冬の庭にて

 きっと、神社でも作ろうとしたのだと思う。


 私の地域は豪雪地帯に片足を突っ込んでいる。なんて、本物の豪雪地帯に比べるとぬるいほうだけど、冬になると山程雪が降る。具体的にいうと、庭の上に丘ができるレベルだろうか。

 最近は嵩も低いけれど、一昔前はクライミングができるレベルで積もっていた。

 それで、子どものころの話なのだけど。

 スキー用のグローブとウェアを着て、庭に出た。なにやら道を作り、祭壇を作成。なにやら神秘的な雰囲気がしなくもない空間に、丸く丸めた雪を設置。その近辺には泉を模した穴を空けてみた。

 私はそこでお参りをして、神との交信を試みる。もっとも、ここは神社でもないし、ましてや神なんていないのだから、祈りを捧げたところで意味はない。もちろん、それを承知でごっこ遊びをしていたのだと思う。

 問題はこのあたりで同級生が通りがかったこと。ちょうど目が合い、びゅーと風が吹く。なんともいえぬ気まずさが漂ったことを覚えている。

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