エピローグ
「ねえ! おじいちゃん! おじいちゃんってば!」
「ああ、すまない。少し寝てしまってたかな?」
「もう! おじいちゃんなんか大嫌い!」
「ごめん、ごめん。プリンをあげるから機嫌を直してくれよ」
「プリンか~。うん、いいよ!」
「ありがとうね。しかし、お前のおかげでいい夢が見れたよ」
「どんな夢?」
「昔の夢だよ。おじいちゃんにとって大切な人との、ね」
「ふーん。よかったね!」
「ああ、とても」
夢の中で僕は未来と会っていた。夢で見る彼女の姿は最後に見た時のままだ。相変わらずの水色のデニムに白の長袖パーカー。性格を表したかのような優しい目とショートカットの黒髪が、幼く見える彼女の顔をより若い印象を受けた。
夢であることは理解しながらも僕たちは思い出の場所でたわいのない話をした。
生卵は握りつぶそうとしても割れないなら象の足で踏まれても割れないのではないか、とか、去年の夏は暑すぎて蚊がいなかったとか、本当にどうでもいい話だ。
けれど、その時間がとても楽しくて、終わってほしくない時間だった。
ベンチから彼女が立ち上がる。
そろそろ行くのかい? と僕が尋ねると彼女は笑って頷いた。
背中を向ける未来を強く抱きしめる。夢の中であっても体温がしっかりとあって、とても暖かくて、涙があふれてくる。次第に薄れ消えていく彼女に精一杯の謝罪と感謝を伝えた。
残念ながら彼女が消えるよりも先に僕の意識が途絶えてしまって、彼女の返答を聞くことはできなかった。
未来(そら) 赤山 弾 @akayamadan
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