睨みつけられ、ファンは思わず体をこわばらせる。どうやら藪をつついてしまったらしい。
「こ、これは運びやすいからいいんだよ……それよりもう魔力の方はいいの?」
『……まだちょっと足りてないかな』
「ならなんで今出てきたんだよ……」
『そんなのまたファンがやらかした気配を察知したからに決まってるじゃない』
「それはまたすごい機能が備わってるもんだね……」
当然のように言い放つロトだがこの発言が嘘ではないことをファンは知っている。脳裏にゾクゾクと浮かんでくる思い出はどれもこれも思い出したくないものばかりだ。
『それでこんなにいっぱい荷物をもって今度はどこに向かってるの?』
顔を渋く変化させたファンに不思議そうな顔をしながらもそんなことを聞いてくる。
ひとまずロトの視線が背嚢から外れたことで内心ホッとするファン。
「ジルの書に書いてあった花を取りに向かってるところ」
これ幸いと素早くジルの本を呼び出すと、未だ頭ので丸くなっているロトへ渡す。
『えーと、魔力を貯蓄する花……うわっこれ商店に出てたら絶対高いやつだ』
「群生地が大分限られてるし、そうそう出回らないから多分すごい値がつくと思うよ」
『こんな辺鄙なところに咲いてるなら取りに来る人も少ないだろうし』
ロトは手足をファンの頭に載せたまま首を伸ばすとぐるりと周囲を見渡す。久しぶりに現界したためか気持ちよさそうにしている。
――――降りる気はさらさらないのか……
頭の上でロトが動くたびにふわふわの体毛が髪にあたる。存外心地の良い感触に悔しさを覚えつつ、下手に文句を言っても言い返されるだけと大人しく言葉を飲み込むと、意識を商隊へと向き直した。
『なんでそんなにコソコソしてるのさ?』
ファンが進む速度がいつもと違うことに疑問を覚えたロトがいう。
「花の咲いてる場所がわからないからあいつらに連れてってもらうんだ」
後ろからつけてきている奴がいると知られれば何かしら揉めるのは間違いない。
相手はそこそこ大きい商会らしいし、尾行がばれれば何をされるかわからない。
下手なもめ事を避けるためにも、慎重に後をつける必要がある。
意図することはロトに伝わったはずだが、そう口にした瞬間、気持ちよさそうにしていたロトの表情が曇る。翡翠のような美しい緑色の瞳が暗く、深緑を連想させる色に変わり、口元に生える毛をしならせ、前足でぺしぺしとファンの頭をたたき始めた。
『場所くらい私が見つけてあげるのに……』
「いや、この森全体から見つけるのは大変だろ?」
『はぁ~』
深い、とても深いため息をついたロトは出来の悪い弟へ言い聞かせるような声音でいう。
『あのねぇ、いったいどれだけの間私と契約してるの? このくらいの森、私の力ならどこに何の草が生えてるかまで認識できるわよ』
「そうかもしれないけど、魔力がないんだからしかたないだろ……」
彼女の言い分は最もらしく聞こえるものの、力を発揮するためにはファンの魔力を使用しなくてはいけない、状況を見れば現実的なものではなかった。
『むっ』
自信満々にファンを責めていた態度から一転して、痛いところを突かれたと言葉につまる。
「そもそもロトに渡したら渡しただけ魔力を食うんだから」
『そんなことない! 私がたくさん魔力を食うんじゃなくて、ファンの魔力が少ないの!』
そういってファンの反撃を遮ると、何も聞きたくないというように背嚢の中へと潜り込んだ。
「俺が何か言うといっつもこうだ……」
ため息を吐き、軽くなった頭を軽く振って姿勢を正す。食べ物を要求するおなかの虫はさきほどよりも大きくなり、なぜか商隊は歩みを止めたまま。
「いったいいつになったらつくんだろ……」
街の酒場で食べたあのスープの味を思い出しながら、ファンは商隊が動き出すまでじっと空腹に耐え続けた。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
陽の色が薄くなったころ、ようやく一行に動きがあった。
荷を守るように展開していた護衛達は前と後ろにわかれ、森の奥へと進みだした。
一般的に闇が落ちた後、暗い森の中を進むのは正しい判断とはいえない。
夜を迎え、視界の定かではない道を進むのはリスク化が高く、また夜になったことで急激に動きを活発にする魔物が増えるため、周囲の警戒も昼以上に行わなくてならないためだ。
森は闇に染まり、数歩先を見るのも困難なほど暗い。
遠くから聞こえる鳴き声が不安を掻き立てるように轟き、ざわざわと風で葉が揺れ、大きくしなり、まるで森がひとつの生き物であるかのように感じられる。商隊が奥へ奥へと枝をかき分けて進むさまは森に飲み込まれた人が外へでようともがいているように見えなくもない。
見たところ、商隊はこの暗い森の中でも前に進む手段を持っているようだった。進む足取りは確かなもので、護衛にも浮ついた気配は感じられない。
――――――はぐれないようにマークしとくか
と、そこでさっきロトが言っていたことを思い出す。
確か自分なら他の人に頼るまでもなく位置の特定ができるみたいなことを言ってたから、ロトに頼んで前の商隊に風で目印をつけてもらえばそうそうばれる心配もない、何より背嚢に潜り込んだまま出てこないロトをこれ以上不機嫌にさせると後が怖い。
「ロト? ちょっと頼みがあるんだけど……」
おそるおそる背嚢のひもを緩め、中にいるロトに呼びかける。
「ん?」
しかし中にはロトの姿がなかった。
「どんだけ中に潜ったんだよ」
背嚢の底の方まで潜ったかと手を伸ばして探してみるものの、あのふわふわした感触はどこにも見当たらない。
「どこ行っちゃったんだ?」
不思議に思っていると、
『これ』
背中から突き刺すような視線を感じた。
物理的に何かされたかのようにファンの動きが固まる。
後ろを見ればいつの間にか背嚢から飛び出たロトが何かを咥えこちらを見ている。
――—いつ背嚢から出たんだ……
それは薄く光る玉……ファンが露店で買ったものだ、いや背嚢には露店で買ったものばかりはいっているからロトがそれを持っていることに関しては何も不思議ではない。
「見つけちゃった?」
おどけてみたもののロトの表情は険しい。
じーっとファンを見つめるロトの顔には何かを確信している雰囲気があった。
「買うには買ったけど……ほんの少しだけだって」
『ほんの少しねぇ……』
こうなっては早めに白状してしまった方が良い。ファンは潔く露店で色々とモノを購入したことを伝えた。
咎める視線が頭上からのぞき込むようにファンにぶつけられている。どことなく居心地悪い気分を味わいながら、ファンは視線から逃れるように意識を森に逸らす。
これまでの旅で幾度となく経験したファンにだけわかる。お説教が始まる前触れだった。経験上この後小言が始まる、もはや未来予知と言っても過言ではないだろう。役に立つかは全くの別問題だが。
『むぐ、なにこれ……またガラクタばっかり集めて……』
光玉を口にくわえたまま、再び背嚢の中へと潜り込むとゴソゴソと中に入っているものを物色し始めた
『これも、これも、なにこれ、あ、干し肉発見……』
ぶつぶつとなにか独り言をつぶやくロトの機嫌がすこぶる悪い。
『これは、何に使うの?』
ロトが口にくわえるのは先ほどの光玉とは違う白い玉。
『同じようなものばっかり買って……無駄遣いばっかりするくらいなら保存がきく食べ物を買った方がよっぽどましなのに』
「それは反射球だからさっきの光玉とは効果が違うんだって、これはこう、こうしてね……」
軽く使用例を説明しようとするファンだったが半信半疑の目でろくなものじゃないと決めてかかっているロトの反応は悪い。完全にガラクタ扱いしているようだ。
そんなやりとりをしていると、
『ファン、来てる』
一瞬にしてロトの雰囲気が急変する。右方向から何かの気配を感じ取った様子で耳をひくひくと動かしながら警戒している。
「数はわかる? ロト」
『1、2、3体ってとこかな。魔力が小さいから大した敵じゃないと思う』
数を数えるたびに耳を揺らし、ふるんと震わせたロトが告げる。正面にいる商隊は気づいた様子はない。
「さっきまでは何ともなかったのに」
『多分闇が落ちてきてるから魔物も動き始めたんでしょ。あ、こっちの気配に気づいたみたい』
魔物の気配を辿り、ロトが視線でつたえてくる。
『すぐ近くまで来てるよ!』
「おっけー。風の準備よろしく」
ファンの言葉を聞き、ふわりと姿を消す。
ロトが警戒していた方向へと向き直り、構えるとすぐに3体の魔物が飛び出してきた。
地に散らばる木の葉を巻き上げ、疾走する魔物は3体がそれぞれ立派な牙をむき出しにし、荒く息を吐いている。ファンの姿を認めると、勢いよく飛び出した勢いのまま、とびかかる。
2体は胴の当たりをめがけ、1体は減速して足元へ低く食らいつこうとする。
「おっと」
胴を狙う二匹に向けてぐんとしゃがみこんでから素早く掌底を顎に食らわせる。そこから流れるように体を捻り上げ、のけぞった二匹の下を疾走する残りの一匹へ回転運動を加えた蹴りを落とす。
上あごを力いっぱい踏みつけられた魔物が地面へとめり込み、くぐもった悲鳴を上げる。
のけぞった二匹は縦に一回転すると体を地面へ強くうちつけた。
めり込んだ一匹が起き上がらないのを確認し、悶えて暴れている二匹へ意識を向ける。
複数をさばくことを意識しすぎたせいで個々への攻撃の威力が少し弱くなってしまった。
――――反省反省。普通にやればすでに終わりだったな、これは
現れた魔物は特に危険視されているわけでもないごくごく一般的な魔物だった。
四本足で鋭い牙をもつ、注意すれば狩るのにさして問題はない、そんな魔物。
現に今、一匹をしとめ、二匹をたやすく退けた。
「ロト、やっぱり大丈夫だった――――」
ファンのサポートに入れるように準備していたロトにそんな言葉をかけようとした瞬間、
ガサリと音を立て、視界に入っていなかった魔物が一匹、森の奥へ逃げていく。
――――もう一匹いたのか
ロトが気配を読み間違えたとは考えにくい、もともとそこらの茂みに隠れていた魔物だろう、返り討ちに合った魔物を見て危険と判断して逃げた、そんなところか。
悶えている二匹は未だばたばたと暴れており、こちらへ攻撃するどころではない。何気なく、逃げていく魔物を見つめる。
背が低く、普段は二足で立っているのか短い手を足代わりにして四足歩行でぱたぱたと逃げていく姿は小動物を彷彿とさせる。胴を一回りするように背なかに入った黒い毛がよく目立つ……
――――胴に、黒い毛……?
どこかで聞いたような、何か、なんだったか。
瞬間、ファンは失敗を悟った。
「まずいっ!」
悶える魔物を無視して逃げる魔物を追う。
差はすでに開ききっており、全速で駆けるが相手ははるか遠くまで逃げてしまっている。
「ロト!」
『威力は!?』
「なんでもいい! とにかく早く!」
姿を現すロトが纏った風を送り出すように腕を伸ばす。
滑らかだが素早い動作によって放たれた一陣の風は魔物との間を遮るものを両断して、魔物に迫る。
この森に入る前、酒場で話を聞いた際に注意すべきとして名前が挙がった魔物、その中に一匹、胴に一本線を引くように、黒い毛を生やす魔物がいた。
名をノイジー、森の騒音とまで呼ばれ、忌み嫌われるその魔物は臆病な性格で近くを人が通ると茂みや木の上に身を隠す。
その大きさはとても小さく、注意して見つけようとしてもなかなか見つけることができない。
さらにこの魔物は身に危険が迫ると一目散に逃走し、敵から遠ざかり、そして……
「ピィィィィイ」
身の危険を瞬時に察知した魔物が鳴き声を上げる。
甲高く、森中に響くように広がった音は、樹に、土に、岩に、染み込むように一時の静寂をもたらした。
鳴き声を上げた後、ようやく魔物に到達した風はたやすくその小さな体を両断した。
短く、か細い悲鳴をあげた魔物はどちゃっと湿った音を立てて地面に落ちた。
「遅かった……」
『でも魔物は倒したよ?』
確かに倒しはした、だが……
ノイジーが近くにいたのは想定外だったが事前に知っている情報があったのに見落としていた。
逃げ出した時点で気づいていれば何とかなったはず、いまさらになってそんな後悔が浮かぶ。
『なんか、風が』
揺れていたはずの葉がぴたりと止まり、遠くで聞こえていた獣の声が聞こえない。森から、異様なほど音が消えていた。
「ロト、警戒の範囲を広くして」
『わかった』
戸惑っていた様子のロトだったが、この奇妙な状況に気圧されているのかすんなりと風を広げる。
「……っ!これ!」
地面が揺れていた。
森全体が小刻みに震え、いたるところからボコボコとノイジーが顔をだす。
揺れが止まり、再び一時の静寂。
「ロト!」
瞬時にファンの周りに風のカーテンが張られる。
直後、
「「「「ピヤァアアア!!」」」」
ファンたちを取り囲んだ一面のノイジーたちが一斉に超音波を放った。
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