第211話 将来の展望


 帝政ゼンロウからやってきた勇者達が、



「勇者はいらない!」



 とか言い出したので、何事かと思ってしまった。



 思い切り自分の存在否定なんですけど、大丈夫なんすかね?



「しかし、その話だと疑問が多く残るのだが?」

「はあ、どのような事でしょう?」



 ユウキが興味深いと言わんばかりに身を乗り出す。



「お前が言うように魔王様が対話に応じる御方だとしよう。共に勇者が生まれてこない世を築いたとして、その後の世界をどう考えているのだ?」

「と言いますと?」



「次の世代の魔王様が好戦的であった場合、対抗手段を失った人類は目も当てられぬ状況になるのでは? と言いたいのだ。それに現魔王様も時を見計らっておられるだけで、いずれは人類を攻め滅ぼそうとしている可能性は否定出来ないと思うが?」



 するとユウキは首を横に振った。



「現在の魔王に限っては、それは無いですね」

「何故だ?」



「ラウラ姫が良い例ではないですか」



 ユウキはクスリと笑う。



「もし、彼女が魔族側に完全に寝返っている。若しくは洗脳されている。だとしても、ラデスの滅び方が不可解ですよ。密かに人間の世界に支配の領域を広げるにしても、城が消し飛ぶほどの力があるんですから、わざわざそんな面倒な真似をしなくても、本気で攻め滅ぼす気があるならすぐに出来るはずですよ。それをやってないということは、対話の余地があるという証明にもなります」



 む……なかなか痛い所を突いてきたな……。



「では、次世代についてはどう考えているのだ?」

「それは簡単ですよ」

「?」



「今の魔王に長生きしてもらえばいいのです」

「……」



 えっ、長生き……?



 思わぬ答えが返ってきて俺は目が点になった。



 それは、楽しい仲間がいて悠々自適な生活があれば長生きするのもいいかもしれないけど、長生きしたくて出来るもんでもないだろうし……。



 ってか、魔王の寿命ってどれくらいなんだ?



「長生きと言っても無限ではあるまい。いずれは世代交代の時が来る」

「ですね。ですから、現魔王には不老不死になって頂きたい」



 不老不死!?

 そんな事が可能なのか? この世界は……。



 しかし、死ねない辛さってのもあるんじゃないか?

 安易に不老不死なんか手を出したくないぞ……。



「待て、それは互いに信用があって初めて可能になる話ではないのか?」

「そうですね。現魔王が私の想像している通りの御方で、尚且つ、私達のことを現魔王に信用して頂かないといけない。その為にも……」

「その為にも?」



「現魔王にお目通りの許可を頂きたい」

「……」



 そう来たか……。

 だが、まだ素性がハッキリとしない者を簡単に魔王城へ入れることは出来ない。

 となると……。



「ならば、信用に足る存在だと証明して見せよ」

「当然、そうなりますよね……」



 そこで彼は、その事を予期していたかのように微笑んだ。



「ならば、こんなのはいかがでしょう?」

「何だ?」



「私達の調べでは、神聖レジニア皇国から再び魔王城へ向け、勇者が送られたそうです。その勇者達を私達が撃退してみせましょう」



 ユウキとカルラは自信に満ちた表情を俺達に向けてきていた。


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