第17話 こだわりを持って仕事をする

 日本拳法でも銭湯でも、こだわりのある人というのは存在感がある。


 執着ではなく、こだわり。

 だから、俳優でも高倉健(在日韓国人)よりも菅原文太が断然いい。

 彼ら二人の演技には決定的に違いがある。

 ただの格好だけの薄っぺらな演技と、日本人に徹することで、その奥深い本性にまで達した姿を「役」に投影しているのが菅原文太なのです。


 東京の或る銭湯が私のお気に入りです。

 ここの女将(おかみ)さんにはこだわりがある。

 そして、こだわる人、真剣な人間にはそれを理解しない「敵」が生まれる。

 でも、それだからこそ本物なのです。

 

 「大巧若拙(たいこうじゃくせつ)」大功(タイコウ)は拙(つた)なきが若し。 「老子」45篇

  本当に良いものは一見稚拙に見える。

 また、

 本当に完全な物は何かが欠けている様に見える(大成若缺、其用不弊)

 本当に満ちている物は空っぽに見える(大盈若沖、其用不窮)

 本当に真っ直ぐな物は曲がっている様に見える(大直若詘)

 ・・・。


 以下は、東京へ行くと必ず行く銭湯(の女将さんに)について、ネット上に書かれたあるお客の「評価」を見て、私が書いた該銭湯への手紙です。


 前略

 いつもお世話になります。

 1月10日(木)横浜の歯医者へ行くため、早朝バスで東京駅に着き、久しぶりに気持ちのいいお湯に浸かれると勇んで参りましたが、残念ながらお休みでした。(毎日、朝6時から夜8時まで少人数で切り盛りされていらっしゃるのですから、たまにはまとまったお休みが必要だと思います。本当にご苦労様です。)


 ネットの「口コミ」には、いろいろあるようで、たまに心ない評価を読むと悲しくなりますが、むしろ私は、それが御湯・女将さんが本物である証拠だと思っています。

 100パーセント賞賛ばかりでは嘘っぽい。1割か2割の「悪口」があってこそ、本当の良さが引き立つというもの。

 私は、女将さんがお年寄りに親切にしたり、旅行客が大きなスーツケースを持ち込むと床の上に紙を敷いてあげたりという姿は、本当に美しいと感じます。キビキビと無駄のない、それでいて優雅な動作はまるで茶の宗匠のようです。


 また、時に真剣に怒られる様子を見るにつけ、いい加減な噂話や浮ついた人間ばかりの世の中、こんなに真剣に商売(仕事)と取り組んでいる人というのは貴重だなと、つくづく思います。


 朝6時に行くと、まだ未使用のロッカーは鍵のゴム紐が留め金に引っかけてある。

 「ああ、ものを大切にしているんだな。この銭湯を愛しているんだな。」と、女将さんの真面目で優しい人柄が伝わってくるのです。

 銭湯というのは他人の家のお風呂に入れさせてもらっているのですから、その家のしきたりに従うのは当然ですし、女将さんの真剣な態度こそ真のサービスというものだと、私は思います。


 「サービス」を単に「金とお客」という関係で捉えている人たちの(つまらない)評価など気にせず(気にしていらっしゃらないと思いますが)、真の人間らしい本当のサービス(本物の仕事)を、これまで通り淡々と続けて戴きたいと願っています。

 早々


 2019年1月30日

 平栗雅人


 警察官でさえ遊び半分で時間つぶしをしている今の社会、真剣に怒れるくらい本当に仕事に打ち込んでいる人、こだわり(ポリシー)を持って真剣勝負の心で生きている人間とは貴重です。

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2018年 11月25日 全日本学生拳法選手権大会 観戦記 V 2.4 @MasatoHiraguri

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