Kiss

部屋で二人きり。

あなたと手をつないだまま、赤くなっている。

これからなにをするかは、私にでもわかっていたから。

声をかけられた。

反射で振り向くと、あなたが唇を奪った。

あまりに突然のことで、なにをしていいのかわからない。

それでも、これを理解したあとは、ゆっくりと目を閉じて、二回、三回と口付けを交わす。

私を抱きしめている手は、とても温かくて、なんどもその先にある唇を求めてしまう。

そのごも、独特な感触と、豊かな音があなたに捧げられていた。

そして、二人で最初から決めていたかのように、ある口付けを終えると、自然と唇が離れていった。

私の体はすっかり熱くなっていて、目はちょっと潤んでいる。

あなたがまっすぐ、私を見つめる。

私の潤んだ目は、あなたをはっきり捉えることはできない。

けれどあなたの微笑みが、私の目を乾かしていった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る