オジサン、転生するってよ
もやしP
第1話 転生します
ふと、目覚めると全く知らない部屋のベッドに横たわっていた。
「お、やっと起きたみたいだな」
起き上がりながら声をかけてきた方を見ると、修道服を着た金髪美女がそこにいた。
「俺は…。いや、そんなことは今はいいか。ここはどこだ?それに、アンタは誰なんだ?」
「私はクレイラ。ここは狭間って言うお前がいた地球と異世界を結ぶ場所だ。因みに私は神様ってやつが勝手に決めた案内役だ、短い間ではあるがよろしくな!」
「随分眩い姉ちゃんだな…、こちらこそよろしく」
差し出された右手を握り返すと、ニカッと少年のような笑みを浮かべ肩をばしばし叩いてくる。
「んで、俺はまた何でこんな所に来ちまったんだ?その…神様とヤラに何かやってしまっていたか?」
「別に粗相は働いてないと思うが、ただ今回は何て言うのかな…偶然の出来事ってのが色々と積み重なちゃってね」
「っていうとアレか、餅を喉に詰まらせて死んだとか、石に躓いて転倒した後、偶然酔っ払いがビン持って襲ってきたとか」
「流石にそんなしょうもない理由で死んでないよ、って君の人生の1ページじゃないかそれ!よく生きてたね!?」
昔から何かと不幸な事に巻き込まれる体質だった。その為、何度も死にかけた事も多かった。その度に最悪の事態の回避と対処の仕方を学んだりもしたが。
「これ以外は特に思いつかないが…理由、聞いてもいいか?」
「都合が良かったからだよ、君の人生を少し覗かせてもらったけど君は君が思っている以上にお人好しだからね。それでいて、周りに好かれているという事実でさえも否定し続けている。そういう人格者は、己の価値を過信せずに評価することが出来るから良くも悪くも神様にとって扱いやすい存在ってことさ」
お人好しなのは自覚しているが、俺が好かれている?それはありえない。幼少期には、考え方や価値観が同級生のヤツらと異なったおかげで友達は愚か、先生方にすら避けられていたのだからな。
「付け加えるなら、君は"天性の孤独"体質らしいんだよ。神様が間違ってそう設定しちゃったって話を耳にしてね。色々と間違えてしまったお詫びという事で今回こういう形で呼んだってことさ」
「確かに友人と呼べるものも数える程しかいなかったし、未婚だったからな。しかし、その程度の理由なら俺以外にも腐るほど該当する者がいるんじゃないのか?確かにここに来る以前は、幸福な人生だとは言えない程、理不尽に扱われたりはしたが、納得する人生ではあった」
「んー、その辺はよくわからないとしか言えないかな。決めんのは神様だし。私はただ言われた事をそのまま伝えてあげることしか出来ないし」
そう言うと、俺が寝ていたベッドの向かいにあった黒板に何やら書き込み出した。
「それで本題なんだけど、君にはコレから異世界である"オリジン"に行ってもらう。この世界は所謂、"剣と魔法"がある世界で個人の実力を表す"ステータス"もあり当然の事ながら国も繁栄している。国と言っても一概に人のみが設立した国だけではなく、人間以外にもエルフやドワーフと言った種族がいる国も存在している」
簡素な絵を描きながら話してくれるので非常にわかりやすい。
「要するにゲームみたいなものと思っていいのか?」
「そうだ、簡単に言うとそういうものと思ってくれていいぞ。ゲームと違う所は死んだら終わりって所だな」
「それでその世界で俺は何をすればいいんだ?」
「別にこっちから決まった指示はしねぇよ、自由に生きたらいい。前回が前回なだけに今回に関してはサービスみたいなものだと思っておけばいい、さらにオプションとして今なら武器とスキルがついてくる 」
如何にもな限定キャッチフレーズを聞くと余計に行きたくなるのが道理だろう。それに、最早地球でやるべき事は無くなったしな、2度目の人生を貰えるのであれば願ったり叶ったりだ。
「そうだな、武器やスキルってのは指定できるのか?」
「1つまでは指定できるけど、それ以外はランダムになるよ。オリジナルのスキルや武器を作る場合は初期ステータスからのスタートだから補正はかからないけどね」
それを聞いた俺は、ベッドから起き上がり、黒板に書き出した。
「例えば何だけど、ログインボーナスってスキルを作った場合に指定したものを3つとランダムなものを2つ手に入れるスキルって作れるのか?」
「その指定するものが特別なものじゃないなら、大丈夫だよ。例を挙げるなら飲食物とかね」
「なら、タバコとライター。それと缶のブラックコーヒーを頼む。武器は大剣で俺が持つ分には重くなくて、ダメージを与える時や他人が持つ分には物凄く重く感じるものがいい」
この三種の神器は、地球でも多くの場面を共にしたものだからだ。会議の時も、残業の時も何時いかなる時でも持っていたからな。もはや戦友レベルだ。
「ふむ、それでいいのであればこちらは困らないけど…」
「問題ない、寧ろこの欲求を呑んでくれる事が有難い」
頷くとクレイラは、端末を操作していた。
「取り敢えずデータの方は、神様に送ったからそれが終わるまでの間にこれに着替えて」
「これは、軍服…と言うかこの前までサポートしてたゲームの…」
「名残惜しいかと思って。思い出の品に複数着作っておいたの、アイテムボックスに送っておいたから」
ピロン♪と言う音とともに視界の端っこにメニューが光っていた。人差し指で押してみると項目が複数個出てきた。
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・装備
・アイテムボックス 新着アリ
・ステータス
・パーティ
・ガチャ
・ナビ
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アイテムボックスを押してみると中に入っていたのは、男性・女性軍服の二種類だけだったがどうやらこれは性別の区別と言うだけで男性の軍服をタップしてみると複数種類出てきた。それもカンストで。俺はガチャという項目が気になったので、質問することにした。
「なぁ、このガチャってのはもしかしなくてもアイテムやキャラなんかが出たりするのか?」
「おう!やっぱソシャゲって言ったらこれだろって神様が言ってたからな。まぁ、お前が作ってたゲームのキャラや装備品、アイテムとその他諸々だな。それは実際経験する方が早い、画面の無料10連をタップしてみな」
言われて見ると、通常のレアガチャの他にも無料10連があった。タップしてみると手元にプレゼントボックスが現れ、メッセージに紐を引くように促される。早速引いてみると結果はご覧の通りだった。
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☆1 木の剣
☆1 木の弓
☆1 木の槍
☆2 鉄の短剣
☆1 木の斧
☆1 水
☆1 りんご
☆1 小麦の種
☆4 スキル 「才能開花」
☆3 帝国魔導兵士(女)
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「色々とツッコミどころ満載だが、主要キャラ以外にも出るんだな、帝国兵士っつー事は鬼の指導教官ザギルの配下か。確かあそこの兵士は精鋭揃いで下っ端でも☆3以上だったからな、強いのは間違いないんだが…一つ問題がある」
「っと言いますと?」
「アイツらは、自国や自国民の為ならば自分が死んでも良いと平気でそう思っている、実際ストーリーでもそういう危うい場面は描写されている。兵士が死んだ後に悲しみ嘆く家族の表情、上層部の下衆な考えに巻き込まれた無関係な人々の理不尽さと来たら、思い返すだけでも吐き気がする」
「戦争とは元来、理不尽なもの。それにキャラとは言え、きちんと、生が与えられるわけだから君が兵士達を間違わないように導けばいいんじゃないかな?」
少々悩んだ末、呼び出すのは一旦保留しておくことにした。そもそも、衣食住が揃っていない現段階で人間を増やすのは駄作だからだ。それに、女の子って事は部屋を別にしないと流石に俺の睡眠時間が消える。いやマジで。
「さてと、だいぶ時間も押してきたしそろそろ自動転移が始まる頃合いだね。足元を見てみな」
言われて見ると、魔法陣らしきものが徐々に濃くなっている。恐らくこれが転移魔法なんだろう。
「それが完全なものになれば、勝手に向こうに跳ぶからその前に説明しておくよ。君がコレから降り立つのは人族の国の1つ"サスタル"の街ネスト。そこは比較的治安もよく物の流通なんかも良いから最初の拠点にはいいと思う。それから、さっきの件は、神様の業務が終わり次第メニューアイコンに項目が増えるはずだからよろしくね。それじゃ」
その説明を最後に眩い光が視界を奪った。次の瞬間俺が目にした光景は、繁栄している街だった。
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