第131話 流れ星みーつけたっ♪


 場所は帝都郊外。

 食料配給所と化した荒野だ。



 瞬足くんの目の前では、ラウラ達が未だ配給作業を行っている。



 その中に、ピコピコハンマーで働かされている兵士とは違う人達の姿があった。



 エルフである。



 赤肩の小隊長によって連れ出され、この場所で解放された彼らは、事情を知って、配給作業を手伝ってくれていたのだ。



 そんなエルフ達の中で、スープ鍋の火の番をしていた少女が、ぼんやりと空を眺めて呟いた。



「あ、流れ星……」



 彼女の声を聞いた何人かが反応する。




「お、ほんとだ」

「これは縁起がいい。何か願い事を考えないと」

「いや、ちょっと待て、あれが流れ星なら、そんなの考えてる暇なんて無いぞ」

「そういえば……なかなか消えないな」

「でも、ずっと光ってるし、落ちてきてるよ?」



「「「「「じゃあ……あれは何だ?」」」」」




 彼らは互いに顔見合わせ、頭の上に疑問符を掲げる。



 その光景を瞬足くんを通して見ていた俺は、心の内で語る。



 言われてみれば、流れ星っぽいよな。



 でも、この明るさじゃ流れ星は見えないかな。

 早朝っていっても完全に太陽昇っちゃってるし。



 だからこそ疑問が深まるのだろう。



 そりゃあ、分からないのも当然か。

 だってアレ、金ダライだもの。



 まさか空から金ダライが燃えながら落ちて来るだなんて、そんなの誰も想像出来ないだろうからな。



 ここにいる者達以外は。



 俺は玉座の間にいる配下の者達に目を向けてみた。

 すると、アイル以下全員が、口をあんぐりと開けて画面に釘付けになっている様子が目に入ってくる。



 あれ……? みんな想像出来てなかった…………?



 あー……うん。

 まあ……それはさておき、上空の金ダライだ。



 昨夜、ラデス城内に侵入した際、俺は広場前のテラスに床スイッチを仕掛けた。

 そして、そのスイッチの上に置いたのは――、



 アルティメット金ダライ。



 そう、一番ヤバイやつだ。



 ラデス皇帝と少し話して分かったが、会話から滲み出る自尊心の高さと、長きに渡り独裁的な支配政治を行ってきたことで培われた間違った尊厳とが、この事態を引き起こしていた。



 あの性格だ。失神状態から回復次第、すぐに動き出すのは当然だが、朝の一番で何らかの動きを見せるだろうと踏んでいた。



 広場に兵士を集め、テラスに立ち――って所までは予想出来ていた。

 問題は……、



 思ってたより落ちて来るのが早すぎじゃね!?



 ウルトラ金ダライの時は落下までタイムラグがあったので、そこも考慮して仕掛けていたのだ。



 この世界の重力や生物の大きさ、空気の濃度などから、大体これくらいの惑星なんじゃないかと仮定して、金ダライが大気圏外に出た時の周回軌道を計算。

 ウルトラ金ダライの前例を考慮した上での俺の予想では、夜が明けた頃に頭上近くの上空を通過。

 多少のズレがあったとしてもスイッチを押してから一、二時間程度で落ちてくると踏んでいた。



 出兵の準備が整った頃合いかなーと考えていただけに、ちょっと驚いた。



 でも、その原因はなんとなく分かる。



 俺は皇帝の行動を監視する為、テラスにメダマンを設置していた。

 だから、彼が演説中に何をやっていたかは全部こちらに筒抜け状態。



 そのサブ画面を開いて窺っていた中に、金ダライが物凄い速さで落ちてきている原因が映っていたのだ。



 皇帝は不審に思ったスイッチを、あろうことかカチカチとしたのだ。



 これは俺の勝手な予想だけど、踏む度に引き寄せられる力が加算されて加速するんじゃね? ってこと。



 この速さは恐らく、そうだ。



 まあ、でも結果は変わらないから別にこれでもいいんだけどね。



 そんなわけで、こうしている間にもアルティメット金ダライはかなりの高度まで落ちてきていた。



 燃えさかる炎の塊がなんとなく視界に捉えられるくらいになった時、さすがにこの場にいるラデスの民もエルフ達も、そしてラウラや兵士達も、



 これは……やばい!?



 と思ったらしい。



 自己防衛反応なのか、みんな一斉に身を屈める。



 そんな中、瞬足くんだけが場に立ち尽くし空を見上げている。



 見覚えのある金ダライの形をなんとなく上空に認めた――、



 その刹那だった。



 城の真上から光の矢のような一閃が突き刺さる。



 直後、城が爆発した。



 まるで消えたに等しい爆散。

 そして爆炎がさっきまで城だった場所を包み込む。

 遅れて地鳴りのような衝撃波が、この荒野にまで届く。



 そこかしこで恐怖に戦く悲鳴が上がった。



 巨大な火柱と黒煙が立ち上り、城だけでなく帝都全体に被害が広がろうとしていたその時だ。



 まるで爆心地の中心点、その一点に吸い取られるように炎と煙が消えて行ったのだ。



 目の前には、アルティメット金ダライが落ちる前と変わらない帝都の姿があった。



 だが、以前と違うのは――、



 そこにことだ。



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