修学旅行先は異世界。
修学旅行先は異世界らしい。
いつのころからか別の世界と現実世界を繋ぐゲートが見つかり、行き来が可能になる。そして異世界旅行は国内旅行と同じように普通になった。
これから二泊三日の旅行が始まる。自分たちは時間内にどれだけ満喫ができるだろうか。
バスは動く。
様々な場所を巡った。
その度に色々なものが映る。
青々と茂った森だったり、清らかな泉だったり、切り立った崖や、豪快な滝。
そして暖かな村。寂れた荒野。
その全てはかつて勇者が通った場所だった。
「勇者になって世界を救ったという伝説が残っていてね」
先生はゆっくりと語り始めた。
「皆にはそれを学んでほしかったんだよ。そして私はその先祖でもある」
空を見上げる。
なにかを思い出すように寂しげに。
「英雄には再会を約束していた人がいた。だが世界を救った後だから、すぐに帰らなければならなかった。そのタイミングに間に合わなかったんだよ。感謝の気持ちを伝える暇もなくね」
先生は穏やかに会話をする。
「でも、今は伝えられるじゃん」
子どもは言った。
一度、先生は目を見開いた。
だけどすぐに納得した様子で微笑んだ。
バスが停まる。
先生は降りた、生徒たちも後に続く。
皆は黙って様子を伺う。
先生は静かに霊園へと足を運んだ。
そこには異世界人が何名かいた。
彼らは勇者の関係者の末裔。
勇者と共に戦った者たちを先祖に持つ者。
勇者が会わねばならない者たちだった。
それから皆は少し話をした。
たわいもない話から。
異世界での出来事。
現実世界でのこと。
色々と。
ふと気を抜けば一瞬で消えてなくなってしまうようなとりとめのないことばかりを。
だけどそれはきっちりと脳に、思い出に刻まれた。
ほどなくして先生は戻ってきた。
学生たちは全員集合。
帰りの時が訪れる。
手を振る影。
それは明確にかつての勇者の形をしていた。
それを見届けてから、彼らもまた前を向く。
バスに乗り込む。
発車。
皆は現実世界へと帰っていった。
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