第2話 【恵美須町駅】
恵美須町は浪速区になる。「商売繁盛で笹もってこい」で知られる今宮戎神社が近くにあり、毎年1月9日から11日にかけての十日戎の賑わいは商都大阪を反映して、その賑わいは半端ではない。健吾も父に連れられて欠かさず来たものである。
「うちの娘が福娘に選ばれた」と、隣のおばさんが喧しかったのを健吾は覚えている。十日戎で奉仕をする満18歳~23歳の女性を福娘といい、競争倍がすごく、選ばれたら縁談にも箔がつくらしいと父、義一が教えてくれた。
隣のお姉さんは、顔は綺麗だが性格が良くなく、健吾はあまり好きでなかった。
「あんなのを貰ったら大変、何が福娘か」と思ったものである。恵美須町の駅名はこの神社名から来ている。
恵美須町駅からは住吉大社を通って堺の浜寺駅に行く阪堺線と、平野に行く平野線が出ている。浜寺には海水浴場があり、夏休みになると浮き輪を持った親子連れがよく見られた。
恵美須町の次は西成区の南霞町停留場で、今池までは25‰*(パーミル)の勾配を登る。運転手の腕の見せ所である。次の今池停留場で二つの線は別れる。真っすぐ坂を下って行くのが阪堺線で、平野線は左に曲がる。そして飛田停留場である。
*‰:パーミルあるいはプロミルとは、1000分の1を1とする単位。日本語では千分率、電車の勾配などはこれで表す。
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