第5話 武蔵と日本拳法   2018年全日本学生拳法選手権編

 宮本武蔵は「五輪書」のなかで、戦いにおける「先」には三つあると指摘しました。


 一 三つの先といふ事

 一つは我方より敵へかゝる先、

 けんの先といふ也。


 又一つは、敵より我方へかゝる時の先、

 是は待(たい)の先といふ也。


 又一つは、我もかゝり、敵もかゝりあふ時の先、躰々の先といふ。


 これ三つの先也。

 いづれの戦い初めにも、此三つの先より外はなし。

 先の次第をもつて、はや勝つ事を得るものなれば、

 先といふ事、兵法の第一也。


 第一、懸の先

 我かからんとおもふ時、

 静かにして居り、にわかにはやくかかる先、

 うへを強くはやくし、底を残す心の先。

 又、我が心をいかにも強くして、

 足は常の足に少しはやく、

 敵のきはへよると、早くもみたつる先。

 また心をはなつて、初中後、同じ事に敵をひしぐ心にて、

 底まで強き心に勝つ。

 是れ、何れも懸の先也。


 第二、待の先

 敵我方へかゝりくる時、

 少しもかまはず、よはきやうに見せて、

 敵ちかくなつて、づんと強くはなれて、

 飛び付くやうに見せて、敵のたるみを見て、

 直に強く勝つ事。これ一つの先。

 又、敵かゝりくるとき、

 我も猶強くなつて出る時、

 敵のかゝる拍子の変わる間をうけ、

 其まゝ勝ちを得る事。是、待の先の理也。


 第三、躰々の先

 敵はやくかかるには、

 我れ静かにつよくかゝり、敵近くなつて、

 づんとおもひきる身にして、

 敵のゆとりの見ゆる時、直に強く勝つ。

 又、敵静かにかゝるとき、

 我身うきやかに、少し速くかゝりて、

 敵近くなつて、ひともみもみ、

 敵の色に従ひ、強く勝つ事。

 是、躰々の先也。

 ・・・



 懸の先 同志社Tさんの面突き

 待の先 明治Oさんの面突き

 躰々の先 立教Sさんの面突き

 がそれぞれに相当するでしょう。


 同志社Tさんの面突きは、鷹や鷲が一気に舞い降りて獲物を襲うような、強襲とも見える強引な攻撃ですが、観客として見る分には、一番迫力を感じます。

 これは去年の大会での映像ですが。

 2017全日本学生拳法選手権大会(女子団体)3位決定戦 同志社大学VS青山学院大学 https://www.youtube.com/watch?v=ydCmBXJJl uM

 2分28秒 同志社Tさんの面突き


 2018年11月 今大会でも、彼女は同じような素晴らしい面突き(懸の先)を一発見せてくれました。


 明治大学Oさんの面突きは、さすがに、まいにち男性陣の素晴らしい面突きを見て育ったのでしょう、スピードやパワーは男性に劣りますが、全く同じスタイルを彼女なりに生み出しています。

 2018日本拳法全日本学生拳法選手権大会 決勝戦 明治大学VS龍谷大学

 https://www.youtube.com/watch?v=mXXpfayS8as

 13分46秒 明治大学副将の面突き


 2018年 12月5日

 平栗雅人

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