写真には写らない思い出

 六月、広島に修学旅行にやってきた。

 自由行動の時、何名かの友達と写真を撮ることになった。

 海をバッグに、カメラを構える。

 さすがに撮る役がいないと、皆を写せない。


 そんな時、他校の生徒がやってきた。


「私たちが撮りましょうか」


 セーラー服を着た生徒。

 それから私たちは全員で並び、撮ってもらうことになった。

 全員分のカメラに、その写真は収まった。


 それが終わると彼女たちはまたどこかへ去っていく。


 一瞬の邂逅。

 だけど私たちは確かに交わった。


 あの人たちのことはよく知らない。名前も、出身校の名前も。

 今では顔すら忘れている。


 だけど、時々思い出してしまう。

 彼らは今、どこで、なにをしているのか。

 今も健やかに暮らしているのかと。


 友達が全員映った写真は、部屋の見える位置に飾っている。

 写真には写っていないけれど、それは私にとっての大切な思い出。その証だった。

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