第3話 海にいこう、優くん
篠原海里(しのはら かいり)sideーーーーー
次の日、私は看守に言われた。
《海里ちゃん、貴女はもう安心して
寝て良いのよ》
「本当ですか?」
《ええ、本当よ》
看守は何故か、泣きながら頷く。
私が安心して目を閉じると、何だか周りが
騒がしくなった。
耳には、看守たちの声が聞こえる。
《医務長を呼んできて!》
《体調が急変したわ!》
うるさいなぁ。そう思いながらも、
私は寝ていた。
急に目の前が開けて、私は海に居た。
あの小窓から見るよりも、ずっと大きな海。
…そうだ、優くんはどこにいるんだろう。
私は優くんを探した。
でも、どこにもいなかった。
海面を見ると、優くんに似た人がいた。
その人のお家だろうか、部屋でその人が
首にロープを掛けようとしているのが見えた。
「……ねえ、死んじゃダメっ!」
私は懸命に叫ぶけど、その人には
聞こえていないみたいだった。
その人は笑顔で、そのまま、
首にロープを掛けて、椅子を蹴った。
《そのひとがけったいすが、たおれた。
そのひとのからだが、ものみたいにゆれた。
ぶらぶら、ぶらぶら。ふりこみたいに。
ただゆれていて、にこにこわらってた。
こわい。こわい。こわい。こわい。
いやだ。いやだ。いやだ。いやだ。
こんなの、ほんとうじゃない。
うそだって、しんじたい》
《…他人で、あってほしい》
私がその場にへたり込むと、後ろから肩を
叩かれた。
優くんだった。
いつもみたいにニコニコ笑ってた。
なあんだ、やっぱりあれは違う人
だったんだ。
私は優くんに聞いた。
「優くん、来てくれたの?」
『うん。海里に会いたかったから。
ちょっと約束より早く来ちゃったかな』
「ううん、良いよ。一緒に遊ぼう」
『分かったよ』
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