第8話「逆境で逆転の発想!があるのはもとをただせば木(気)のせい」
『げぷっ、そろそろこれぐらいにして……』
(炎よ……)
『ぐはっ! お前!!』
俺が放った青白い炎は、術者である俺ごとシロアリ先輩を焼く。
シロアリ先輩は想像以上の熱さでとっさに俺から飛び退る。
しかし、それは悪手だよ……。
(土よ……)
『がはっ!!』
焼け焦げたシロアリ先輩を、下からは鋭利で固い岩が貫く。
「キィー(お~、離れましたね~)」
体を焼かれ、胴体を貫かれても動こうとするシロアリ先輩の首をカマイタチ君の鎌が斬り落とす。
グロイ。
「キィー(ふう、一仕事した後の果物はおいしいな~)」
シロアリ先輩を切り離した鎌を一振りして体液を落とすと、使っていなかったもう一方の手?……おや?普通の手になってる……を使いお隣さんが育てた果物を頬張るカマイタチ君。……カマイタチ君、お隣さんが『もっと遠くへ、種ごと運べ』って言いたげな空気出してるよ?
『……くくく、俺が死のうとも、第二第三の……』
「キィー(えい)」
シロアリ先輩が何か言おうとしたが、無情にもカマイタチ君が踏みつぶしてしまった。
第二第三……百・二百の増援……。
思わずつばを飲む俺。
いや、木だから喉は無いんだけどね!
「キィー(あるじー、結構かじられたね。痛くないの?僕、あるじと繋がってるからあるじ折れちゃうと消滅しちゃうからさ、頑張って回復しよう♪)」
そういうとカマイタチ君は鎌を手に変えるとかわいらしく小首をかしげる。
何だろう、あざとい。
会社の同期にいたボディータッチ多めの女並みに、あざとい。
「キィー(がーんば♪)」
(回復って、やり方知らんがな。自然治癒に任せたら……)
「キィー(枯れるね♪)」
『♪』つければすべて許されると思ってんの?
(やーべーよ。どーすんだよ。ここで終わるのやだよー)
「キィー(あるじー、魔法使えばよくない?ほら?あるじー、元中二病じゃん。妄想力の活かしどころじゃない?)」
(おいいいいいいいいいいいい、お前なんで俺のこと知ってんだよ! 何者だよ!!)
「キィー(あるじの魔法で生み出されたんだから知ってるよ?じゃなきゃ、会話成立しないじゃん♪それより、僕眠くなっちゃった。あとはほら、あるじの好きな『努力・根性・友情』でがんば!)」
カマイタチ君はかわいらしく鳴き声を上げるとお隣さんを上り、しっかりとした枝の上で横になる。マイペース。てか、サラッと重要なこと言ったよね?
「キィー(あるじの魔法で生み出されたんだから知ってるよ?じゃなきゃ、動物と会話なんて成立しないじゃん♪それより、僕眠くなっちゃった~。あとはほら、あるじの好きな『努力・根性・痴情のもつれ』でがんば!)」
(ちょっ、まてよ! 根性はやめて、せめて勝利にして!! てか、『痴情のもつれ』ってなんだよ『友情』だろ?……あれ?あんまり変わらない気が……)
「キィー(がんば~。あるじ、良く叫んでたじゃない。『俺は今猛烈に!』って~)」
(すとーっぷ! 俺が昭和アニメ好きだってばらすな!!)
「キィー(じゃ、頑張って。……むにゃむにゃむにゃ)」
(ねるんかーい! あら、かわいらしい寝顔)
あ、やば。命の危機感じてきた。
(死んでたまるか! ヒール!)
叫んでみた。
結果、何も起きなかった。
おい、お隣さん。ため息はよくない。
だって、しゃーねじゃん!
木の構造なんか知らねーよ。
どうやって回復するんだよ。
どうやって治っていくんだよ。
わかんねーし、知らねーよ!
でも、やばい。
このままだと折れてしまう。
萎れてしまう。
栄養の吸収が足りなくなる。
何より一番痛いのが自分で放った火がまだ鎮火していない。ピンチ!
再生過程が分からないのに治療なんてできるか!
助けて! 樹のお医者さん!!
……。
あ……。
気が付いてしまったよ……。
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