第53話 部屋割り
俺達がカーナビ……もとい、迷宮コンパスの指示に従って第二階層の広間まで降りてみることにした。
「と、その前に」
「?」
俺は大広間の端の方へと向かい、そこであるアイテムを合成する。
それは魔法の扉Ⅱだ。
レシピは以下の通り。
・鉄鉱石×10 + 魔紅石×2 + カーバンクルの宝珠×1 + MP250消費 = 魔法の扉Ⅱ×1
全部揃ってるので問題無く作れる。
この魔法の扉Ⅱは設置した場所同士を繋ぐことが出来る機能を持っているので、これから下層に向かった後、すぐにこの場所へ帰ってこれるようにしておきたかったのだ。
俺は作ったそれをすぐ壁際に設置する。
置いた途端に扉は壁と同化して見えなくなった。
普通の魔法の扉と同様に
「じゃあ、行こうか」
「はい」
準備が整ったのでアイルに告げて出発する。
早速、足元の床に表示されている矢印に従って進む。
これを辿って行くだけで目的地に到着できるんだから超便利。
3Dマップでみたダンジョンの構造は迷路のように複雑に入り組んでいたので、このナビゲーション機能無しでは迷ってしまうこと必至だろう。
まあ、出来るだけ複雑に作るようゴーレム達にお願いした結果なんだけど。
俺は細い通路を進みながら、要所要所の壁に持っていたメダマンを設置して行く。
出来れば罠も設置しておきたいが、それは各階層に魔法の扉Ⅱを設置してからの方がいい。
ここに皆を住まわせる際に、罠にかかっちゃったら大変だから。
そんな訳で迷宮コンパスに導かれて進んで行くと、小一時間ほどで第二階層の広間に到着した。
ルートが分かっているのに結構な時間が経っていたが、途中に分かれ道が無数にあったので、この程度の時間で済んだのは迷宮コンパスがあってこそだと思う。
俺は第二階層の広間に到着して早々に魔法の扉Ⅱを設置する。
そして、その扉に手を掛けた。
「じゃあ、帰ろっか」
「え……も、もうですか?」
アイルは目を丸くした。
到着直後に帰ろうとか言い出したんだから、そうもなるか。
「今は特に用は無いから」
「無いって……勇者を迎え撃つ為の罠とか色々仕掛けるんじゃないんですか?」
「もちろん、それはやるよ。でも、迷宮コンパスがあるとはいえ、このまま十階層まで地道に歩いて行くのは大変じゃん?」
「そ、それは……そうですけど」
ダンジョンは深い。
ルートが分かっていても最下層に到達するだけで丸一日はかかるだろう。
それに加えて全ての通路に隈無く罠を仕掛けるとなると、とんでもない作業量になることは考えるまでもない。
「一人でやるには時間が掛かりすぎるから。だから取り敢えずゴーレム達を使って各階層に魔法の扉Ⅱを設置してもらう。そうすれば瞬時に各階層に移動できるようになるし、作業も捗ると思う」
「なるほど、そういうことですか」
彼女はそれで納得したようだった。
「それじゃ、一旦戻ろうか」
「あ……はい!」
ということで、俺とアイルは設置したばかりの魔法の扉Ⅱをくぐる。
光の中を抜けると――、
そこは、第一階層の大広間だった。
ちょっと前に俺が設置した壁際の扉から出てきたのだ。
「わあっ、本当に一瞬で戻れるんですね」
アイルはその扉の力に感動しているようだった。
「さて……」
彼女が魔法の扉Ⅱに感心している中、俺は再び迷宮コンパスから3Dマップを呼び出す。
マップを見れば、蟻の巣のような迷路の中に十個の広い空間が点在しているのが窺える。
それが一階層ごとに設置した広間だ。
一番下に位置する十層目の広間が、魔王……いわゆる俺が普段居る玉座の間にするとして……だ。
あとはどうするかなー……。
映像を見ながら思案していると、横からアイルが覗いてくる。
「何をしてるんです?」
「いやね、ダンジョンも出来たことだし、皆の部屋割りを決めようと思って」
「私達の部屋……ですか?」
「うん、前にも言ったことがあるけど、各人が守るべき場所のことだよ」
「あ、侵入者を迎え撃つ為の……ということですね?」
「そういうこと」
「それで、誰がどこの部屋になるんです?」
部屋割りは俺の中でほとんど決まっていた。
ゲームで言えば、大ボスである魔王を守るように中ボス部屋を配置するのが定石。
この場合もそうだろう。
だから、プゥルゥが決めてくれた偽四天王の配置をここでも使わせてもらうことにした。
あれって結構、理に適ってるし。
となると、第十階層から四つ上の階層からか。
「うーんとまず、第六層の広間がプゥルゥの部屋でしょ。その下の第七階層がイリス、第八階層がシャルで、第九階層がキャスパー、んで、最後に第十階層が俺って感じかな」
「……」
そう伝えると、アイルは魂が抜けたように虚空を見詰めていた。
「ど、どうした!?」
「あ……あの……私は……?」
「ああ、アイルは俺と一緒、第十層だよ」
「……!!」
途端、彼女の体に生気が戻った。
戻っただけでなく、何かが漲り始めているようにも窺える。
「わ、わ、私が……魔王様と同じ、お部屋……」
彼女は動揺しながらも頬に手を当て顔を赤くしている。
「え、嫌だった?」
「うぇっ!? と、ととっ、とんでもございません! 光栄でありまするぅぅっ!!」
アイルは物凄い勢いで首を横に振っていた。
やっぱマズかったかなあ……。
でも、何かあった時の為に参謀は、すぐ側に置いておきたいし……。
まあ、マップを見る限りでは第十階層は結構な広さがあるみたいだから、個室を作れば彼女のプライバシーも守れるかな?
ひとまず、そのことは置いといてだ……。
問題は残りの第一階層から第五階層の広間をどうするかだよなあ。
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