第52話 ダンジョン完成
俺が城の上階にあるテラスで、アイルの入れてくれたお茶を飲んでいると、
突然、コンソールから通知音のようなものが鳴り響いた。
それは以前経験した警告音のように、けたたましいものではない。
メールでも届いたかのような、気軽な感じの音だ。
何だろう?
そう思ってコンソールを開いてみる。
タブに赤い印を確認。
どうやら魔物リストに通知があるようだ。
無数の目玉コウモリとゴーレムの名前が部隊別に並ぶ中、ダンジョンの建設に向かわせていたゴーレム部隊が、全て〝待機中〟との表示になっていた。
ん? なんで待機中?
なんかトラブルでもあったのかな……。
ともかくダンジョン建設を統括しているアルファリーダーのステータスを見てみる。
すると、そこにはこう表示があった。
[任務完了]
任務完了……って、普通に考えて俺が与えた任務のことだよな?
俺が彼に頼んだのはゴーレムを束ねてのダンジョン建設。
それが完了したってことは、もしかして……。
「ダンジョンが完成した!?」
思わず大きな声を上げてしまったもんだから、近くで控えていたアイルが慌ててやってくる。
「どうなさいました!? 魔王様」
「いや、大丈夫。ちょっと嬉しくなっちゃってね」
「はあ……」
彼女は不思議そうにしていた。
なので事を伝える。
「どうやらダンジョンが出来上がったみたいなんだ」
「まあ! それは、おめでとうございます!」
それを聞いたアイルは目を見張った。
そして、まるで自分のことのように喜んでくれた。
「出来上がったといっても空間が確保できただけで、中身はまだまだこれからだけどね」
「ご謙遜を。こんな短期間で本当にダンジョンを作り上げてしまうなんて……魔王様のお力は偉大でございます」
俺の力……というよりは、全てゴーレム達のお陰。
だから、彼らを褒めてやりたい。
でも、そのゴーレムを作ったのは俺だから、俺も少しぐらい褒められてもいいのか?
「とりあえず、本当に完成したのか確認に行こうかと思うんだけど」
「はい、お供致します」
そう言ってくれた彼女と共に、城の一階にある玉座の間へと降りた。
玉座の間、中央の床には魔法の扉が隠されている。
そこから地下へと入り、そのまま大浴場(男湯)を抜け、その奥にあるもう一つの魔法の扉をくぐった所からが本当のダンジョンだ。
目の前に現れるのは長い回廊。
等間隔に灯された燭台が果てしなく続いている。
そのまま道なりに真っ直ぐ進むと最初の広い空間。
俺達が仮の玉座の間としている大広間がある。
そこで俺とアイルは一旦、足を止めた。
さて、ここより下は確認しようにも、そのまま足を踏み入れたら自分達でも迷ってしまい兼ねない。
そこで必要になってくるのが迷宮コンパスだ。
迷宮コンパスのレシピは以前、手に入れている。
これだ。
・鉄鉱石×1 +
前は
ダンジョン建設のゴーレム達から入ってくる素材の中に、
なので、早速合成してみた。
手の中に現れたのは極普通のコンパスだった。
金属製の丸いケースの真ん中に羅針が付いている。
見た目はただの方位磁石だけど……こんなんで道が分かるのか?
ちょっと不安になるが、コンパスの側面にボタンが付いていることに気が付く。
「なんだこれ」
何とはなしに押してみた。
すると、コンパスから空中に向かって光が伸びる。
何かの映像が宙に投射されたのだ。
「これは……?」
眼前に蟻の巣のような3Dモデルが浮いている。
それは階層で区切られた形になっていて、所々に部屋のようなものも窺える。
ちなみに階層の数を数えてみると十階層。
そこで思い当たるのは……。
もしかして……これってダンジョンの3Dマップ!?
試しに投射された映像に触れてみると、3Dマップをクルクルと回して色々な角度から見たり、拡大縮小もできた。
これは間違い無く、このダンジョンの全形を表したものだ。
このコンパスに、こんな便利機能があるとは思わなかった。
そんなふうに感心していると、一緒にその映像を見ていたアイルが何かに気付いて言ってくる。
「魔王様、この光ってる点は何でしょう?」
彼女が指差す場所を見ると確かに青白い点が光ってる。
ダンジョン全体の位置からすると一階層目の大きな部屋。
素直に考えれば、俺達がいるこの場所だ。
「これは多分、俺達が今いる場所を示してるんだと思う」
「なるほど」
そういえば、前に迷宮コンパスの
ポイントを登録すればルートを示してくれる。
ということは……。
俺は3Dマップ上で二階層目の部屋に指先で触れる。
すると、現在位置から指で触れた場所まで、点が線で結ばれた。
途端、俺の足元が光った。
床の上に下層の通路に向けて青白い光を放つ矢印が表示されたのだ。
「おおっ!?」
現実世界と3Dマップがリンクしてるのか!
これは視覚的にルートが見えて分かり易いぞ!
マップ上を再度確認すると、これが目的地までの最短ルートでもあるらしい。
「じゃあこれを使って、試しに二階層目の広間まで行ってみようか」
「はい」
アイルが返事をした直後、迷宮コンパスから機械的な音声が聞こえてきた。
『次、三百メートル先、右折です』
「カーナビか!」
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