第64話 (第2章)「事件」(六月三十日・夜)

(六月三十日・夜)


 その晩、紅乃は雪駒家に泊まった。今後の対応について、照子お母さんや勝文お父さんと相談するためである。

 豆初乃はいろいろと混乱し過ぎて、六月尽の夜は黙って寝かせてもらった。誰もが、豆初乃の家庭の事情については突っ込んだ話をしなかった。

 豆初乃は自分の部屋で布団の上にひっくり返りながら、紅乃から返された指輪を蛍光灯に透かしながら眺めた。大きな宝石は、キラキラと輝いていた。

蛍光灯に透けるときは緑色、豆電球にすると赤色の宝石、のまがい物。

豆初乃は、奈理子が非常に胡散臭い人物だということは分かっていた。それでも、いまだに、信じたい気持ちもあった。本当に困っていたのではないか、と思ってしまう。

 豆初乃は右手の薬指にはめてみた。ぶかぶかだけど、なんとか抜けないでとどまってい

(なんだったんだろう……この指輪。あの人……)

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