第148話 味付け問題
配下の食事環境を改善する為、食堂の新メニューを開発することになった。
毎日カレーばっかりじゃ、さすがにどうかな? と思うしね。
そんなわけで料理に使う食材を探しに行くことに。
皆は「そういう事は私達がやりますので、魔王様は休んでいて下さい」と言ってくれたが、こういう素材探しは
そう伝えると、ならばせめてお手伝いを――と、いうことになって……。
それに名乗りを上げたのは、今側にいるイリスだった。
彼女はいつもの淡い表情でぼんやりと立っている。
でも、その瞳の奥が輝いているのは見逃さない。
食に対するワクワクが止まらないといった感じだ。
ここは魔王城、正門前。
これから死霊の森に食材を探しに行くわけだが……。
以前、シャルと一緒に同様のことをやった記憶がある。
同じ場所を探索するよりは、違う所の方が目新しい食材が見つかったりするもんだが……。
「ねえイリス、俺がここに来る前は皆、何を食べていたの?」
「
「やっぱり、シャルが言ってた通り、素材そのものを食べてた感じか。じゃあ大体、どの辺りでどんな食材が取れるかは把握してるってこと?」
「うん……全部把握してる」
さすが食いしん坊、頼もしい。
闇雲に探さなくても大丈夫そうだ。
「それなら、食材から料理を考えるより、作りたい料理から食材を探した方が美味しいものが作れそうだ」
「魔王様……レシピが無くても美味しい料理がつくれるの?」
「まあ、そこそこね」
「わあ……」
イリスが尊敬の眼差しで見つめてくる。
まるで神様でも拝むかのようだ。
とは言っても一人暮らしの学生だった頃に作ってた程度の料理だけど。
「それはいいとして、いざ作るとなると何がいいかな?」
カレーは皆に大好評だった。
子供受けする定番メニューだし。
プゥルゥ、シャル、イリス、リリア、パールゥ……と配下のほとんどが子供っぽい感じだもんな。
ってことは、その辺から攻めてみるのもいいかもしれない。
小学生の大好きな料理、上位四天王!
カレー、ハンバーグ、寿司、ラーメン。
この辺りがいいんじゃないだろうか?
カレーが受けたのなら、他の料理も受け入れられそうだし。
じゃあそれで行くとして、何から作ってみようか。
ハンバーグはすぐに行けそうだな。
卵とかパン粉とか最悪繋ぎは無くても、それはそれで肉感を楽しめて美味しいだろうし問題無い。
問題は塩コショウなどのスパイスだな。ナツメグとかあったら最高なのに。
あ、コショウはカレーに使ってたイエモンペッパーが代用出来そう。
あとハンバーグソースになりそうな食材で似たようなものが見つかれば嬉しい。
ハンバーグはそれでいいとして寿司はどうだろう?
まずは魚が問題だ。
海が無いし。
森の西側に川が流れているけど、川魚の寿司っていったら鱒寿司とか鮒寿司くらいしか知らないなあ。
そもそも異世界の魚を生で行って大丈夫なのか不安だ。寄生虫とか怖いし。
酢も必要だし、捌くにも手間が掛かる。
あと米の調達も難しそう。
バットカレーを作った時は、使った素材の中に米は無かったのに何故かライスまで合成されていた。
恐らく合成の場合は、素材が微妙に足りなくてもレシピの必要条件を満たしていれば、ある程度補填してくれる仕様なんじゃないかと。
そう考えると合成レシピ超優秀。
だから俺の合成能力無しで一から寿司を作るとなると、やっぱり米が必要だ。
一旦、カレーを作って、そこからライスだけ取り除くって手もあるけど、なんかカレーがくっついてそうだし、寿司作る度にカレーだけ余るのもどうかと。
とはいえ、この世界に米に似た植物があるかどうか……。
それに、ご飯として食べるにはまとまった量が必要だから栽培しないと無理だろうなあ。
あーそんな事を考えていたら思い出しちゃった。
久しぶりに寿司食いてえ!
いつかなんとかしたい……。
ってことで、寿司は今すぐには無理そうだ。
次はラーメン。
麺に使う小麦はやっぱり
木灰を水に入れて上澄みを取れば、かん水が作れそうだけど、そこまでしなくてもいいだろう。
卵があれば卵麺に出来るけど、取り敢えずは小麦麺で。
ラーメンスープの方はハンバーグ用に使った
あ、肉の方でチャーシューも作れそう。
またまた
牛骨スープっぽくなっちゃうけど仕方が無い。
あとは葱とか生姜とかスープと一緒に煮込んで風味を加えるような野菜が欲しい所。
味付けは醤油や味噌は無理そうだから、やっぱり塩か……。
料理は味が無いとどうにも美味しくないし。
合成レシピに頼らないで料理をするとなると、最大のネックは塩かあ……。
どうにか塩を手に入れる方法は無いもんかなあ。
そんなふうに悩んでいると、側にいたイリスが、か細い声で訴えてくる。
「魔王様……」
「ん?」
見れば彼女は瞳をウルウルさせて、とても悲しそうな顔をしていた。
「どうした?」
「お腹……空いた……」
「……」
思案の時間が長すぎたようだ。
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