第99話 仲間入り


 魔法の扉Ⅱを潜り抜け、リリアが玉座の間に姿を現した。



 間近で見る彼女は、スクリーンで見ていた時よりもずっと線が細く、小っこ可愛かった。



 元勇者って感じは全然しないよなー……。



 対するリリアの方は、自分の前に並ぶ四天王達にちょっと気圧され気味だった。



 それもそうか。

 扉から入ってきたら、目の前に魔王の配下がずらっと待ち構えているわけだしね。

 しかも、ちょっと前まで敵対してた勇者だった訳だし。



「よく来たな」



 玉座に座ったままそう言うと、彼女が俺の顔をそっと見上げてくる。



「あなたが……魔王様……」

「そうだよ」



「ぽっ……」



 そして頬をピンク色に染めた。



 ぽっ……ってなんだよ!

 しかも、唐突に頭から★が出てるぅぅぅ!?



 ていうか、この子、気軽に★出過ぎだろ!



 ちょっと、ステータスを★のとこだけ確認してみる。




[ステータス]

 レベル:9   ★:1085




 少ししか増えてねえぇ!



 彼女、★が頻繁に出るのはいいけど、その分、量は望めないようだ。



 気を取り直して……リリアに皆を紹介しないといけないな。



「じゃあ皆を紹介するよ。俺の隣にいるのが参謀のアイル、そして前に立っている四天王は右からキャスパー、シャル、プゥルゥ、イリスだ。皆、仲良くね」



「「「「「はーい」」」」」



 皆、幼稚園児みたいに元気良く返事をした。

 毎度のことながら学校の先生気分。



「それにしても意外だな」

「どうかいたしましたか?」



 アイルが不思議そうに尋ねてくる。



「一応、元勇者な訳だから、もっと確執とか、いがみ合いとかが起こるんじゃないかって思ってたからさ」



「魔王様の配下に入られた時点で私達の仲間です。それに、いがみ合っていては魔王様をお守りすることが出来ませんから」



「ううっ……いい話ですね」



 リリアは瞳をウルウルさせながら他人事のように語る。



 お前のことだっての!



 それはさておき、この場所でリリアに何の仕事を担わせるかだが……。



 ダークエルフになったことで弓の技術が向上した(というか相性が良くなった)彼女。

 是非、前線に立ってもらいたい所。



 だが、見た目がかなり変化したとはいえ、身バレするような可能性がある場所に配置するのはちょっと危険だ。



 ということは魔王城の外ではなく、ダンジョン内での防衛の方が無難だが、それだと折角の弓の技術が生かせない。



 そうなるとやはり、それ以外の部分。

 隠密ステルス感知パーセプションのスキルを主体に活躍できる場を与えるのがいいだろうな。



 それって何だろう?



 罠を避けたり見つけたりするのには長けているが、それは攻撃する側であるからこそ有効なスキル。



 そいつを防衛側で効果的に使う方法はないものだろうか?



 こっそり敵の背後に近付いて刺す……とか、気配を消して遠隔から攻撃する……とかしか思い付かないな……。



 うーん……。



 こっそり防衛かあ……。



 ん……?



 そこで俺の脳裏にあるものが引っかかった。



 そうか……あれが行けるかも。

 この能力を有益に使い、防御能力を高める方法を思い付いたぞ。



「よし、決めた」

「?」



 俺の声にリリアが反応した。



「リリアを〝トラップ補助係〟に任命する」

「トラップ補助係……って、なんですか?」



 今、俺が考えた、そんな一般的ではない役職、説明しなければ伝わらなくて当然か。



「罠ってさ、侵入者に気づかれてしまった時点で、その罠は死んだも同然、役に立たなくなっちゃう訳じゃない? それを再び罠として生き返らせるのがトラップ補助係の仕事さ」



「罠を生き返らせる……?」



「例えばさ、床スイッチを踏むように誘導したり、罠に嵌まるように追い込んだりするってこと。隠密ステルス感知パーセプション、それから遠隔からの弓術があれば、それが可能なんじゃないかなーと思って」



 そこでリリアは理解したのか、目を見張る。



「なるほど、私が隠密ステルスで消えて、侵入者を罠の方へ突き飛ばしたりするんですねっ」



「ああ……うん、端的に言えばそうだ」



 ダイレクトアタックすぎんだろっ! とも思ったが、彼女の場合、案外上手くやるのかもな……。



 ともあれ、それでダンジョンの防御力を高めることが出来そうだ。


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