第4話「やっぱり木だった。気のせいではなく。木のせいだ…」

 冗談はさておいて、小難しく考えるのはやめよう。

 とりあえずやってみてから考えよう。

 ……どうせやることないしな!


 しかし、実験するにも実行する最低限の指針は必要だ。

 目的になしに進んでも結果を得られはしない。

 まずは最低限、考えろ。


 魔力。

 それはなんだ?


 よくあるパターンだと『血流みたな!』とか『紋章を通じて!』とか『意味の分からない呪文唱えて』とか、割と簡単に把握できる力の流れだった気が……。映画とかだと理論より結果重視だったし……。


 弱気になるな俺!

 俺はチート転生者!(きっと)

 為せば成る!(はず)

 まずはやってみようじゃないか!

 当たってくだけろ!


 と、いうことで、一番やってみたかったことから挑戦だ!!





(皆! オラに元気を分けてくれ!!!)


 叫んでみた。


 ……いや声が出てるわけじゃないんだ。

 気分だ。

 気分的に叫んでみた!


 そして手(枝)を伸ばす。やがて世界を駆け巡る気を感じる。


【30分後】

 やめろ……。

 なんとなく周りの植物からの視線を感じる。

 待ってくれ、誤解だ。


 異世界に来て。

 植物になって。

 色々状況が変わっているのに。


 痛い子を見る目で俺を見るな!!!


(……血液理論でやり直そう……)

 俺は目を閉じる(イメージです)。

 そして体を意識する。

 次に力の脈動を感じ。

 感じたそれを動かすように意識する。

 そう……昔中二の時にやったイメージだ!

 地球じゃ妄想のお楽しみタイムだったが!

 異世界なら違うはず!!

 ……きっと。


【1週間後】

(……お。おお。おおおお!)

 変なものを知覚した。


 感じるというか、感覚が鋭くなったような気がする。

 鋭くなった感覚を頼りに『光を感じて色が見たい!』と懸命に考える。

 人間の目に映る色素を考え、波長を考え、そして体全体で感じる様に意識する。


【凡そ1年後】

(異世界ヒャッハー!)

 言ってみた。

 毎日毎日努力した甲斐あってか、俺の体の謎器官が光を受信し、視覚情報に変換し、俺に景色を知覚することができるようになった。


 想像した通り、俺は木だった。

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