入浴

少し暖かくなった風呂場というのは、服を脱ぐのも億劫にはならない。

髪を束ねる。

布を纏ってかがんだまま手を湯につけた。

そして小さくうなずいて立ち上がり、足全体を濡らしていく。

肌から伝わる熱さが、胸元まで迫ってきた。

大きく息を吐く。

やがて身を預けるように湯の中へ入っていった。

少し行ったところで腰を下ろし、誰もいない風呂場の湯気を見渡す。

その湯気はまるで綿あめのように触れては消えていった。

十数分経っただろうか。

おもむろに湯から上がり、髪を下ろす

慣れた手つきで髪を洗い始めた。

雫がぽたぽたと垂れては、足に絡まって流れていく。

歌を口ずさむ。

失恋の歌だ。

肩から腰にかけて、水が何本も伝っていた。

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