第79話 第4章 絶体絶命(7)「悪魔の証明」

 明山は、慶次郎を蛇のような目で睨んだだけで何も言わなかった。

「では、私から種明かしをいたしましょう。ご覧ください、光を当てると、私が手元に持っている指輪は、本当に劇的に色が変わります。特に赤の方が鮮やかな透明感のある濃い赤紫に変わります。しかし、『本物』は、緑も赤もそれほど鮮やかで深い透明感は持っていないのです。特に、『本物』の赤は、少し茶色がかっています。劇的な変色効果を持ち、鮮やかな透明感を持つ『偽物』は、人造アレキサンドライトです。そして、明山さんは『本物』、つまり天然物のアレキサンドライトの色の淡さを知っていて、判断していたわけです」

明山は笑い出した。

「そうだよ、その通りだよ。お前が今持ってる指輪は人造アレキサンドライトだよ」

全てを認めたかのように見えた明山は、しかし、諦めてはいなかった。

「だがなあ、その舞妓がすり替えたんじゃないってことは、どうやって証明するんだよ。条件が違えば、緑の深みも赤の色味も変わる。カメラが変われば、全く違って見える。傷だって分かったもんじゃねえ。本物の爪にだって傷がついているかも知れないだろ?奈理子から受け取ったものが本物で、その舞妓がすり替えていないという証拠でもあんのかよ?」

「そんなん、こじつけやわ!いちゃもんばっかり」

豆初乃は腹が立って立ち上がろうとした。

「やれやれ、一種の悪魔の証明ですね」

慶次郎は、豆初乃を手で制した。

「いいですよ。証明しましょう。単純なことです。『本物』はここにあるからですよ」

慶次郎が指を鳴らした。

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