(編集済み)二度目の話し合い『巴さんをからかった結果』
「じゃあ、早速だけど……、両校の体育祭合同開催の成功に向けて、第二回目の話し合いを始めようか。」
「「「「「「「はい。よろしくお願いします」」」」」」」
ここは今回で第二回目の話し合いが行われる『第1女学院』生徒会室の隣にある会議室。
そこには俺を含め『第1高校』からの話し合いの参加者が三名。そしてそれに対面する形で席に着く相手校の四名が会議室にはいた。
そして、早速相手校の生徒会長である猫井 会長の一声からその話し合いの開始が告げられ、実際に体育祭に向けての話し合いが始まるーーそのように思われたのだが……。
「あっ、そうそう。始まる前に……、相太くんに三葉さん。君達二人の今朝からのアレ、ウチの子達からもすごい好評だったよ。それにさっき校門前でのアレも『まるで漫画の中のワンシーンみたい!』って、巴ちゃんもかなり喜んでたし……、みんなに好評だったのは何よりだよね?ねっ?」
「ぶふっ!い、いきなり何を言っているんですか!今から真面目に話し合いを始めるんじゃないんですか……?」
話し合い始めると言っておきながら、早速話を脱線させた猫井会長はいきなり俺達二人の事を弄ってきて、さっき巴さん本人にも言われた事を改めて俺達に伝えてくる。
まるで少女漫画のワンシーンみたいだったとか、何とか……。
巴さんは見た目の通りの品行方正な大和撫子といった様子なので、その彼女から『まるで少女漫画みたい』と言われた事には驚いたが……、まさかそれを早速、猫井会長にもそのまま伝えていたとは……。
よりにもよって、猫井会長に格好のからかい材料を与えた巴さんの事を、俺は少しだけ恨めしい気持ちでジトッとした目で見つめていた所……。
「うっ……。な、なんですか?ホントにそう私が思ったのですから……、べ、別にいいではありませんか?
それに……、猫井さんが仰った通り、我が校の女子生徒からはかなりの好感触だったのですから、別にちょっとくらい色を付けてお伝えしてもよいではありませんか!」
「いえ……、別に俺は何も言ってはいませんよ?それとも何です?そんな風に過剰に反応をするというのは、何かやましい気持ちでも巴さんにはあるんですか?」
「そ、それは……。ない…とは、その…言い切れませんけど……。その…うぅぅ……。」
「何て……、すいません。ちょっとした冗談でーー『だって!私だって羨ましかったんです!』ーーす。……って、えっ?」
俺はちょっとした悪戯心で、巴さんの事をあえて問い詰めるような形で軽くからかって、その反応をみたいと思ったのだが……、まさかの反応が巴さんから帰って来た。
それはもう……、聞いてるこちら側が逆に恥ずかしくなる程の、言わなくてもいい事まで沢山言ってしまうという……、そんなコチラもびっくりなオマケ付きで。
そして、俺の『冗談』発言も耳に入っていないのか、巴さんは顔をボッと赤くしながら、早口で『俺達の関係』が羨ましかった事について赤裸々に話し始める。
「そうです!私が相川くん達の関係が羨ましかったから……、ちょっと、相川くんたちの事を誇張してみんなに伝えて、少しでも困らせたいって思っちゃったんです!
そんな風に通じ合ってるって特別な関係がとても羨ましかったから!だからーー」
「と、巴さん!?じょ、冗談ですよ?別に俺も……、たぶん三葉先輩もあんまり気にしてませんから!あのそこまででーー」
「分かってます!こんなの私の自己満足でしかないって……、そんなの分かってます。分かってるんですよ。、あなた達の事を勝手に僻んで、勝手に迷惑をかけるなんて……、私って嫌な女ですよね……。こんなの、絶対。」
と、今度は逆に突然のマイナス思考の状態に巴さんは陥ってしまい、俺の話も相変わらず聞いてくれないので、色々と巴さんを落ち着けるにはどうしたものか……。
そして俺は、自分でこの何とも言えない状況を作っておきながら、本格的に頭を悩ませそうになってーーそうだ!
俺はこんな事で何かをお願いするのはどうかとも思ったが、巴さんの意識を逸らして一旦落ち着ける為だと考えて、一つだけ巴さんにあるお願いをする事にした。
「そうですね……。別に俺は巴さんの事を嫌な女だとは全然思いませんけど、どうしても巴さんの気が済まないのであれば……、一つだけお願いを聞いてもらえますか?」
「……ホント?私、嫌な女じゃない?今、一つだけお願いって言ってたけど……。そのお願いをちゃんと聞いて、それを実際に叶える事が出来たらーー私の事も許してくれる?」
「うっ……。は、はい……。勿論、俺達は巴さんの事をちゃんと許しますよ。
で、ですよね!先輩?ーーお願いします。今は話を合わせてください……。色々とこっちの罪悪感が凄いです……。」
「えっ?あ、ああ……、そうですね?私も巴ちゃんを許します…よ?ほ、本当に……。
ーーそ、相太くん!ホントに気を付けて下さいね!ああ見えて、巴ちゃんは結構繊細な子なんですから!普段はしっかりしてて、そんな風には見えないですけど、見ての通り巴ちゃんは正義感が強く優しい子なので、色々とナイーブになりやすいんです。
だからあんまりイタズラでも、巴ちゃんの事をからかい過ぎないで下さいね?……何と言っても、からかった後の罪悪感が凄い事になっちゃうんですから……。」
そして、俺と先輩は2人で口裏を合わせ、何とか巴さんの事を説得して、一つ願い事を聞いて貰う事で納得したのだが……、先輩の言った通り、今後は巴さんを不必要にからかうのは辞めようと、本気で俺はそう思った。
しかし、上目遣いで「許してくれる?」と言い、こちらを見上げてきた巴さんが、とても可愛いと思ってしまった事は……、俺の心の中だけに秘めておく事にしよう。
すると、俺と先輩がこそこそと話をしているのを見ていた、そこまでこちらを静観していた猫井会長がふと俺の方に目線を送り、笑みを浮かべつつ声を掛けてきた。
「ーーっで?相太くん?一体どんなお願いを巴ちゃんにするのかな?かな?
あっ!勿論分かってるとは思うけど……、そっち方面のエッチなお願いなんかはダメだよ?それ以外で……、相太くんは何を巴ちゃんにお願いするつもりなのかな?どうするつもりなのかな?……ふふふ。」
「いや!ちゃんと普通のお願いをするだけですから!そんな……、え、エッチなお願いなんてしませんよ!……と言うか、お願いとも言えないくらいのお願いですよ!俺が今から巴さんに頼もうとしている事は!」
やはり、相変わらずこの人はどこか掴み所のないような態度で俺の事をからかい、その慌てる様子を見て楽しそうにしている事からもわかる通り、脱線した話し合いを、元に軌道修正するつもりなどは更々ないようだ。
すると、俺が言った『お願いとも言えないお願い』の言葉に、猫井会長は勿論、三葉先輩や高木委員長も含めその言葉に興味を持ったのか、皆「何々?」と、こちらを興味津々と言った様子で見つめてくる。
しかし、別にそのお願いの内容自体、何の面白みもない物なので……、そんな風に変に期待した顔をされても困る。
そして、なぜかお願いされる側の巴さんも少しだけ期待をしたような、何をお願いされるのか?と、ワクワクした顔でこちらの方を見ていて、俺の言葉の続きを待っている。
ーーと言うか、ホントに何でワクワクした顔をしているんだ……、この人……。
「ま、まあ……。そんな期待されても困りますけど、別にそんな驚く内容でもないと思いますよ?ただ、この体育祭で今後起こるであろう何か問題などがあれば、その時はフォローというか……、巴さんの助力を頂けるとありがたいなってそういうお願いです。
今回の合同体育祭とか今の状況だとか、俺の立場も含めて、色々とイレギュラーな事が多いですしね……。」
「なるほど……。それならお安い御用です。というよりも……、そんな事でよろしかったのですか?猫井さんが言っていたような……、え、エッチなお願いはダメですけど!それ以外でなら、基本的には何でもそのお願いをお聞きしようと思っていたのですけど……。」
そして、俺が巴さんにある意味定番のそんなありふれたお願いをしてみたのだが……。
しかし、まさかの巴さんから返されたそれに対する返答は『何でも言う事を聞くつもりだった(エッチな事以外で)』というものであり、な、何か……、とてつもなく損した気分になってしまうのは一体なぜだろうか?
しかしながら、それを聞いてから「では、やっぱり違うお願いで!」などと、そんな風には言えない訳で……。
「そ、そうですか?で、でも!俺はいざという時に巴さんが助けてくれる事の方が……、う、嬉しいですよ?ホントダヨ?
ですから、その申し出は大変嬉しいんですが、今後のフォローなどをよろしくお願いします!巴さん!」
と、少しだけぎこちなく、それでもそれまでと変わらぬお願いを巴さんに伝えたけれど、最後には本心から、そしてきっとこの体育祭を成功させると心の底から、俺は巴さんに『もしも』の助力を頂きたいとお願いした。
すると、俺のそんな気持ちが伝わったのかどうかは分からないが、巴さんは笑顔で力強く「はい、任せてください!」と、そう俺に伝えてくれたのだった。
そして、始まりから脱線し続けていた話し合いは、その後ようやく元の体育祭についての話し合いに戻り、両校の生徒達のそれぞれの反応について、その後の話し合いに続いて行くのであった……。
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