見えないバトン
「部長」
「なんだい、副部長」
「これは、なんですか」
副部長は、頭よりも少し高い位置にあるものを指差した。
「暦だよ」
「こよみ」
「カレンダー」
「かれんだー」
違う、そういうことを言いたいわけではない。そもそもこれは、副部長が家から持参したものだ。
ふたつき毎にめくっていくタイプのカレンダー。今は一月の末近く――来週の火曜から試験が始まる――、その「睦月」の文字付近には、でかでかと「部長の時代」、その隣の「如月」付近には「ほてびの時代」と銘打たれていた。ほてびとは、副部長の筆名である。
「一月で引退して、二月からは副部長に部長を任せようと思って」
三年ぶりの部長職。副部長につとまるだろうか。いや、できる。というより、副部長以外に適任が居ない。
読者の皆様は、どこからその自信が来るのか不思議であろう。しかし、それが事実なのである。性格はともかく、文芸部の活動に二年勢で一番精力的に取り組んできたのは、副部長なのだから。
「というわけで、後は頼んだよ」
部長から、見えないバトンが渡された気がした。
~おわり~
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます