第3話 警ら勤務

異動してから数週間後の午前7時30分

制服に着替え、警ら勤務いわゆるパトロールに出るところだ。

今日は村の小・中学校の入学式でありその登下校の見守りを行うことになっている。

駐在所の勤務員として毎年この日から1週間は見守り活動を行っている。

田舎とはいえ、そうゆうやつがいれば無垢な子供達が犯罪に巻き込まれるかもしれない、

それを防ぐ為にも必要な業務と言えるだろう


「あっ、基地ですか?神野です。これから学童警戒を行うので、駐在所空けます」


本署にある基地局(警察署にある指令所みたいな所)へ電話し、自転車でパトロールに出る


この村には相楽川(さがらがわ)という川がありその土手の遊歩道がほとんどの生徒の登下校ルートである。

また、駐在所からもそこまで離れていない事から、子供達がよく尋ねてくると前任からの引き継ぎを受けていた。


「おはようございますぁぁぁす!」


駐在所の前を元気に走っていく男の子、黄色の帽子に真新しいランドセル、新入生の子だろう


「おはよう!走ると転けるぞーこの辺道がでこぼこしてるから!」


ステン!


あっ、コケた

漫画みたいに頭からいったな〜


「おいおい…大丈夫か〜」

確認しながら男の子に近寄る。

声に反応してこっちを向いた男の子、向いた瞬間に大泣きしだした、確認したところ膝と肘を擦りむいただけで、そこまで大した怪我ではなさそうだ

「おしおし、そこまで大怪我とちゃうぞ〜お巡りさんの家で消毒と絆創膏貼ってこうなぁ」

男の子を抱えて駐在所に戻る、水洗いと消毒でより一層泣き喚いたが、絆創膏を貼って飴をあげたら直ぐに泣き止んだ…子供って単純やなぁ。

「よしよし、よく我慢できたなぁ!僕名前はなんて言うの?」

「壮平!黒田壮平!おっちゃんはお巡りさんやんね!前のおっちゃんは?」

「おっちゃんやなくてお兄さんやぞ、壮平。前のおっちゃんは定年退職って言ってな、60歳まで頑張って働いたから仕事しなくて良くなったんや」

「そうなんや〜前のおっちゃんはいっぱい遊んでくれたわ〜」

「それは良かったなぁ、それより壮平はそろそろ学校行かんでええんか?」

「行くけど、お姉ちゃんおらん」

「お姉ちゃんはどこにおるんや?」

「家先に出たからわからへん」

分からない割には満面の笑み、余程楽しみにしてたんやろうなぁ

「ほんなら、お兄さんと一緒に行こうか」

「ええよ!おっちゃんも、学校行きたかったんやね!」

「小学校ならええけど、警察学校には戻りたくないな」

左片手で自転車を押しつつ、右手で壮平と手を繋ぐ

川沿いには桜が植えてあり、今年はちょうどいい時期に満開を迎えてくれた、

在校生や新入生が、俺を追い越しながら挨拶していく、走り出しそうになる壮平を抑えるのも一苦労だ


駐在所から10分ほど歩くと、村立小学校の正門が見えてくる、上級生数名と40代くらいの女性の先生が生徒を出迎えている。


「おはようございます。神野さん、朝早くからご苦労様です。壮平くんもおはよう」

「久保先生!おはようございます!」

「おはようございます。久保先生、見回りに来ました」

「生徒達もお巡りさんがいてくれて安心でしょう。」

挨拶ついでに世間話でもしようとした矢先

「壮平!先に行ったらあかんって言ったやろ!」

校舎の方から女の子が走って来たかと思えば、壮平の頭を思いっきりひっぱたく

「いたっ!琴葉姉ちゃん!頭どつかんでもええやん!」

「お母さんからどついてもええって言ってもらってます〜てか怪我もしてるし…駐在さんありがとうございます。」

「大丈夫やで、怪我したのがたまたま駐在所の前やったから、ついでに手当しただけやで!壮平もお姉ちゃんに心配かけなや〜」

「はーい」

姉弟仲良く後者に入っていくのを見届け、本来の業務である見守り活動に戻る

2、3回川沿いを自転車で走り、その後は校門で、登校してきた生徒を見守る最後の生徒が遅刻ギリギリで滑り込んだのを確認した所でパトロールは終了することにした。

ついでと言ってはなんだが、小学校周辺の自宅を訪問し、赴任の挨拶や巡回連絡を行い駐在所に帰所した。


その日の午後5時ころ、小学校より連絡が入った

「黒田姉弟が家に帰ってきてないそうです

捜索していただけませんか」




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