海の見える《白い監獄》

匿名希望

第1話 《白い監獄》


篠原海里(しのはら かいり)sideーーーー


ここは、窮屈で真っ白い監獄だ。


私は監獄のベッドで目を覚ます。


腕に繋がれた鎖も、掛けられた毛布も。


小さな鉄格子の小窓から見える、

やけに綺麗な海も。


何もない殺風景な部屋も。


何もかも、昨日と変わらない。


看守たちの話を盗み聞きした

ところによると、 私はもう少しでこの

監獄を出られるらしい。


監獄を出られたら、何をしよう。


待たせっぱなしのあの子に会いに

行かないと。


美味しいご飯も食べたいな。


綺麗なお洋服だって着たい。


ピンクの服を着た看守が、扉をノックする。


《貴女に面会よ》


看守がドアを開けた。


そこには、あの子がいた。


私がずっと待たせていた、優くんが。


「何で君が?」


私が問い掛けると、彼は私を抱きしめた。


『良かった』とだけ言って。


《面会時間は5分よ》


看守がそう言ったのも、

聞こえていないようだった。


「苦しいよ、放して」


私が笑いながら言うと、彼は


『ご、ごめん!』


と言って、私から離れた。


「ねえ、私、そろそろここを

出られるんだって。出られたらさ、

海を見に行こうよ」


『そうだね』


私が思い描いていた計画を話すと、彼は

笑いながら聞いてくれた。


「あの人たちね、私がそろそろ

《ここから立ち去って、海に行ける》って

言ってたの」


私がこう言うと、彼の顔が真っ青になった。


『海に…って』


「どういう意味だろうね?」


彼は、私をまた抱き締めた。


『…海里…僕を置いていかないで……っ』


ぐすぐすと、泣いているみたいだった。


「大丈夫だよ、私は居なくならないよ」


私は彼の背中をぽんぽんと叩く。


『…本当に?』


「うん、約束するよ」


私は彼と指切りをしてみせる。


《時間は終わりよ、出ていってちょうだい》


看守が彼を呼んで、彼は看守と一緒に

出ていっちゃった。

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