第2話 《白い監獄》(優くんside)


(彼)暁優(あかつき ゆう)sideーーーー


僕は、彼女のいる監獄に来ていた。


看守さんに受付をしてもらって、

彼女の独房へと連れていってもらった。


独房の中で久々に見た彼女は、頭に

包帯を巻いて少しやつれてこそいたものの、元気そうだった。


『何で君が?』


あの綺麗な声も、何一つ変わって

いなかった。


「良かった」


僕はそれだけ言って、彼女の小柄な身体を

抱き締めた。


看守さんが何か言った気がしたけど、

分からなかった。


『苦しいよ、放して』


彼女が笑いながら言ったので、


「ご、ごめん!」


僕は急いで離れた。


彼女はそれがおかしかったのか、

また笑った。


『ねぇ、私、そろそろここを

出られるんだって。出られたらさ、

海を見に行こうよ』


「そう、だね」


僕は彼女の計画を笑いながら聞いていた。


彼女は、こんなことを言った。


『あの人たちね、私がそろそろ

《ここを立ち去って、海に行ける》って

言ってたの』


海に行ける。その言葉が、刺さった。


「海に…って」


『どういう意味だろうね?』


僕は思わず、彼女をまた抱き締めた。


「…海里…僕を置いていかないで……っ」


僕はぐすぐすと情けなく泣いていた。


彼女が僕の背中をぽんぽんと叩き、言った。


『大丈夫だよ、私は居なくならないよ』


「…本当に?」


『うん、約束するよ』


彼女はその細い小指を僕の小指に絡め、

指切りをする。


《時間は終わりよ、出ていってちょうだい》


看守さんに言われ、僕は看守さんと一緒に

彼女の独房を後にした。

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