第214話 来訪


 ラウラを城に招くことになってしまった。



 なんとなく一波乱ありそうな予感がするが、一応みんなにも顔合わせしておいた方がいいと思い、玉座の間に配下の主要メンバーを呼び寄せていた。



 とはいっても、実際に生で顔を合わせていないだけで、みんなモニタリングしていたからラウラのことは一方的に知ってるんだけどね。



 そんな訳で俺は魔法の扉Ⅱにラウラを登録し、この玉座の間に迎え入れた。



 配下の者達が見守る中、扉をくぐり抜けて大鎌を持った小柄な少女が現れる。



「おおぉ……ここが魔王城であるか……」



 彼女は物珍しそうに周囲を見回す。



「それにして、もなんだか薄暗いのお」

「それはここが魔王城下のダンジョンだからさ」



 玉座の上で俺がそう答えると、ラウラの動きが止まった。



「……」



 俺のことを無表情でジッと見つめている。



 なんだ? なんか変なことを言ってしまったか?



 まるで呆然自失といった感じだ。



 もしかして……思ってた見た目と違ってショックを受けた!?

 ごめんよ、理想を壊してしまって……。



 そうしている間にラウラは今にも泣き出しそうな顔に変化して行く。



 泣くほど酷かった!?

 そこまでとは……。

 ってか、さすがに俺もそれはちょっとショックかな……。



 なんて思っていたら、



「魔王様、会いたかったのじゃー!」

「うぇっ!?」



 ラウラは急に走り出して、俺に飛びついてきたのだ。

 思わず彼女の体を抱き止める。



「ううん魔王様! 魔王様! 魔王様なのじゃ! 本物なのじゃ!」

「お、おい……」



 まるで飼い主に戯れる犬みたいに頭や体を押しつけてくる。

 その内にペロペロ舐め始めるんじゃないかと思うくらいの勢いだ。



 もう、そのくらいにして……。



 と言おうとした時だ。

 なんだか寒気がして周囲を見回した。



 するとアイル達女性陣が、じゃれ合う俺達のことを冷めた視線で窺っているのが分かった。



「ええっと……これは、その……」



 俺は、なんで言い訳しようとしてんだ……?



 散々戯れ付いていたラウラも、周りの視線に気がついたようで、彼女達の方へ目を向けた。



「ほほう、これが配下の者達か」



 姫様の習慣か、物言いがやや上から目線な所がある。

 そんな彼女はアイル達に向かってこう言い放った。



「妾はこの度、魔王様の妃になるラウラじゃ。よろしく頼むぞ」

「ちょっ……」



 これに対し、アイルはこめかみの辺りをピクピクとさせていた。

 シャルとリリアはムッとした表情で、イリスは無表情ながらも拳を握っていた。



 そしてプゥルゥは――、



「あ、それボクとパールゥもそうだよ! マオウさまとソクシツのやくそくをしたもんね」



 なんて気楽に言いながらスライムの体で飛び跳ねていた。

 それに対してラウラは、



「なんと、そうであったか。仲間じゃのお」

「わあ、ナカマ、ナカマ!」



 なんだか通じ合っていた!



「して、お主は何番目の側室じゃ?」

「バンゴウ? うーん、ちょっと、わかんない」



 そんな会話を交わす彼女達の近くで、アイル達はぷるぷると体を震わせるのだった。



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