【SF短編】優しい男

紫上夏比瑚(しじょう・なつひこ)

優しい男

 ドクター・ヨコミゾは、きわめて優秀な精神科医である。だが、この日彼の目の前に現れた奇妙な患者は、彼の類まれなる脳細胞をもってしても、人生最大に治療難易度の高い疾患を抱えているようだった。

「なるほど……。つまり君は、その自らの度の過ぎた『優しさ』という性質が、ただの性格ではなく、何かしらの疾患に起因しているのではないか……と。そうした不安を抱いて、私のもとにやってきたというのだね」

 着古してぐしゃぐしゃになった白衣を着流して、気位の高そうな黒縁メガネを上げ下げしながら、ドクター・ヨコミゾは目の前の患者とカルテとを交互に眺めて話している。その声は医師の猫背を通って尻から出ているかのようにくぐもっていて、早口に動く青い唇は、この男――患者のマルオでなければ、聞き取れないほどに独り言じみていた。

「ええ、そうなんです、先生」

 と、よどみなくマルオは答える。

 マルオは、ひと目見て、精神病院に通うようなタイプの男ではない。小奇麗なシャツにうなじで切りそろえられた黒髪、漆黒の瞳は使命に輝ききらきらとしていて、まぶたの下には一点の曇りもない。だが、歴戦の精神科医であるドクター・ヨコミゾは、微塵も動揺を見せることはなく、舐め回すように目の前の患者の様子を毛穴の奥まで観察していた。

「物心つく頃から、他人のために生きるのが私の使命だと思っていました。先天的に、私という人間はと、まるで天が私に使命を与えているかのように、内なる声を心の奥底で聞いて育っていたように思います。奉仕の見返りがあるときも、ないときも、私はただ『他人の役に立つ』ことを、何よりも誇りに思いながら生きていたのです……」

 絞り出すような演劇口調のマルオの言葉に、ドクター・ヨコミゾの眼鏡の奥の瞳が、きらりと光る。続けて、と顎を振ってうながすドクターの動作に、マルオが再び息を吐く。

「数年前、私に好意を寄せてくれた女性がいました。彼女とは随分長いことそばにいましたが、私は全ての人を助けたいと願っていて、彼女の言う『特定の誰かを愛する』ということが、私にはわかりませんでした。やがて、他人を助けるためにあらゆる犠牲を払う私の行動に怯えたのか、ある日彼女は『あなたが怖い』と言い残して、私のもとを去っていきました」

 マルオの言葉が、だんだん震え始めるのにも構わず、ドクター・ヨコミゾはマルオの言葉を逐一カルテに書き留め続ける。その目はぎらぎらと獲物を見るように光り、乾いた唇は今にも舌なめずりをしそうだった。

「先生。ひょっとしたらあの声は、私にとって当たり前だと思っていた使命は、私の命を奪ってしまうものではないのでしょうか。彼女に自分の異常性を指摘されて、私はそれがとても怖くなりました。私には、自分のこの追い立てられるような使命感が日に日に強くなっていることがわかるのです。先日は失明した人のために、私の角膜が渡せたらといいのにと思い、無意識に足が病院に向かっていました。その翌日はこの足を切り落として、下半身不随の患者の役に立てて欲しくなった。その翌日は腎臓を、肝臓を、心臓を……。このまま行けば、私がそう遠くない頃にこの世を去ってしまう。先生、あの声は一体……!」

「わかった! ああ、よーくわかったとも」

 温度の高まっていくマルオの話を制するように、それまで黙っていたヨコミゾ医師が右手を軽く上げた。人差し指と中指でつまんだペンを、神経質そうにくるくると回す。

「君は、間違いなく難病の患者だ。他人の意のままに動くことに至上の喜びを感じる、それ自体は特に悪いことではない。だが……君の場合、いささか常軌を逸しているように思える。それも、よくある他者依存性の高い精神疾患とはまた別の……。いや、よくぞ私のもとに来てくれた。おそらく私以外に、君を治せる者はおるまい」

 自らの持てる精一杯の歪んだ笑顔を浮かべながら、ヨコミゾ医師の心の中は下卑た計算でいっぱいだった。まだ、世界に類を見ない症例の患者が、今自分の目の前にいる。うだつの上がらない研究生活を送っていたが、思わぬ実験動物モルモットが手元に飛び込んできたものだ。これで、自分を追放したあの学会を見返してやることができる……。

「この病の完治には、君自身の強靭な意志と、私の天才的な頭脳、どちらも必要不可欠だ。二人で力を合わせて、君の病気に立ち向かおうじゃないか」

「先生……。ありがとうございます」

 こぼれるように爽やかなマルオの笑顔を見て、ドクター・ヨコミゾの心に、ふわりと優しい気持ちが広がる。

 ふと、ドクター・ヨコミゾは頭の片隅に浮かんだ疑問を彼にぶつけてみた。

「時に、マルオ君。君はどうやってこの院を見つけたのだね。私は精神科医としての看板をもう長いこと出していないし、何よりここは外界とは交通手段の絶たれた山奥だ。いや、人里離れた山奥ここに住んでいるのは私のポリシーであって、決して都会の同業者どもの間に私の居場所がないわけではないのだが……ともあれ、ここは簡単に見つけ出せる病院なんかじゃあないはずだ」

「ああ。そんなことですか」

 なんでもないような顔をして、マルオはしれっと笑った。

「簡単なことです。ドクター・ヨコミゾ、あなたがこの国で一番、自分の研究分野で学者だからですよ。もしも僕のこの病気が、世界的な難病で、解決策を見つけようと皆が手をこまねいている状態なのだとしたら、この病気を治したあなたは一躍、世界のヒーローになれるでしょう。そして私は実験道具として、あなたの役に立つことができる……」

 その返答に、思わず、ヨコミゾ医師の背中にぞくりと悪寒が走る。

 ――こいつは、本物かもしれない。

 これまで見てきた、どの精神病患者とも違う。マルオにとってはこの常態がであり、多くの人間が気味悪がるであろう生き方のルールは、彼にとって当たり前の本能に過ぎない。その彼の生態が、ドクター・ヨコミゾのこれからの運命を、大きく変えてゆくことになるのではないかという予感が、彼の頭の中を渦巻いていた。


 その日から、ヨコミゾ医師とマルオの、難病完治のための途方もないプロジェクトがスタートした。

 だが、当初の懸念とは別の問題によって、ドクター・ヨコミゾの研究は全くうまく進まなかった。彼の主とするカウンセリング治療に対し、マルオは常に彼の先を読み、彼の望む言葉を返してしまうため、調査結果に極めて複雑怪奇かつ致命的なノイズが入り込んでしまうのである。さらに頭を抱えたドクター・ヨコミゾが、いっそ投薬治療を施そうと、特効薬や解決策を開発し臨床実験を始めようとしても、マルオは彼を一時的な幸福に酔いしれさせる快感を追求して「治ったフリ」をしてしまい、一向に治験が進まないのである。

「マルオ君、君は私を困らせて楽しいのかね!」

 辛抱強いと自らの性格を自負している(と、思い込んでいるのはドクター・ヨコミゾだけであり、実際には彼は他の誰よりも気が短いので有名な男である。それもまた、彼が学会を追い出された要因の一つに他ならないのだが)ドクター・ヨコミゾが、カルテを天井に叩きつけんばかりに放り投げて声を荒げたのは、一度や二度ではない。そのたびにマルオは柔らかな笑顔で、こう答えるのだ。

「落ち着いてください、ドクター・ヨコミゾ。僕の病症そのものがあなたの足かせになっていることは何よりも承知しています。しかし、そう怒っていてはあなたの精神に影響するストレスが心配だ。ほら、あなたのお好きなカモミール・ティーはいかがですか?」

「ドクター・ヨコミゾ、あなたは誰よりも優秀で、素晴らしい頭脳をお持ちの医学者だ。そう遠くない将来、世界中の誰もがあなたを褒め称える日が必ずやってくる。僕は信じています、あなたが必ず僕を治してくれると……」

 一緒に長い時間を過ごしてみてわかったが、マルオの病気は普段は決して病気じみているわけではない。ただ、相手の人格を把握し、相手の喜ぶ行動をしたり、言葉を投げかけてくるのが、のだ。ただそれだけであれば、マルオはおそらく通常の社会生活において、誰からも愛され、誰からも重宝される、素晴らしい人間として皆の輪の中心になっていたことだろう。だが、はそんな生易しいものではない。彼のそうした言動が、彼自身の病的な奉仕精神に基づくものであるとわかってから、こうした言葉が彼の口から出るたびにドクター・ヨコミゾは眼鏡を外しこめかみを抑えて、「今日の治療はここまで」と言ってさっさとベッドの中に潜り込んでしまっていた。

 対話療法も駄目、環境療法もやり尽くし、薬物療法はマルオの病症そのものが障壁となって遅々として進まない。日々だけがいたずらに過ぎてゆき、それにともないマルオの優しさの病症は日に日に悪化してゆく。その様子を見ているドクター・ヨコミゾの心にもまた、焦りばかりが積り続けていた。

 ある日、鈴虫の鳴き声が夜のとばりを運んでくる真夜中のことだった。いつものように悪夢を待ち構えるような心持ちで床に入ったドクター・ヨコミゾは、足元から腹へ、そして胸へと、なにか重しのようなものがせり上がってくるのを感じた。今宵の悪夢はいやに現実的だと思ったドクターがうすぼんやりと目を開けると、なんと自分の腹の上に人影が見える。――マルオだった。

「おい、マル――」

「ドクター・ヨコミゾ。僕は怠け者で、あなたの研究の役にも立たない穀潰しだ。せめてあなたの役に立ちたくてたまらない。……ドクター・ヨコミゾ……女性とは、どれだけ長い間縁がありませんでしたか」

 本気の目だった。がくがくと自分の体中が熱を帯びるのに怯えるように、久しぶりどころか生まれてこの方性的な某かとは一切の縁を持たなかった――持てなかった――ドクター・ヨコミゾは、弾かれるように飛び起き、マルオに「出て行け!」と叫んだ。真夜中の闇はすっかりドクター・ヨコミゾの部屋を壁まで黒く塗りつぶしていて、マルオの表情はよく見えない。

 マルオらしき人物のシルエットは、胸をぐい、と抑え、苦しんだようなそぶりを見せたかと思うと、そのままうめき声をあげて部屋を出てゆく。

 眼の前から危機が去ったのを見ると、ドクター・ヨコミゾはひとまず冷静さを自らの身体に取り戻させるべく、机の明かりをつけ、タバコに火をともし、古いオフィスチェアをキシキシと鳴らしながら身を沈めた。先程のマルオは、明らかに異常な様相だった。誰かの役に立ちたい……その欲求が肥大化して、あのような行動に駆らせたというのだろうか。だとしたら、おそらくこの病気は、ドクター・ヨコミゾが考えていたよりも、より恐ろしい結末へとひた走っている……。

 ドクター・ヨコミゾは音を立てないようにそっと自分の部屋を抜け出し、マルオの部屋に忍び込む。患者用に簡易的に用意したベッドに横たわり、マルオは小汚い布を握りしめて震えていた。

「ごめんなさい、ごめんなさい、僕はまだ生きたい、生きることで誰かを殺したくない……」

 眼の前には、自らの病気に苦しんでいる男がいる。自らの優れた脳細胞をもってしても、なお及ばないところで自らの本能的な病気と戦い、息すらもできずにもがいている、マルオという男が。ぎりり、と血がにじむほどにドクター・ヨコミゾは唇を噛み締め、決意の瞳を燃やす。再び面を上げた彼の心には、とある変化が芽生え始めていた。

「この男を治さなければ。本当にこの男が完治することを望んでいるならば、それが私に与えられた使命だ。治してやる、私の威信にかけて――」


 *  *  *  *  *


 その頃。断絶された山奥の病院から離れた、外界ともいうべき世界は、尋常ならざる異変に襲われていた。

「19××年○月×日、本日もS病院では50名の死者が出ました。ナースコールは押された様子がなく、患者たちは生前に重篤な精神疾患を抱えていたとして――」

 ――『幸福な王子症候群ザ・ハッピー・プリンス・シンドローム』。

 誰が呼んだか、奇妙な御伽噺のタイトルをもとにした病名が正式に国際医学会によって命名された頃には、一見すればただ他人を思いやれるだけの優しい心根を持った人物が、日に日に他人のために生きるという欲求に病的に拘ってゆくというこの病気は、社会経済の動きを停止させるまでに蔓延し、世界的問題となっていた。

 幸福な王子症候群ザ・ハッピー・プリンス・シンドロームに罹った患者は、一度その症状が発露すると、恐ろしいスピードで人格が変貌し、やがて己の思考がという考えに至り、その考えがさまざまな形をとって結果的に罹患者を死に至らしめる。死因そのものは極めて多種多様で、自らの体内の微生物を殺さないために自ら息を止める者、医者が与えた劇薬をためらわずに飲み死んでゆく者、食物や水を口にせず餓死する者、あらゆる方法での自死が横行した。そのスピードはあらゆる研究者や専門家が頭を突き合わせても到底解決できるものではなかった。何しろ、罹患者が死ぬと、今度はその患者の治療を担当していた研究医に感染し、大病院そのものがまたたく間に潰れてしまうという事例も珍しくないのだ。

 ある者はこれを人類の滅亡の予兆だととなえ、ある者はこれまで傲慢に地球上を蹂躙してきた人間に対しての神の罰だと言った。死ぬ者にはただ「生前はとても」あるいは「ひどい人だったのに、」という周囲の人間の評の他に共通するものはなく、女も男も、老いも若きも、ひとしく自らの心が叫びを上げる正義に則って死んでいった。他人のことを考えることが死に至るという病の発現は、さまざまな新興宗教の跋扈を生んだが、彼らもやがて病気に罹患し、組織ごと空中瓦解するものがほとんどであった。

 ただ、罹患者たちにはひとつだけ共通点があった。それは、この病気の患者は死ぬ際、誰もが、、ということである。


 20××年、×月×日。

 ドクター・ヨコミゾの決死の治療にもむなしく、外界から隔離された山奥の病院で、最初の≪幸福な王子症候群ハッピー・プリンス・シンドローム≫患者であるマルオが、ついに息を引き取った。

 マルオを看取ったドクター・ヨコミゾは、彼の死に顔を見て、その顔と同じく幸福そうな表情を浮かべていた。ドクター・ヨコミゾもまた、優しさにとりつかれた、生前の彼と全く同じ、瞳の奥にきらきらと光をたたえた顔をしていたのだ。

 マルオの死体を抱き、彼の瞳を閉じさせると、ドクター・ヨコミゾは誰にでもなくつぶやく。

「そうか、ようやく私は理解した。彼の願いは、こうして死ぬことだったのだ。自らを空っぽにし、誰かを助けることによって、自らの命尽き果てることこそが、彼の望み……。私は彼の願いを叶えてやれた。私の使命は果たされた。次は、別の人間の願いを果たしてやらねば……」

 そうしてドクター・ヨコミゾは、ゆうに数十年ぶりに人里へ降りていき……。


 *  *  *  *  *


「ドクター。本日の検診が終わりました」

「ああ、君か。お疲れ。間もなく昼食にしよう。……自動計算で完全栄養食を造るアメリカ製コックロボットは優秀だな。彼をメンテナンスする整備師がもうこの世にいないことだけが難点だが……」

 宙に浮かぶ巨大な溶液の入ったカプセルを見上げたまま、ドクターは答える。

 背後で彼に声をかけたのは、緑色の肌の女だった。金色の髪を短く刈り上げ、中性的な構造の裸体には、ドクターの欲情を掻き立てるパーツは一つもない。少々顔色が悪いだけの、に過ぎないドクターとは、明らかに種族からして異質であろうことが読み取れる風貌をしていた。

 緑色の肌の女は、ドクターの隣に立ち、ともにカプセルを見上げる。

「ドクターは立派です。こうして人類の最後の一人になっても、まだ研究を続けられているのですから……。もう、あなたの研究に礼を言ってくれる人など、この地球上のどこにもいないというのに。まあ、普通はこういう状況になったらならば、ことに多くの人間は命を捧げるものだと四億年前の記録媒体フィクションにありましたので、博士はずいぶんと変わっておられるのだと思いますが。自身の小指の関節を一つ増やす研究など、一体なんの役に立つのですか」

「は、お前もまだまだだな。私の小指の無限の可能性に比べたら、新たな人類誕生の必要性など、そこに積まれたガラクタのスクラップ一欠片ほどもないわ」

 しきりに手元の研究資料に、彼しか読めない文字を書き込みながら、ドクターは誰に対してでもなく独白を続ける。

「かつて、ある人類の代表は言った。優しさこそが人類の滅びを止め、争いを失わせ、世界の存続をなすのだと。だが、現実にはどうだ。幸福な王子症候群あの病気に罹患した者はすべて、最後には命を断ち、その病はやがて地球全土の人間に蔓延しやがてホモ=サピエンスという種族そのものの滅びを招いた。あの病気が何によって引き起こされたものか、私達には最後までわからなかった。ただわかることは、人の過度な優しさは、すなわち自我の喪失だということ。優しさのみで成立する世界、それはやはり人類の滅びにつながっていたということだ。……私は人の滅亡を悲劇だとは思っていない。いやむしろ、我々は種族としての本来の“優しさ”を永く忘れてしまったがゆえに、急に襲い来る優しさの嵐に耐え切れなかったのではないか、と思うのだ。この病気がなくとも、遠からず、滅ぶべくして滅ぶ種族だったのだろう」

「でも……ドクター。貴方は、私を作られました」

 緑色の肌の女が口を挟んだ。

「ずっと不思議だったのです。私は遺伝子操作の過程で、様々なウイルスに対しての抗体を持たされています。おそらくはその抗体の中には、貴方の言う≪幸福な王子症候群びょうき≫に対するものも、そなわっていると考えられます。この病院の周囲を散策しても、私は未だ貴方が教えてくれたような精神異常は発症しておりません……。ドクター、あなたはすでに。それも、どんな病気にも今度は持てることのない……。なのに、私一人を創られてから、ドクターは新たな生命を生み出そうとは一切されていない」

 ドクターは答えない。彼が見つめる巨大な機械の中では、神のような、悪魔のような、きわめて不快な形をした部品が、いくつも連なり合ってごうんごうんと蠢いている。

「人は滅ぶべき種族と言いながら、ドクターはなぜ人間を……そして、私を創ろうとなさったのですか。そして、どうして二人目をお創りにならないのですか。私のためですか? それともやはり、人類の未来のため……?」

「決まっているじゃないか」

 ドクターは、声を上げて笑った。

「私は優しくなどないからな。君のためでも、ましてや人類のためなんかでもない。と思ったからだよ」

 この山奥のさびれた病院に、一人ぼっちは寂しいからね。そう言うと、人類最後のドクターは、眼鏡の奥の瞳をきらめかせて笑った。 

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