第132話 滅亡甚大被害.netに接続


 しばらくして、ラデス帝都上空からの映像が入ってきた。



 その映像を捉えているのは、城のテラスに設置しておいたメダマンからだ。

 アルティメット金ダライが地表に激突する前に空へと逃れていたのである。



 そんなわけで玉座の間に広げている大画面には、消失したラデス城の様子が克明に映し出されていた。



 帝都の街並みの中でぽっかりと空白が出来ている部分がある。

 クレーターのように窪んだ地面。

 そこがさっきまでラデス城があった場所だ。



 人も城も熱と衝撃波によって跡形も無く消え去っている。

 残されているのは茶色い土肌だけだ。



「おシロだけが、なくなっちゃったよ!」



 プゥルゥが驚嘆の声を上げた。

 すると、呆然と画面を見ていたアイルも我に返る。



「敵の中枢を一気に無力化する御業……お見事で御座います、魔王様。しかし、あれだけ大きな爆発があったのにも拘わらず、帝都に被害が全く無いというのは一体……」



「それはまあ、そういうものだからね」

「え?」



 以前見たアルティメット金ダライの詳細プロパティには、こう記載されていた。



 落下点から半径百メートル内に強力な重力場を発生させ――と。



 しっかりと範囲の記載があったのだ。



 それに、いつものように詳細プロパティに書かれていることよりも効果が大きくなるってことも考慮した。



 国民を避難させたのもその為だ。

 多分、大丈夫だろうけど一応安全策ってことで。



 実際、記載にあったよりも威力がデカかったし。



 ただ、重力場が上手いこと周囲への被害を抑えてくれていた。

 爆散した城の破片や、炎と衝撃波まで、この重力場が押さえ込んでくれたのだ。



 一応、こうなるであろうことを見越して実行に移したわけだけど、実際目の当たりにすると、ちょっとドキッとくるな。



「全て計算尽く……かっこいい……」



 イリスがボソリと呟いた。



 いやあ、照れるなあ。



「魔王様はいつだって格好いいよ」

「シビれますねぇ」



 シャルとリリアが続けて言ってくる。



 俺が内心で照れていると、キャスパーが感心した面持ちで話しかけてくる。



「このまま、あのラウラとかいう者にこの場所を統治させる……これでラデスからの刺客を気にする必要が無くなりましたな」

「まあね」



「それにしても、あのラデス城の跡地……。広さ的にもかなりあります故、何かに活用出来ないものですかね……」



「それならもう考えてあるよ」

「なんと、そうで御座いましたか」



「それで、どんなご計画を? この私めにもお聞かせ願えないでしょうか?」

「計画というほどのものじゃないけど、あそこには〝城〟を建てようと思う」



「にゃっ!?」



 キャスパーの猫耳がピンと伸びた。



 そんな反応を示すのも分かる。

 だって、城を壊して城を建てるとか、無駄に建て替えみたくなってしまっているから。



「城の跡地に、また城をお建てになるのですか?」



 まさに俺が今、心の中で言っていたようなことをアイルが目を丸くして言ってきた。



「新しい体制になったとしても、やっぱり城は必要でしょ? ラウラには政治だけでなく国の象徴のような存在になってもらうつもりだし、そんな人間が普通の民家に住んでたら象徴としての威光みたいなものが薄らいでしまうしね」



「なるほど、そういうことですか。では建設の為の労働力や資金の調達を行わなければなりませんね」

「何言ってるんだい? そんなのいらないよ」

「へ?」



 アイルはぼんやりと首を傾げる。



「アイルは俺にそういう能力があること忘れてない?」

「あ……」



 これは忘れてたな……。



「それに俺が直接、建設に向かわなくても、瞬足くんに魔法の扉Ⅱをラデスまで運んでもらって、そこから大量のゴーレムを建設要員として送れば、城ぐらいあっという間に出来上がると思うんだよね」



「「「「「「おおー……」」」」」」



 その場にいた全員が感嘆の声を漏らした。



「その城が完成すれば、魔王様の支配領域が拡大したも同然ですね」

「そうだね」



 直属の配下になったラウラが統治する城だ。

 となると、このラデスは最早、魔王の支配下に入ったも同じ。



「ある意味、魔王城ツーってとこかな?」



ツー!」



 なぜかアイルは、数字だけを復唱するのだった。



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