宝探し


 高校の放課後、二人の男子が通学路を歩いていた。

「なあ、家でこんなもの見つけたんだけど」

 暁斗がカバンからゴソゴソと取り出したものを見せつける。それは古びた紙だった。なにやら大きめに模様が書かれ、その中にばつ印がついている。

「宝の地図じゃん!」

「そうなんだよ」

 奏也は歓喜の声を上げる。

 だが少し引っかかることがあった。

 少し悩んでかれ、奏也は口を開く。

「そこって無人島だよな」

「ああ昔は人が住んでたって聞くけど」

「何年前の話だよ」

 下手すれば十年くらい前の話だろう。

「ま、そろそろ夏休みだよな?」

 話を切り替える。

「ああ、行こうぜ」

 二つ返事でオーケー。


 それから時は流れて、夏休みに突入。

 二人はカヌーに乗って島へ上陸する。


 そこから険しい道を歩いたり、急流を渡ったり、アドベンチャー気分で探索をする。

 うっかりはぐれたり、危なそうな獣を見かけて逃げたり。

 ちょっとした危険を乗り越えて、二人はついに印のついた場所にたどり着く。


 そこにはなにもなかった。

 ただ本当になにもないわけではないだろう。

 持参したスコップで掘り進める。

 土をかいて、外に出す。

 するとゴツンと硬いものに当たった感触。

 それを頼りにさらに掘る。

 空いた空間。そこには宝箱が埋まっていた。

 表に出して、土を払う。

 ドキドキとしながら箱を上げる。


「なんだこれ」

 それはカプセルだった。

 開いて見ると紙が入っている。

 古びていて読めない上に汚い字。だが、それは確かに見覚えがあった。

「もしかして」

 口に出した瞬間、二人の脳内にセピア色の記憶が流れ込む。


「俺たちはここを離れる。だけどいつか戻ってこよう」

「ああ、約束だ。まぎれもなくこの島に向かって、俺たちと」

 二人で紙を書いて宝箱に押し込めて、地中に埋めた。

 そしてそれが今、手元にある。


「そうか、そういうことか」

 からからと笑う。

 天を仰ぐ。

 図らずも約束は果たされ、二人はきちんと故郷に戻ってきた。

 溢れ出るのは希望か喜びか。

 とにかく暖かな感情が胸いっぱいに広がった。

 それから二人の笑い声は島中に響いた。

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