第222話 勇者達のスキルは?
さてさて……両者共、どんな戦いを見せてくれるのやら。
どちらかが勝利するにしても、彼らの能力は把握しておきたい。
問題はちゃんとスキルを使ってくれるかどうかだ。
ともかく観戦を続けよう。
「いいだろう。相手をしてやる」
「それはどうも」
モルガスが余裕の態度で巨大な戦斧を構えると、ユウキもまた同じような態度で返した。
「但し、我に挑んだからには五体満足で帰れぬと思え」
「忠告ですか、ご丁寧にありがとうございます」
「……」
これにモルガスは答えることはなかった。
ただ、戦斧を構えたまま立っているだけだ。
「これは『いつでもどうぞ』という意味と捉えていいですか? なら、私から先に仕掛けさせてもらいます」
ユウキは腰にある日本刀に似た剣を抜くと、真っ直ぐに構え、モルガスに向かって踏み込んだ。
極普通の斬撃だ。
だが、速い。
刃がモルガスの首を狙う。
しかし――、
ガキンッ
直前で戦斧を盾代わりにし、これを弾き返した。
円形に広がる
――あの大きさは結構厄介だな……。
しかも、重量がありそうなのにかなり素早かったぞ。
モニターを見ながら俺は思った。
「ほほう、思ったより俊敏なようですね」
一旦退いたユウキは、体勢を立て直す。
どうやら先ほどの一撃は、相手の様子をちょっと探ってみた――っていう感じらしい。
「なら、これならどうですかね?」
彼は一度、剣を鞘に収めると、やや腰を落とし、体勢を低く構えた。
――あっ……これって、あれじゃないか?
居合い斬り。
日本人の俺だから、なんとなく構えでそう感じた。
もしかして、これがユウキの勇者としてのスキルなのだろうか?
何が起こるのか緊張して見守っていると――、
刹那、剣に添えていた彼の手元が光った。
次の瞬間、一筋の閃光がモルガスの胴体を駆け抜けていた。
――速い! 仕留めた!?
俺がそう感じるや否や、おかしなことが起こった。
「……っあ!?」
居合い斬りを決めたはずのユウキの体が、一瞬にして明後日の方向に吹っ飛ばされていたのだ。
彼は宙を舞いながら回転し、なんとか両足で着地する。
しかし、その顔には動揺が現れていた。
「何が起こった……??」
彼が困惑するのも分かる。
確実に仕留めたと思った次の瞬間には、自分の体があらぬ方向へ吹っ飛ばされていたのだから。
「くくく……それがお前のスキルか?」
モルガスは嘲笑を浮かべていた。
「弱い、弱すぎる。その程度で我を倒そうとしていたのだと思うと、笑いが込み上げてきて止まらないぞ」
「な……」
ユウキの動揺っぷりからすると、モルガスの言う通り、それが彼のスキルで間違い無かったっぽい。
「底が浅いお前が冥土に向かう前に、我の力を教えておいてやろう」
「……」
手の内を明かす。
それは、内容を知っても尚、自分が負けることはないという余裕の現れだ。
「我のスキルは
「……なんだって」
驚くユウキをモニターで見ながら俺は思う。
――なるほど、それが奴のスキル。
とんでもない方向へ飛ばされたのはそのせいか。
でも、かなり重量がありそうな戦斧で、よくあの居合い斬りを弾くことが出来たな……。
どんなに動体視力が良くても体が追いつかないだろうに。
そんな事を思っていると、モルガスは俺の疑問を払拭するように答える。
「それだけじゃない。我には、どんな素早い攻撃にも筋力の限界を超えて反応することが出来るもう一つのスキル――
「……!」
ユウキが瞠目する中、俺は思わず呟いていた。
「こいつ、Wスキル持ちか」
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