第2話 遭遇

「さて…」


早速メニューにあるナビ機能とやらを使ってみると、街の入口付近にある地図を見るように促されたので移動してみると細かな街の構図が書かれていた。


「兎に角、先ずは冒険者ギルドに行き金を稼がないといけないから冒険者登録をしに行くか」


ナビ機能の目的地を冒険者ギルドに設定して、道を歩く。道中頼んでおいた、大剣が届いたらしくアイコンが光っていたのでタップして、装備項目を押して取り出すと、思いの外軽くて驚いた。どうやら発注通りの品物のようだ。


「よし、着いたな。しかし…思ったよりも大きいな」


想像していたのは、こじんまりとしたギルドだったのだが街のギルドとあって中は広々としていて綺麗だった。個人的には冒険者稼業なんて血みどろな職業はオッサンが多く、飲んだくれによって悪臭が漂っているイメージがあったのだが、どうやらココでは朝昼は酒を売らないようにしているみたいだな。その甲斐あってか、朝の片付けは大変なんだろうけど…。


「お姉さん、すいません。冒険者登録の方お願いしたいんですけど」


「畏まりました、ではこちらの方に記入の方お願い致します」


渡された書類を見てみると、意外にも日本語で書かれていた。名前と職業、それから出身地(任意)。これらを書き終えて受付嬢へ渡すとランクの説明をと言われかけたが断った。ナビが既に説明文を出してくれているので、わざわざ説明を受ける必要は無いのだ。ランクはFからSまでの7階層に別れていて、依頼の達成量やギルドへの貢献度で昇格の方が判断されるらしい。


「ゴブリンの討伐依頼を受けたいのですが…」


「討伐依頼ですね、畏まりました。では討伐達成の際には討伐証明となる右耳の回収の方よろしくお願い致します」


因みにこの依頼は、ゴブリンを倒せば倒す程金額が貰えるため早急に金が必要なこの状況に適しているなのだ。


ギルドを出た後、早速ゴブリンが多数生息している近隣の森へと向かう。暫く歩いていると再びアイコンが光り出したので、タップしてみる。


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・装備

・アイテムボックス

・ステータス

・パーティ

・ガチャ

・ナビ

・ログインボーナス NEW

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大剣の次は、頼んでおいた項目が追加されていた。煙草があるならやる気も入る。戦闘後に一服やろう。


「取り敢えず今は…ん?あれか」


メニューを閉じ数歩前進すると、人間の子どもサイズのゴブリンが3、4体ほど見えた。幸いにもまだ気づかれていないらしく何かを見つけて騒いでいる。


(一体何を…)


ゴブリンの視線の先を追って見ると、そこに居たのは剣を構える少年と怯えて腰を抜かしている少女だった。見た目、10歳くらいに見えるその少年らは冒険者になりたてと思われるくらいに怯えていて、剣を振ったことがない俺でも酷いと思える程の戦闘経験の無さが見て窺えた。


「はぁ、こういうのはもっと若い勇者とかが助けるべき王道場面だろうが…。オッサン何だけどこっちは…」


と言いつつも、ゴブリンの背後へと周り大剣を振るう。あっさりとゴブリンのうち2体は腹部を引き裂かれて絶命した。


「ギギャ!?」


「さすがに気づくと思ったけど、遅せぇ、それに臭いしグロイから。にしても切った感覚ねぇな、これも仕様なのか?」


瞬時にアイテムボックスからガチャで出した鉄の短剣を取り出し投擲すると見事に眉間を貫いた。頭の中でピロリン♪とちゃちな音が響いたが、これはどうやらレベルアップ時の音らしい。


「坊主たち生きてるか?助けるべきかどうか一瞬悩んだが、今回は助けさせてもらった」


「ありがとなぁぁ!!おっちゃん!!俺たち、孤児院上がりの冒険者なんだけどさ、今回初めてゴブリンの討伐以来受けたんだけどこれが思ったよりも大変でさ」


助けられた事による影響なのか、少年は近づいてくる。


「おぉ…殺されそうになってた奴がよく喋るなおい。ま、それだけ元気なら大丈夫だろ。取り敢えずゴブリンの耳は俺が貰っていいか?」


拙い、この感じはフラグだな。流石に子どもを放って行くのは拙いとは思う。けどな、俺も生活が掛かってるんだ。この場は早急に立ち去らせてもらう。


「うん、それは別に…っな!?」


「おい、どうした急にそんな青ざめて」


「おっちゃん、多分さっきの戦闘を覗いていた生き残りのゴブリンが、巣穴のゴブリン達に応援を呼んだらしいんだよ。こっちに物凄い数向かってきてる」


少年は慌てた様子で、俺に言ってくるが俺は早急に金が必要だし戦闘経験も稼いでおきたいしで、逃げるという選択肢はないのだ。だからこの場合とっておきの言い訳を作っておこう。俺はログインボーナスを押してタバコを手にする。


「そうか。なら少年、お前はそこの少女を連れて街まで逃げろ。俺は適当に時間を稼いだら撤退するから。ふっー、やっぱ煙草は良いねぇ、気合い入るわ」


いいながら、大剣を拾い直し煙草に火をつけた。


「んなっ!僕も戦うよおっちゃん!」


「さっきまでやられてたやつが、何言ってんだ。厳しいかもしれないが、1つ教えといてやる。優先事項を間違えるな、お前が今やるべき事はそこの嬢ちゃんを連れて逃げる事だけだ。つまらねぇ後始末何ぞ、俺ら大人に任しとけば良いんだよ」


暫くの沈黙の後、少年は渋々と言った様子で少女を背におぶった。引き際がわかる子どもなら将来有望だなと思いつつも、顔立ちがいい事に少々イラッとした。



「ぐっ!分かったよ!絶対死ぬなよ、おっちゃん!」


少年が走っていった数分後、茂みに隠れて様子を伺っていると少年の証言通り、およそ40はいると思われる、ゴブリンの群れが辺りを散策していた。


(見た目が違うのが3体ほどいるな)


基本ゴブリンの装備は、棍棒や簡易的な弓だったが、この3体は違った。剣、杖、槍。この武器を装備していて尚且つ防具まで着用している。警戒すべきそいつらの周りにも側近と思われる剣や槍を持ったゴブリンが6体ほどいた。


(恐らくだが、あの杖のゴブリンが1番面倒だな)


この世界の魔法という技術を俺はまだ、実際に見たことがなく使ったこともない。その為必然的に優先して倒すべきなのはあの杖を持つゴブリンなのだ。


(短剣投擲して死ぬなら良し、死なぬなら…)


俺は茂みから杖ゴブリン目掛けて投擲を行った。すると見事に杖ゴブリンの頭を貫き血飛沫が噴き出す。あまりに唐突なことに困惑しているゴブリン達の隙をついて特殊武器持ちを狙う。


「よし、第1目標完了。次っ!」


「グギャ!?」


俺は地面から砂を手に取るとゴブリン達の眼球へと投げつける。情けない声を上げながら苦しんでいるゴブリンの首を次々に大剣で切断する。


「弱いな…ん?」


返り血で赤くなった俺の姿を見て生き残ったゴブリン達は我先にと逃げていった。


「ざっと…こんなもんか。にしても返り血汚ぇ…」


地面に大剣を突き刺し、タバコを吸おうとメニューを開くとステータス項目が光っていた。


(これは…あれか)


ステータス項目をタップすると、予想通り俺が作っていたゲームのプレイヤー用のステータスシステムのようだ。


(レベルが上がっているし、スキル振り分けポイント何かもあるな)


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Lv15

名前:常詠 仁(とこよみ じん)

職業:剣士Lv5 狂戦士Lv1


HP(生命力)400/1500

MP(魔力) 350/1350


STR(力) :350

DEX(器用) :150

VIT(物理防御):200

AGI(敏捷) :280

INT(知力) :100

MND(精神力) :85

LUK(運) :10


パッシブスキル

・敵意感知Lv3


アクティブスキル

・剣術Lv2

・大剣術Lv2

・隠蔽Lv1

・投擲Lv1

・縮地Lv1


ユニークスキル

・才能開花

・主人公


スキルポイント余り:35

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(スキルポイントを押すと、強化に使用するか、新たなスキルを入手するか、選べるみたいだな)


取り敢えずアクティブスキルのレベルを平均して2に上げて、プラス余ったポイントで付与スキルを取得した。


「そう言えば、ゴブリンたちの死体は…」


ステータスを閉じ、ゴブリンたちを倒した方向を見直すとそこに死体はなく、もしやと思い直しアイテムボックスを見直すと、死体含めた装備品諸々全て入っていた。


「まぁでも、これ結構額いくんじゃねぇか?当初の目的であるゴブリン数体の討伐+特殊個体の討伐だからな。最低でも明日の宿代くらいまでにはなったんじゃねぇの」


ただ一つ疑問に思ったことがある。それは、今回の討伐ではあれだけの数がいた事が確認出来たのにボスクラスの魔物はいなかったのだ。単に転生した俺が強かったってのもあるかもしれないが、恐らくはこちらの戦力を見誤った向こうの誤算だろう。であれば、逃がしたゴブリンたちがどう動くかなど想像に固くない。


(今回の比では無いほどの数が、そう遠くない日に攻めてくるかもしれんな、早急にギルドに報告せねば)


ガチャで出した水を使い、血を洗い流したあと、急いでギルドへと帰還した。

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オジサン、転生するってよ もやしP @hibiya0815

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